中間テストに潜む魔物【Eパート】
「おっしゃ――っ、終わった――っ!」
中間テストの終わりを告げるチャイムが鳴ると、直実は歓喜の声を上げた。
苦手科目の答案用紙の数々が走馬灯のように駆け巡る。
「どうだった、手応えは?」
声を掛けたのは明美だ。
「赤点は免れたっていう手応えならあるよ!
『我が答案用紙に一片の悔いなし』って感じかな!」
直実が元気いっぱいに答えた。
「私も古文と英語は助かったよぉ。
二人とも、ありがとうねぇ。」
史香の癒しヴォイスにほんわかする直実と明美。
文字面で読んだらイラッとくる人もいるかもしれないが、故に声の力は偉大だと言わざるを得ない。
「今日までは部活、休みでしょう?
みんなでどこか行かない?
奈留ちゃんとユッコも誘ってさぁ!」
「うん、いいね! 行こ行こ!」
「はい、私も賛成~。」
明美の提案に直実も史香も賛成した。
● ● ●
「これはどういう事なんだ、説明してもらおうか。」
その頃、太刀川が教員室に呼ばれ担任の小倉から絞られていた。
「そ、それは偶然なんじゃないっスか。」
太刀川の目が泳ぐ。
「お前の斜め前の席の千島千絵と一問違わず同じ答えって事があるか!?
片や偏差値の高い市内の女子高、合格間違いなしの才媛。
片や赤点常習犯のお前だぞ!」
「うっ‥‥。」
太刀川の全身から嫌な汗が滲み出てくる。
「や、やだなぁ‥‥。
この俺だって勉強する気になりゃあ‥‥。」
必死だ。
そんな太刀川に小倉はため息を一つ吐く。
「素直にカンニングを認めれば追試だけで見逃してやろう。
だが、シラを切った上でカンニングだった場合、今後の部活動は一切禁止だ!」
小倉の言葉に太刀川は遂にその膝を折った。
「すいません、俺がやりました。」
「千島は加担した憶えはないそうだが、一体、どうやって答えを写したんだ?」
「まず、手でこう庇を作ってですね、自分の目が見周りの先生から見えないようにするんスよ。
で、標的の腕から脇の隙間っから見えた答えを写す訳で‥‥。
でも、俺の動体視力と2.0の視力がないとまず不可能です!」
「何を自慢げに言っとるか、このうつけ者が!」
太刀川の不祥事はたちどころに三浦の耳に入る事となった。
「馬鹿たれが‥‥。」
四番抜きで地区大会に臨まなければならなくなった緊急事態に、さすがの三浦も頭を抱えた。
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