表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第六十一章 運の絡む要素
202/264

運の絡む要素【Bパート】

「おいおい、かなり俺たちを苦しめたチームだぞ、春日部(かすかべ)輝松(きしょう)は!」


 金森が驚嘆(きょうたん)の声を上げた。

 最終イニング、二死(ツーアウト)の時点で8対0のワンサイドゲーム。


「散発三安打、一フォアボール。

 しかも、いずれのヒットもどん詰まりのラッキーなヒット‥‥ですか。」


 スコアブックを付けていた和田の声も震えていた。


「ストライーク! バッターアウト!

 ゲームセット!」


 四番の中村(なかむら)重隆(しげたか)に代わって打席に入った竹本(たけもと)義幹(よしもと)が空振り三振に倒れ、ラストバッターとなった。


「以前、俺たちと戦った時よりも‥‥いや、この大会のどの試合よりも強い白鳳(はくほう)だった。」


 松浦が目を大きく見開いてつぶやいた。


「おそらく、今日の試合の野手が白鳳のベストオーダーだ。

 決勝はこれに吉野を加えてくるだろう。

 ――だが、その前にお前たちにはやらなければならない事がある。」


 三浦がすっくと立ちあがり、部員たちに声を掛けた。


「準決勝をしっかり勝つ事ですね。」


 マウンドを託されていた松浦も立ち上がり、三浦の言葉の続きを口にした。


「そうだ。

 相手は初戦で上ノ峯(かみのみね)学園を、準々決勝では屋島(やしま)檜扇(ひおうぎ)学園を破ってきた強者(つわもの)だ。

 心して掛かれ。いいな。」


「はいっ!」


 今まで座っていた全員が立ち上がり、気合の込もった声を上げた。


 ● ● ●


 準決勝第二試合は十三時からとなっていた。

 その為、部員たちは各自食事を取る為、一旦、解散となった。


「ここのお店にしようよ、みんな!」


 直実(なをみ)希望(のぞみ)明美(あけみ)奈留(なる)史香(ふみか)裕子(ゆうこ)徳子(とくこ)に地味な大衆食堂を提案した。


「ちょっと地味じゃない、ナココ。」


 明美が抵抗感を示した。


「そう?

 でも、こういう昔ながらって感じの店が案外美味しかったりするんだよね。」


 直実は三峰の店を思い浮かべながら意見した。


「ああ、なんとなくわかるよ、それ。」


 徳子が直実に同調した。


「まあ、広島まで来てファミレスってのもないしね。

 いいんじゃない。」


 奈留も賛成した。


「私、こういうお店、初めてだよぉ。」


 史香も興味津々だ。


「まっ、みんながそう言うんなら私もいいんだけどね。

 ――ユッコも希望ちゃんもOK?」


 遂に明美が折れた。


「うん、OKだよ。」


「私もOKです。」


 裕子も希望も了承し、七人は球場近くの大衆食堂に入って行った。


 ● ● ●


「私、カツ丼大盛り!」


 直実はゲン担ぎとして鉄板のメニューを頼んだ。


「じゃあ、私も直実先輩と同じくカツ丼で!

 ああ、私は並盛りでお願いします。」


 希望もゲンを担いだが、他の五人は思い思いの注文をする。


 ● ● ●


「トッコは牡蠣(かき)フライ定食かぁ。」


 直実が少し(うらや)ましそうに徳子の目の前の定食を見つめる。


「やっぱ広島まで来たんだからな、本場モンを食べねぇと。

 ――ひとつ交換するか?」


「ううん、欲しがらないよ、勝つまでは!」


 直実はそう言うとカツ丼を口に掻き込み始めた。

 と、そこへ話し掛けてくる男子生徒の声が鼓膜を直撃した。


「宮町中の選手は試合前に満腹にするのか。

 大した事はねぇな。」


 振り向くと、そこには対戦相手である上沢木(かみさわき)中のユニフォームを着た長身の選手が立っていた。


「誰よ、あんた?」


小栗(おぐり)義仲(よしなか)

 てめぇらと対戦するピッチャーだ。」

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ