釣りをしていたら人魚、天使、女神が釣れて、全てリリースしていたら最終的に○○が釣れたので連れ帰って「妻」にした。
コメディに初投下?
超短編です!
俺は釣りが苦手だ。
死んだオヤジの釣り道具一式があるので適当に餌をつけて川や湖や海に投げ込む。
適当な餌だから何も釣れない。
釣り竿を持ったまま、ぼーっとしているだけ。
この時間が俺にとっての至福の時だ。
オヤジの遺産が思った以上に多くて、ブラック企業に辞表叩きつけた時の課長の顔は見ものだったなあ。
…
…
…くいくい
うそ?
かかってる?
釣り糸が引っ張られる感覚。
しかし、なんでかかるんだ?
『ワンカップ関取』なのに?!
とりあえず引っ張ったら、あっさりと釣り上げられた。
というか、自分から飛び出してこなかったか?
釣り上げた魚は大物だけど魚じゃなくて…魚人?!
「人魚よっ!あんなキモい魚人どもと一緒にしないでくださいっ!」
そうなのか。良くわからないが、とにかくごめん。
とりあえず、リリースしないと。
「ちょっ!釣り上げたくせに持ち帰らないんですか?!」
「そんな大きな魚を飼える水槽は無い」
「人魚ですって!普段は風呂場に置いてもらえばいいですから」
「風呂に入れなくなるだろ」
「私はスーパーな人魚なので水温100度でも平気ですよ」
「水風呂になる心配をしてるんじゃない!恥ずかしいだろ」
今でも巨乳チューブトップだぞ。
「嬉しくないの?」
「それ以前にお前はどうして平気なんだよ?なんで俺の家に来たがるんだ?」
「人魚は釣られて最初に見た相手に惚れてしまうんです。もうベタ惚れです」
「酒に釣られて一目惚れするような女性はいらない」
「ひどっ!」
「そうだ、俺はひどい男だからさっさと忘れろ」
俺は人魚を海に突き落とした。
そして海岸をひた走って車に飛び乗り、今度は川へ。
今度の餌は電球にしよう。
これなら何も喰いつかないだろ。
ちゃぷん
それにしてもさっきの人魚は美女だったけど好みじゃないなあ。
俺としてはもう少しムチムチしていたほうが。
特に健康的な太ももに惹かれるんだよなあ。
だから人魚はアウトだ。
くいくい
あれ?
くいくい
釣り糸が引っ張られてる?
電球に何かひっったのか?
ぐいっ、ぐいっ、ぐいっ、ざばーん!
出てきたのはまさかの
「白鳥?」
「天使ですっ!」
「何で天使が天使が川で釣れるんだ?」
「こっちが聞きたいですっ!」
「とりあえずリリースな」
ぽいっ
ジャブン
バシャバシャ
ぶくぶくぶくぶく
泳げてない?沈んだ?
「おいっ!」
俺は川に飛び込むとおぼれている天使を掴んで引っ張り上げた。
というか、ここ浅いだろ!足着いたぞ!
「何で川に放り込むんですかっ!天使は泳げないんですよ!」
「じゃあ、何で川から…わからないんだったのか」
「とにかく飛んで帰りますから」
「濡らして悪かったな」
俺は車から毛布を取ってくると天使にかけてやる。
「あなたも濡れてるのに」
「このくらい、放っておけば乾くからな」
そして俺は天使と別れて湖へ。
もしかしてここでも『へんなもの』が釣れるかもしれないな。
餌を何にするか…よし、あんぱん(袋入り)だ。
ぽいっ
ちゃぷん
ぷかー
袋入りだから浮くのか。
まあいいや。
さっきの天使も可愛かったな。
羽とかモフモフしたかったな。
毛じゃないから固いのかな?
ダウン羽毛ってどの部分だろ?
くいくい
釣り糸が引っ張られてる?!
見ると、浮いているあんぱん(袋入り)が水中に引き込まれている。
「今度は何が出てくるんだ?!」
もう魚が釣れるとは思っていない。
人魚、天使と来て、次は…
ぐいいいいいいっ!ざばあああっ!
「わっひは、めはみれふ(私は女神です)」
女神様だった。
でもあんぱん(袋入り)を咥えながらしゃべっているから女神様の威厳が台なしだ。
~しばらくお待ちください~あんぱん実食中~
「こほん。私は湖の女神です」
「『金の斧』の話に出てくるような?」
「それを知っているのなら話が早いです」
何か湖に投げ込んだっけ?
あっ、もしかしてさっき女神様が食べたあんぱんが『金のあんぱんと銀のあんぱん』とかになるのか?
「あなたがリリースしたのは、こちらの人魚ですか?それともこちらの天使ですか?」
突如目の前に現れる見覚えある二人。
「…」
正直に言うのが正解なのだろうけど、これってもしかして両方持ち帰れと言うのか?
「リリースしたのは両方ですから、要りません」
「正直に言ったので両方と私を差し上げますわ」
女神様もっ?!
何で?俺モテ期到来なの?!
「すみませんが、俺が女神様みたいにすらっとした美人は苦手で」
「私は?」
「人魚は足が無いので」
「私は?」
「天使も色気が無いので。というか、もっと太ももがムチムチした女性が好みなので」
「「「はあ」」」
3人はため息をつくと湖に沈んでいった。
天使、溺れてないよな?
とりあえず帰るか。
でもまだ時間早いよなあ。
よし、何も釣れない畑に釣り糸飛ばすか。
しかも餌は無し、釣り針だけだ。
…
…
…なんで釣れるんだよ。
しかも大根。
あっ、畑の持ち主らしき人発見!
「すみませーん!畑に釣り糸投げたら、大根釣れたんですけど、返します!」
「うちの畑に大根は無いんだけどな」
え?
「この辺で大根なんか作ってないよ」
じゃあ、どうするのさこれ。
仕方ない。
今日は刺身を買って帰って、大根は『つま』にするか。
そして俺は釣れた大根を『つま』にすることになった。
おしまい
…じゃないんだなこれが。
「んふふ、旦那様あ」
ベッドで俺に足を絡めてくる彼女。
その足は太くてムチムチしていて、俺好みの『大根足』だ。
釣った大根を切ろうとしたら、その大根がぽんっとはじけて、『大根の精霊』が現れた。
おさげ眼鏡の地味女子だったけど、全体にふくよかで健康的な足をした俺好みの女性だった。
「結婚してください」
「喜んで♡」
やっぱりモテ期なんだな俺。
あっさりオッケーもらえるなんて。
そして俺たちは幸せに暮らしましたとさ。
「女神様」
「何よ、ミサエル」
「私たちなら人間はあっさりお持ち帰りしてくれるって言ったわよね?」
「そうよそうよ!こんな狭い魚のしっぽに足を詰め込んでまで人魚を演じたのに!」
「ガブルエルもそんなに言わないでよ。まさか大根足が好みとかわからなかったもの」
「『お金持ちで優しい』って所しかチェックしてなかったのが失敗ね」
「好みのタイプだったのに」
「いっそ、押しかける?」
「もう大根の精霊と結婚してるわよ」
「私2号でもいいから、ちょっと足太くしてくる」
「どうやって?」
「ケーキ食べ放題のはしご」
「女神行きます!」
「ガブちゃんも行きます!」
半年後、男の風呂場から大根脚になった女神様と天使二人が現れて…。
お読み下さりありがとうございました!