期末テストを乗り切れ【Fパート】
ボウリングのチーム編成は以下のようになった。
山吹明美&新井隼チーム
桐原史香&多々良信也チーム
門倉奈留&和田純平チーム
神長裕子&佐川哲也チーム
鷹ノ目直実&羽野敦盛チーム
テレレッタラ―♪
前のゲームの勢いそのまんまで明美がいきなりストライクを出した。
「山吹さん、綺麗なフォームだね。」
新井がこれ見よがしに褒めた。
「ボウリング世代の両親に鍛えられたからねぇ。
ざっとこんなもんよ!」
明美はガッツポーズを取った後、新井とハイタッチを交わした。
「なら、俺も!」
新井も負けじとストライク。
チーム編成に偏りがあった事が初っ端から露呈された形となった。
続く史香と多々良はマイペースにスコアを稼ぐ。
奈留と和田は無難にスコアを取る。
裕子と佐川はスプリットに悩まされながらも堅実にスコアを取る。
そして直実と羽野は、
「うおおおおおっ!」
直実が力任せに転がした16ポンドのボールはガターに。
「そんな力いっぱい投げない方が上手く転がるんじゃないかな。」
羽野がアドバイスを送る。
「そうなの?」
「たぶん。
それに、もっと軽いボールの方が鷹ノ目さんの指にフィットするんじゃない?」
「ああ、なんか穴が大きくて、すっぽ抜けるなって感じてたんだよね。
うん、ちょっと穴で選んでくるよ。」
パカーン!
コントロール無視の力任せな投げ方は変わらないが、左側の三本を倒す事が出来た。
「やったよ、羽野くん! 三本も倒れてくれた!」
「その調子でスコアを伸ばしていこう。」
続く羽野は助走をつけずにアプローチのギリギリに立ち、その場から腕だけで転がす。
だが、それは直実のパワーボールに匹敵するスピードを出した。
パカーン!
しかし、結果は左右二本ずつ残すスプリット。
羽野は続く二頭目、左の一本しか倒す事が出来ず三本残し。
パワーペアはのっけから大きく出遅れた。
● ● ●
「やっりぃ!」
明美はこのゲーム二度目のターキーに全身で喜びを表した。
「すごいすごい。
俺も負けてらんないな。」
パカーン!
新井も続けてストライクを取る。
もはや、このコンビに太刀打ち出来るペアはおらず独走状態となった。
「新井くんもやるねぇ。」
「ははは、マグレマグレ。」
余裕の談笑をする二人を見て和田が奈留に耳打ちする。
「なんか、あの二人、いい雰囲気じゃないですか?」
「まあ、アケはコミュニケーション能力高いからね、誰とでも仲良くなれるんだよ。
心配なのはあのパートナーくん。
本気になんなきゃいいんだけど。」
本気で心配する奈留。
「‥‥なるほど。
あいつ、そういう免疫力なさそうだからなぁ。」
和田も心配になってきた。
スタミナが切れ、史香のスコアが落ちてきたのとは逆に、地味に追い上げてきたのは裕子ペアだ。
今や熾烈な二位争いが熱い展開となっていた。
パカーン!
「だんだんストライクを取るコツがつかめてきたよ!」
喜ぶ裕子は佐川とハイタッチを交わす。
「敵わないなぁ、神長さんには。」
佐川が後頭部を左手で掻きながら言った。
追い上げムードの二人を見て再び和田が奈留に耳打ちする。
「あの二人も距離が縮まってきたように見えますね。」
しかし、奈留は首を横に振る。
「裕子ちゃん、片想い中の人いるし、まずムリだねぇ。」
「うーん‥‥奥が深い。」
パッカ――――ン!
直実の剛球が全てのピンを薙ぎ倒した。
「見た見た!? ついにストライクだよ!」
「いやいや、隣りのレーンじゃないか。
あれはストライクとは言えないよ。
取り敢えず、隣りの人に謝ってから投げ直しだね。」
「ちぇー。」
パワーコンビの一連の流れは隣りのレーンの人も巻き込んで爆笑を生み出した。
そして三度、和田が耳打ちする。
「あの二人は甘いムードにはなりそうもないですね。
普段バッテリーを組んでいますが、恋愛には発展しそうもない気が。」
「そうかなぁ?
私的には自然体でいい雰囲気だと思うけど?
まあ、たしかに甘いムードってのはムリそうだけどね。」
「う~~ん‥‥奥が深い。」
● ● ●
結果は、明美&新井ペアがぶっちぎりの一位。
熾烈な二位争いを制したのは裕子&佐川ペア。
三位は奈留&和田ペア。
四位は史香&多々良ペア。
そしてダントツの最下位が直実&羽野ペアだった。
「あうう、最下位かぁ‥‥。」
頭を抱える直実。
「気を落としなさんな、ナココさんよぉ。
楽しかったし、いいじゃん!」
勝者の余裕とも取れる笑みを浮かべ、明美がナココの肩に手を回す。
「じゃあ、次、アレをやろ!」
直実が指さした先には古めのパンチングマシンがあった。
「却下!」
直実の提案は即刻、女子全員に拒否られた。
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