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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第四十四章 惚れました
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惚れました【Eパート】

「まさかナココと当たれるなんて思ってもみなかったぜ。」


 お祭り広場に設置されたステージ上には直実(なをみ)徳子(とくこ)がいた。


「私もだよ、トッコ。

 また闘えてうれしいよ。」


 直実の目が戦闘モードに変わっていた。


「ああ、やっぱり‥‥。」


 奈留(なる)が頭を押さえた。


鷹ノ目(たかのめ)さん、明日は関東大会なんですよ!」


 和田が何とか止めようと試みる。


「あれ、みんなも応援に来てくれたの?」


 羽野(はの)米俵(こめだわら)を肩に担いで現れた。


「羽野、お前、なんだよ、その米俵は!?」


 新井が指さして羽野に問う。


「いやさ、腕相撲大会の男子の部で優勝しちゃってね。

 これ景品、ははは。」


「笑ってる場合かよ。

 もし鷹ノ目の腕に何かあったらどうすんだよ!?」


「俺も釘は刺しといたよ。

 でもさ、一度火が点いたら誰にも止められないよ、鷹ノ目さんは。」


 羽野はステージ上の直実に視線を向ける。


「レディー‥‥ゴ―ッ!」


 審判の掛け声と共に闘いのゴングが鳴った。


「うおおおおおっ!」


「ぬおおおおおっ!」


 女同士の熱きバトルが始まった。

 闘いは一進一退の攻防が続いた。


「ラリアットが封じられた鷹ノ目に勝機はあんのか!?」


 新井が手に汗を握って羽野に問う。


「封じられて勝てないくらいなら、とっくに負けてるよ。

 鷹ノ目さんの筋力なら勝てると思うけど‥‥あの対戦相手も強いね。」



(さすがに強いよ、トッコ!)


 劣勢の直実は歯を食いしばりながら直実が徳子を称えた。


(あと少し‥‥あと少しで勝てる!

 伊達(だて)に毎日、片腕懸垂(かたうでけんすい)してねぇぜ!)


 徳子は最後の力を振り絞る。


「うおおおおおおおっ!」


 しかし、直実も前腕筋群のパワーを全開にし、イーブンに持ち直す。


(どこにこんなパワーが!?)


 驚愕(きょうがく)する徳子。


「アックスボンバーっ!」


 直実が徳子を一気に押し切った。


 カンカンカンカンカン!


 試合終了のゴングが鳴り渡る。


「くっそーっ、また負けちまったぜ。

 ナココ、お前マジ()えーな。」


 徳子が右手を差し伸べる。


「トッコも強いよ!

 あと少しで負けちゃいそうになった。」


 直実が握手に応じた。

 周囲は割れんばかりの拍手が鳴り響いた。


 ● ● ●


「ねぇねぇ、壱弐(いちに)山車(だし)どこら辺かなぁ?

 私、あの龍と虎の見送幕、大好きなんだよね!」


 直実が星川(ほしかわ)通りの露店を眺めながらみんなに話し掛けてきた。

 壱弐の山車とは第壱本町区の山車の事だ。

 提灯に『本壱弐』と書かれている事から、地元では『壱弐の山車』と呼ばれている。


「あの幕、俺も好きだよ。

 子どもの頃、虎の攻撃で龍がバラバラにされたもんだとばかり思ってたっけ。」


 羽野が応える。


「ああ、もう、その米俵、何とかならなかったの?

 後で家まで届けてもらうとかさぁ?」


 米俵を担いだ浴衣姿の男女と一緒に歩くのは、さすがに人目が気になる明美。


「だって、いい筋トレになるし。」


 直実と羽野がユニゾンで答える。


「お祭り、満喫出来ないじゃん、気になって。」


「アケだって大きなぬいぐるみ持ってるじゃん。」


「米俵と一緒にしないでよ、米俵と。」


「まあまあ、アケもナココも落ち着こうよ。

 どちらも戦利品には変わらないんだから。」


 奈留が二人をなだめる。


「もう夕方ですし、少し休んでから解散としませんか?

 自分、足が疲れました。」


 本当は疲れてなどいないが、本日のクライマックスの為に和田が提案する。


「じゃあ、人があまりいない高城(たかぎ)神社の裏に行こっか。」


 奈留がウインクで新井に告白タイムが来た事をさり気なく伝える。


「ああ、そうだね。

 山吹さんも疲れたんじゃない?」


 新井が明美を気遣った。


「そうだねぇ、まあ、少し疲れたかな。

 ナココはどう?」


「私はまだまだ遊べるよ!

 金魚すくいもしたいし、フライドポテトも食べたい。」


 この無尽蔵の体力マシーンは親指を立てて答えた。

 その隣りから羽野が直実の肩を人差し指でトントンと叩く。


「(鷹ノ目さん、今日は新井の為に、ねっ?)」


 羽野が小声で直実に伝えた。


「(いっけない、すっかり忘れてた。)」


 直実は羽野に小声で返答すると、


「アケ、私もちょっとだけ疲れてきたかも。

 高城神社の裏に行こ行こ!」


 とても疲れているようには見えない直実に不自然さを感じるものの、


「んじゃま、行きますか!」


 明美は満面の笑みを浮かべた。

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