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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第五十七章 乱打戦・前篇
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乱打戦・前篇【Dパート】

 二回表、一死(ワンアウト)から七番の下河辺(しもこうべ)にどん詰まりのレフト前ヒットを打たれるものの、後続を抑え、松浦はこの回、無失点で切り抜ける。


 その裏、宮町(みやまち)中も一死(ワンアウト)から和田がカット打法でファウルを量産、根負けした宇佐那木(うさなぎ)四球(フォアボール)で出塁。

 更に続く竹之内(たけのうち)もセンター前ヒットで出塁。

 しかし、九番の藤本が真っスラを引っ掛け、ピッチャーゴロで1―4―3の併殺打、この回の攻撃が終了した。


 そして三回表、打順は阿波野(あわの)全成(ぜんせい)に回る。


(松浦、こいつには初球から全力でいくぞ。)


 土肥(どい)は外角にミットを構え、カーブのサインを出した。


(ああ、了解だ。)


 松浦はサインに(うなず)くと、初球から決め球を投げた。


「ストライーク!」


「うわ、エグぅっ!」


 左打者の阿波野にとって松浦のカーブは自分の身体(からだ)に突っ込んでくるかのような錯覚を感じさせた。


(こないエグみのキッツイ球、打てるかい!

 捨てや捨て! 他のが来たのを叩く!)


 しかし、土肥のリードは続く二球目もカーブ。

 そして――


「ストライーク! バッターアウト!」


「三球連続バケモンカーブかいな、堪忍してやぁ。」


 阿波野が感情むき出しにして嘆く。

 前の打席の仇を討ったからか、松浦にも自然と微笑がこぼれた。


 しかし、続く尾形にそのカーブを狙われる。


 キーン!


 球威に差し込まれながらもライト前に落ちる幸運なポテンヒット。

 三番の臼杵(うすき)がこれを送り、二死(ツーアウト)二塁。

 そして迎える打者(バッター)蒲生(がもう)範頼(のりより)

 (いや)(おう)でもバッテリーに緊張感が走る。


(敬遠するか‥‥。

 いや、こいつも左。

 あの一番バッターと同じ手が通じる可能性が高い。)


 土肥は初球、カーブのサインを出した。

 セットポジションから投じる松浦。


 カキ――――ン!


 慌てて振り向く松浦。

 その目にはフェンス際で上を見上げている中堅手(センター)の和田が映っていた。



「蒲生の凄さはパワーだけやない。

 どないな球でも対応出来る柔軟さもどエラい武器や。

 せやさけ、鷹ノ目(たかのめ)っちゅうバケモンとの対戦を見たかったんやがな。」


 鵬徳寺(ほうとくじ)学園の監督、木内(きうち)は頬肉を持ち上げながら語った。



「すまん、松浦。カーブを見せ過ぎた。

 これからは配球を変える。」


 マウンドに駆け寄った土肥が呆然としている松浦に語り掛けた。


「――心配するな、土肥。

 初めてだったんだ、(おんな)じバッターに連続ホームランされたのって。

 ただ、それだけの事だ。

 リードはお前に任せるよ。」


 松浦は努めて明るく振舞った。

 だが、ここに松浦以上に闘志を燃やす男がいた。


(やってくれるじゃねぇか、蒲生。)


 もう一人の『ノリ』、太刀川教経である。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

1990年という時代なので、ストライクとボールのコールの順番は現代(2022年)とは違っています。

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