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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第四十四章 惚れました
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惚れました【Aパート】

この作品は『エンターブレインえんため大賞(ファミ通文庫部門)』の最終選考まで残ったものを20余年の時を経てリライトしたものの続編となります。

直実(なをみ)ーっ、奈留(なる)ちゃんから電話ぁーっ!」


 葉子(ようこ)が一階から大きな声で直実に伝えた。


「はぁーい!」


 直実が自室のドアを開け、元気な足取りで階段を駆け下りてくる。


「はい、もしもし。」


「ああ、ナココ。

 明日関東大会だけど、今日は空いてる?」


「うん、今日は明日に備えて練習は休みだよ。」


「だったらさぁ、うちわ(まつり)に行かない?」


「えっ!? 奈留ちゃん、和田くんと行くんじゃないの?」


「うん‥‥和田くんも行くんだけどね‥‥。」


 どうも歯切れが悪い。


「えーと‥‥実は私、アケと行く事になっててさぁ。」


「ああ、アケにも声を掛けたから、その辺は大丈夫。」


「状況が見えないんだけど‥‥最初から話してくれないかな。」


「――だよね。

 うん、わかった。」


 ● ● ●


「ええーっ、新井くんがアケにお熱!?」


 直実が素っ頓狂(すっとんきょう)な声を上げた。


「そうみたい。

 和田くん、断り切れなくてダブルデートを約束しちゃって。

 けど、アケはナココと約束があるからって‥‥。」


「そこまではわかったよ。

 問題はその先だよ。」


「フユくんを連れ出すのもちょっと気の毒だったし、ついトリプルデートって事で‥‥。

 誰か目ぼしい人、連れて来てくれないかなぁ。

 この通り! 頼んます、ナココ大明神様!」


 受話器越しで両手を合わせている奈留が目に浮かぶ。

 困っている人を看過出来ない自分の性格が恨めしかったが、


「わかったよ、奈留ちゃん!

 任せておいて!」


 つい勢いで軽返事をしてしまう性格も恨めしかった。


「じゃあ、今日の一時に高城(たかぎ)神社の裏に集合って事で。」


「うん。じゃあ、また。」


 直実は受話器を置いた。


(目ぼしい人って、どうしよう!?

 デート相手だよ、デート!)


 直実はその場でガックリと膝を着いた。


「なにやってんだよ、こんなトコで?」


 直冬が冷たい視線で問い掛けてきた。


「フユ、あんたまだ奈留ちゃんの事、好きなん?」


 直実のどストレートな問い掛けに直冬は真っ赤になってたじろいだ。


「な、な、なんだよ、急に!?」


 いくら恋愛に(うと)い直実でも、この反応を見れば一目瞭然だった。


「ううん、何でもないよ。

 気にしないで。」


「ムチャクチャ気になるじゃんか!」


「いいのいいの、オトナの問題だから。」


 直実は直冬を追い払うような仕種(しぐさ)を取ると、


「なんだよ、ちぇーっ。」


 直冬は台所の方へ立ち去って行った。

 一方の直実は、


(ああ、どうしよどうしよ!)


 魔の無限ループに落ちて行った。


(ん‥‥? でも、待って。

 アケはまだ事情を知らない訳だし、私も知らない振りしてればデート相手でなくてもいいじゃん。

 条件に合う適当な男子に声を掛ければ‥‥。)


 直実は条件を整理してみた。


1・今日、暇な男子

2・誘ってOKしてくれる事

3・新井と和田を知っていて、和気あいあいと話せる事

4・自分が普通に話せる相手


(なんだ、意外と条件は少ないじゃない。)


 直実は『デート』という単語に振り回されていた事に今更になって気付く。

 と同時に四つの条件を満たす男子の少なさにも気付く。


羽野(はの)くんか多々良(たたら)くんしかいないじゃん。)


 直実は野球部の連絡網を見ながら、羽野の電話番号をプッシュした。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

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