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再会

 次の日、チャドは二日前の商人の館に訪れた。

 襞襟職人に会いたいと願うと、気の良い奥方はチャドを館内に招き入れた。

 年頃の男が結婚適齢期を過ぎた女に会いに来たということに、奥方は余計な気を回したのだろう。チャドの横を歩きながら、『腕の良い娘よ』『真面目だわ』『エリザベス女王は専属の襞襟職人を持っているというけれども私もそうしたいくらいだわ』などと襞襟職人を褒め、チャドの反応を探るように見た。チャドは曖昧な返事をして、奥方をかわした。


 襞襟職人は同じ部屋にいた。前回同様に窓際に立ち、木製の人形にかけた前時代仕様(ゴシックスタイル)の襟を確認しているところだった。

 先日とは違う大きな百合の花のように開いたレースの襟は米粉糊でパリッと仕立てられ、尖った花弁の先が襞襟職人の手に突き刺さりそうだった。

 意味深な目つきで襞襟職人とチャドを交互に見て、奥方が口元に微笑みを浮かべながら去ると


「来ると思っていたわ」


 チャドが言葉を出すより先に襞襟職人が声をかけた。

 しかし、襞襟職人の視線は襞襟に注がれたままである。真剣に生地の細部に目を這わせる女の横顔をチャドは観察した。顎が尖り気味のその女の表情は感情が判りかねた。


「私はマーゴ」


 薄い唇が再び開いたとき、思ったよりも高く、女らしい声をしているとチャドは思った。


「……俺はチャド」

「そう、チャド。それで私に言うことは何」


 相変わらずマーゴの視線は襞襟に落ちたままである。チャドは躊躇ったが、考えていた単語を並べだした。


「……川沿いに家を借りようと思う。大きさはこの部屋ぐらいの広さだ。前の住人の家具付きだ。二歩先には居酒屋もあるし惣菜屋もあ」

「決まりね」


 マーゴはやっとチャドと目を合わせた。

 襞襟から手を離し、エプロンをさっと首から抜くと大雑把に畳み出した。


「行動が早い男は好きよ。今日はこれで私は仕事が終わりなの。外に出ましょう」

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