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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第十四章 剛と柔
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剛と柔【Aパート】

この作品は『エンターブレインえんため大賞(ファミ通文庫部門)』の最終選考まで残ったものを20余年の時を経てリライトしたものの続編となります。

「お前とは対照的なピッチャーだな、あの鷹ノ目(たかのめ)という女子は。」


 マウンド上から投球練習を行う直実(なをみ)の鉄腕ラリアットを見た白鳳(はくほう)学院の軟式野球部監督・滝口(たきぐち)が、隣りに座る女子投手・吉野(よしの)(しずか)に話し掛けた。


「――ですね。」


 『マジカル・サブマリン』の異名を取る静が答える。

 しかし、続けざま、


「ですが、関係ありません。

 私は私の投球をするだけです。」


 凛とした表情で言い放った。


「おーおー、相変わらずだねぇ、ウチのエースは。」


 静の背後から小野寺(おのでら)兄弟(ツインズ)の兄・嗣信(つぐのぶ)が会話に割り込む。


「でもさぁ吉野ぉ、いっつもそんな顔してると疲れない?

 だから『鉄仮面』なんて仇名(あだな)がついちゃうんだよ。」


 双子の弟・忠信(ただのぶ)が茶化す。


「鉄仮面で結構です。どうせ呼んでいるのはここの部員(チームメイト)だけでしょうし。

 第一、加藤(かとう)(はじめ)さんみたいで恰好いいじゃないですか。」


 からかい甲斐(がい)のない静に、小野寺兄弟(ツインズ)(そろ)って肩をすぼめた。


(正直、(うらや)ましい。

 百四十後半‥‥いえ、百五十は出ているかしら‥‥。)


 静は直実に嫉妬(しっと)に似た感情を覚えた。

 どんなに多種多様な変化球を持っていようと、優れた決め球を持っていようと、投手という生き物はストレートの速さに(あこが)れる。それは静とて同じであった。

 しかし、そんな想いを冷たく呑み込むと、自分の隣りで投球練習を静観しているチームの主砲・景清(かげきよ)光朗(みつお)に、


「みーく‥‥」


 そこまで言って咳ばらいを一つ。


「景清さん、一点でいいですから。」


「――ああ、わかってる。」


 静のつぶやきに景清は金属バットのグリップの感覚を確かめながら答えた。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、誠にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あえて直実のセリフを書かず、敵側からの視点で第1部分を書くという大胆な手法に度肝を抜かれました。
[良い点] ピッチャーの心理がよく表されていますね。
[良い点] 主人公のセリフがない第一部分という大胆な出だしがすごいですね。
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