第8話 魔法、練習
「おはようヒーゼル!今日からヒーゼルにまほーを教えてあげるわ!」
朝から姉が元気だ。いや、そうじゃない。え?魔法?教えてくれる?
「おはよう、ねーね。まほー?」
相変わらず語彙と発声が貧弱なのはまぁいい。まだ生まれて1年齢程度だから仕方ない。
それよりも、何故姉は突然俺に魔法を教えようとしているのだろうか?
「そう、まほーよ!ヒーゼルは魔力がキレイに回ってるからきっと私みたいにまほーが使えるわ!さぁ、練習よ!」
そういうと姉は俺の後ろに回り込んで抱き締めた。
「よく見ててね。こんな風に魔力を集めて、お日さまみたいな光ってるものを考えながらひかれーってやると光の玉みたいなのができるのよ。さぁ、ヒーゼルもやってみましょう?」
そんな説明のようなそうでもないようなことを言いながら、魔力をゆっくりと動かして発動するところを見せてくれた。
どうやら魔法はイメージでだいたいどうにかなるのだろう。
とりあえず言われた通りにちょっとした明かりをイメージしてやってみよう。
目の前に姉の魔法の光があるのでそれを参考にしようか。
「ひかれー」
姉と同じように、腕に魔力を集めて目の前の光の玉をイメージし、発動しようとしてみる。
すると、思っていた以上に簡単に光の玉が現れた。
姉の光の玉と瓜二つで、同じような明るさで光っている。
初めての魔法に少し感動しつつ、いくつかポンポンと生み出して練習することにした。
「本当にできるなんて...しかもこんなにポンポン連続で...あ、えっと、一発でできるなんて、ヒーゼルってばすごいのね!流石私の弟ね!さぁ、どんどん練習しましょう。次は、えーっと、火は台所か広い外以外で使っちゃダメって言われているから、水のまほーをやってみましょう。」
そういうと、同じようにゆっくりと見本を見せてくれた。
だが、光と違い、水は生み出した後長い間操作はできないようだ。
水の玉が現れ、少し見とれていたらそのまま落下して床が濡れてしまっている。
「あ、しまった。ヒーゼル、やっぱり水はダメ。部屋が濡れちゃう。あ、大丈夫だった?ヒーゼルは濡れてない?」
「へーき、ねーね。まほー、すごいね!楽しいね!」
どうやら考えなしに使ってしまったようで、濡れた部屋をキレイにするために今日の魔法講座は終わりのようだ。
せっかく色々教われそうなのに少し物足りなかったが、仕方ないことだろう。
「あ、後ね。ヒーゼル、まほーは私がいるとき以外は使っちゃダメだからね?わかった?」
「あい!」
そういうと、姉は掃除用具を取りに部屋から出ていった。
せっかく覚えた魔法を使うことを制限されてしまったが、まぁ、監視が必要なことを考えると仕方のないことだろう。
そういえば、1歳児に魔法の使い方なんて教えてよかったのだろうか?手当たり次第に魔法を連発するような子供もいそうなものだが。