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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第四十一章 期末テストを乗り切れ
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期末テストを乗り切れ【Cパート】

千島(ちしま)にノートを借りて正解だったな。」


 太刀川(たちかわ)の部屋での勉強会で金森が感嘆(かんたん)した。


「ああ。字が読みやすくて要点もまとまってる。

 期末テストを受けるには参考書以上のノートと言ってもいいな。」


 松浦も共感する。


「俺がカンニングに走りたくなる気持ちもわかるだろ?」


 太刀川は同意を求めるが、


「それは微塵(みじん)もわからない。」


 意見は二人に即座に否定された。


 コンコン。


 ノック音と共にドアが開く。


「いらっしゃい。

 うちの愚弟(ぐてい)がいつもお世話になってます。」


 太刀川の姉がお茶と菓子を持って入ってきた。

 髪型は爽やかなナチュラル・ストレートショート。

 スレンダーな体型ながら出る所は出ている美しいプロポーション。

 太めの眉と切れ長の三白眼は太刀川家の遺伝なのだろう。


「お姉さまですか?」


 金森がシャキッと背筋を伸ばし、可能な限りの二枚目声で太刀川の姉を()める。


「はい、姉の小督美(こごみ)です。」


「お美しい。

 高校生でいらっしゃいますか?」


「まあ、お上手ね。学年は高二です。

 ごゆっくり。」


 小督美はそう答えると、一礼して部屋を出て行った。


「お前の姉ちゃん、美人だなぁ。

 俺もあんな姉ちゃんがほしかったなぁ。」


 金森がうんうんと一人頷く。


「そうかぁ?

 今日は猫被ってんだよ。

 普段は結構怒りっぽいんだぜ。」


 そうは言っても内心は嬉しい太刀川。


「とても信じられないな。

 物腰柔らかそうなのに。」


 松浦がお茶を飲みながら話に加わる。


「姉貴は琴やってるからそんな感じに見えるんだろうな。

 けどよ、姉貴のプリンを黙って食べただけで三日間は口利かなくなるし、ノック忘れて部屋に入ったらしこたま怒られるしよ。」


「それはお前が悪い。」


 松浦と金森はビシッと太刀川を指さし、ユニゾンのダメ出し。


「つーか、お前、姉ちゃんの事、相当好きだろ?」


 金森が追及する。


「なんでだよ?」


「わかるよ。

 ――で、お前は姉ちゃんの下着でエロい事したん?」


「!? し、しねぇよ、ンなコト!!」


「隠さなくったっていいって。

 姉ちゃんを持った弟の通過儀礼みたいなものなんだからよ。」


 金森は太刀川の肩に腕を回す。


「通過儀礼‥‥なのか?」


「まあ、した後はほぼ百パー後悔するらしいけどな、はっはっは。」


「――だろうな。」


 そう答えた後、自分が狡猾且つ卑劣な誘導尋問に引っ掛かった事に気付く太刀川。


「はいはいはい、自白しましたね、太刀川教経(のりつね)くん。」


「ち、違げぇ! 俺はただ‥‥。」


「ただ?」


 金森がジト目で見つめる。


「つうか、勉強しよーぜ、勉強。

 まずは初日の数学だ。

 目指せ、赤点突破!」


 太刀川は教科書とノートのコピーを交互に見始めた。


「そうだな。

 俺たちは勉強しに来てるんだからな。

 ――だろ、親分。」


 松浦の言葉に、金森は太刀川に回していた手を放し、自分の席に就いた。


「その通り、シャンゼリゼ通り。

 さあ、勉強、勉強っと。」



 三人はその後もわからない所を教え合い、時に探り合い、初日の勉強会を何とか乗り切った。

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