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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第十八章 選択肢
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選択肢【Cパート】

「そんな事があったのか。」


 翌日の昼休み、三浦は松浦から昨日あった事を全て聞いた。


「家族は俺の意見を尊重すると言ってくれたのですが、自分の心が揺らいでいて‥‥。」


「仮にお前がその話に乗ったとしても、部員はお前を裏切り者とは思わないだろう。

 そういう連中だ。」


「わかってます‥‥。」


「松浦、何を選んでも正解かどうかなんて最後までわからない。

 だから、自分の選んだ答えを正解にする努力を(おこた)るな。

 答えはいつもお前の中にある。」


「はい! ありがとうございました!」


 ● ● ●


「松浦さん、遅いね、今日は。」


 グラウンドで柔軟運動のクランチャーをしながら直実(なをみ)が隣りの羽野(はの)に話し掛けた。


「そうだね、何かあったのかな?

 親分、たしか同じクラスでしたよね。

 知ってますか?」


 今度は羽野が金森に質問のバトンを渡す。


「それがよ、松浦のヤツ、珍しく午後の授業中、ずっと爆睡しやがっててさぁ。

 罰として中央廊下の拭き掃除を一人でさせられてんだよ。」


 金森は貫禄のあるお腹を震わせながら答えた。


「でもよ、何か吹っ切れたような安らかな寝顔だったぜ。」


「起こしてあげて下さいよ。」


 羽野がすかさずツッコミを入れた。


「ああ、俺、他人(ひと)が寝てるのを起こさない主義だから。

 俺も起こされたくないしな。」


「‥‥‥‥‥‥。」


 金森の一本筋の通ったポリシーに、直実も羽野も何も言えなくなった。


 ● ● ●


「断るって‥‥正気ですか!?」


 松浦からの電話に華原(かはら)は椅子から転げ落ちそうになった。


「自分を買って頂いた事は素直に嬉しいです。

 しかし、申し訳ありませんが、今回のお話はなかった事とさせて下さい。」


 学校備え付けのピンクの電話に頭を下げる松浦。


「何が不満だったのですか?

 後学(こうがく)の為に聞かせては頂けないですかねぇ。」


 怒りを押し殺したトーンで華原が問う。


「不満はありません。

 これはあくまで自分のわがままです。

 今、成し遂げたい事を貫きたい、ただそれだけの事です。」


「考え直すなら、今のうちです。

 今の答えは聞かなかった事にしてもいいですよ?」


「いえ、自分の考えは変わりません。」


「ふふっ、ふはははは!

 いいでしょう。

 せいぜい借金で苦しみ抜きなさい。

 そして、後悔するといいでしょう!」


 そう告げると、華原は電話を一方的に切った。


「ふう~っ‥‥。」


 受話器を元の位置に置くや否や、松浦にどっと疲れが押し寄せた。


(これでいいんだ。

 たとえどんな結果が待っていたとしても、俺が選んだ道に悔いはない。

 あとは『正解』に持っていく為の努力をするだけだ。)


 天を仰ぐと、そこには抜けるような青空が広がっていた。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、誠にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 松浦の選んだ道は険しいですが間違ってはいないと思います。三浦のアドバイスもいいですね。
[良い点] 三浦のアドバイスがかっこいいです。 大人ですね!
[良い点] 『自分の選んだ答えを正解にする努力を怠るな』、三浦の言葉、名言だと思います。 [一言] 華原への返答、スカッとしました。
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