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チートな俺の異世界生活  作者: 響神奈
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1話 チートな俺の初体験

ドン


気づいたときにはもう遅かった。両耳にイヤホンをつけたまま渡っていた佐藤健太は、赤信号を無視して突っ込んできた車に気づけなかった。体は飛んでいき、物を上げて落ちてくるときと同じように無情にも近くの歩道に落下した。

周りの状況はと言うと、言葉を失い口を押さえる人、119番に電話して救急車を呼ぶ人、近くに寄って「もしもし、大丈夫ですか!」と肩をたたきながら意識があるかを確認をする人など様々だ。


だが、どんなことをしてももう手遅れだ。

なぜなら、彼はもう死んでしまったのだから。


でも、これで彼の物語が終わったわけではない。むしろこれから始まるのだ。彼の『新しい人生』が。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「佐藤健太さん」


・・・。 音もない空間。感じた事ない本当の無音な空間に響いた透き通った優しい声。


(人の声? 俺は死んだのではなかったのか)


「起きてください 佐藤健太さん」


(再び声がする。生きているかどうかはわからんが、声は聞こえるため、存在はしているらしい)


健太に意識が戻りそれと同時に、感覚も少しずつではあるが戻り始める。


(ふむ、感覚が戻り始めたのか知らないが、足が地面に触れている感じや、足が曲がっている感じ、背中とお尻に板のような硬く冷たいものが触れている感じ、そして今、そんなことより首が痛い。

この感じどこかで…クソッ! 思い出せそうなのに思い出せない)


ふと、健太の脳裏に浮かんだのは、教室で一人弁当を食べている自分だった。


(そうだ、思い出したぞ! 俺は今座っているんだ、だがよりにもよってなぜボッチ飯の記憶が浮かぶんだ。まぁ、今はそんなことどうでもいいか。だがなぜ、こんなことも忘れていたのだ俺は、まぁいいのだが、座っているのであれば肉体は存在しているということだ。つまり…)


肉体の確認ができたため健太はそっと目をあけた。


「な!? なんだここ、あたりが真っ白ではないか」


そう、そこはあたり一面真っ白な空間だった。何の色も存在しないただの真っ白な空間。だがすべてが白というわけではなく、目の前には健太と同年代くらいか一つ二つ下くらいの美少女が椅子に座っていた。男子諸君が女子に対する理想を具現化したような、ボンキュッボンな少女が。


「お目覚めになりましたね、 はじめまして私は天使、熾天使ガブリエルです」


そう言うと天使様は、ニコッと笑顔を見せた。


「天使様… か。ではやはり俺は死んだのだな」


健太は腕を組み小さくため息をついた。


「はい、佐藤健太さん。あなたは車にはねられ、打ち所悪く亡くなってしまいました」


「あぁ… わかっている」


一度視線を下におろした健太だが、すぐ視線をもとの場所に戻す。


「さて 話は変わるが、天使様、ここは何処だ?あと俺はこのあどうなるんだ?」


(さすがに自分の死因を他人に言われたらこうくるものがあるが、いくら悔いてもおきてしまったことは変わらないしな)


ガブリエルは少し驚いたような表情を見せたがすぐ笑顔をつくり口をあけた。


「はい。ここは言うなれば、 これからの健太さんの生活を大きく分けることになる分岐点です。今、健太さんには三つ選択肢があります。この三つの選択肢の中から一つ健太さんには選んでいただきます」


と言ってガブリエルは人差し指と中指そして薬指をたてた。


「わかった。じゃ、一つ目の選択肢頼む」


「わかりました。では、 一つ目です」


そう言うとガブリエルは中指と薬指を下げた。


「一つ目は、天国に行くことです! 」


「却下」


「そ、即答ですね」


「あたり前だ、そんなつまらなそうなところに行くはずがないだろ」


「ですよねぇ 確かに地球人からしてみたらつまらないところですからね」


天国とは とても平和なところである。本当に何もおこらないし、何者も喋らないそんな魂の休息地が天国なのである。


「では、一つ目は却下とのことですので次に二つ目」


そう言って人差し指と中指をガブリエルはたてた。


「二つ目は生まれ変わりです。 記憶は一切消えてしまいますが、また人間として誕生できます」


「却下だ」


またも健太は 何の迷いもなく二つ目の選択肢も拒否した。これには、さすがの天使様も苦笑である。


「わかりました では、最後に三つ目です」


ガブリエルは人差し指と中指そして薬指をたてた。


「三つ目は異世界『転生』ではなく異世界『転移』です」


「それだ! 三つ目があるときいてもしかしたらと思ってはいたが、まさか本当にくるとはな」


ビシィと健太は人差し指をガブリエルに向ける。


そのあと、手を顎にあてニヤニヤし始める健太。彼は成績優秀。スポーツ万能。そしてイケメンではあるが、アニメやラノベが大好きな立派なオタクなのである。異世界転生ものや転移ものを読んだことがある人なら一度は思ったこと願ったことがあるのではないだろか、死んだら異世界に転生(もしくは転移)できたらと。 彼もその一人なのである。


「うん? 異世界『転生』ではなく異世界『転移』と今言ったか?」


「えっと言いましたが」


すると健太はその事実を知り自問自答し始める。


(異世界転生では、ないのか残念だ… スライムや骸骨剣士や色々なりたものはあったが、だがよくよく考えてみれば異世界転移も案外いいかもな俺の力で切り開く実にいいではないか! )


何とか自分で自分を説得できた健太。と、気持ちの整理がついたところで ある疑問が浮かんだ


「そうか、転移か。まぁいい、そこら辺はもういい」


「あ、そうですか」


「あぁかまわん。で、転移のことなんだが一つか二つ質問いいか? 」


「いいですよ、一つや二つと言わず何回でも 気軽にきいていいですよ」


「わかった。で、質問なんだが、転移する異世界の言語やお金は天使様が何とかしてくれるのか? 」


「はい、 そこらへんは こちらが何とかしますので安心してください」


女神は両手をあわせてそう言った。


「そうか、それはよかったさすがに言語を一つ覚えるのは難しいからな」


「そうですよね 。あ、でも一つ」


何かを思い出したのか、ガブリエルは人差し指を口の近くでたてる。


「言語を一つ無理やり覚えるわけですから少し脳に負荷がかかるかもしれません」


「まぁそうだろうなとは、思っていた」


「あと、お金のほうは銅貨から始まり、銅貨100枚で銀貨、銀貨100枚で金貨となっており金貨が一番上です」


「承知した」


(さて、そろそろ聞きたいこともないし、行きたいな異世界に)


「俺は他に聞きたい事ははもうないのだが、天使様からは何かあるか? 他に」


「はい、もう質問がないのでしたら最後に…これから健太さんが行かれる世界は察しているとは思いますが、魔王軍と人間達が争いあっている世界です。佐藤健太さんにはまぁ、これは決して無理にというか、強制ではないのですが。あなたはどこか他の人と違うような気がするのであえてこう言います …あの世界の魔王を消滅させてください」


最後のガブリエルの願いにも聞こえた言葉は先ほどまでとさほど声のトーンは変わってはいないものの、この短い時間の中で一番感情のこもった声だったと言えるだろう。


「フッフハハハハハハ!おもしろいことを言うじゃないか天使様。魔王を消滅させてください…か、わかった まぁ俺に任せておけ」


健太は右手をグーにして胸にあて、ガブリエルにその決意を示す。


ガブリエルはその時、営業スマイルではなく本当の笑顔を見せた。


「はい! わかりました! ではそのためにも私の力を使って好きなスキルを一つ差し上げましょう!」


ガブリエルが両手を広げたその瞬間無数の光が現れる。その光は丸く色々な色にわかれていた。


「あ、基本何でもいいのですが、敵を見ただけで殺せるみたいなスキルはさすがに差し上げることはできません…でも、それ以外なら基本何でもいいですよ! さぁ選んでください! 」


「いらん」


またしても即答だった。


「え? 」


「どうした? 」



「あ、あのいらないんですか? 」


「いらん、まぁ魔法も何も使えない、今のままなのであれば、魔法を使えるようにはしてもらいたいな」


あまりにも予想外の言葉でガブリエルは半ば放心状態である。


「じゃ、魔法を使えるようにしといてくれ。では、もう他にはないな? もし、ないなら異世界転移のほう頼む」


健太はその場から立ち上がる。早く異世界に行きたくてたまらないらしい。


「本当にいらないんですね? 」


ガブリエルは一応最後に確認をとる。


「い・ら・ん」


「わかりました。あ、魔法は使えるので問題ありません…では」


パン! とガブリエルが手を叩くと健太の立っている真下に青い魔法陣のようなものが現れる。


「おお! これが魔法陣か」


「はい、そうですよ」


予想外の健太の決断に、完全にペースを失ったガブリエル。そんな事には気づく事もない健太を魔法陣よ光が包み込む。


「じゃあ、また会いにくるぞガブリエル。お前は気に入った。では、行ってくる」


「はい、いってらっしゃい健太さんってええ!? 今、何て!?

また会いにく…」


ガブリエルのセリフが終わる前に健太は異世界に転移した。

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