第7話 一年、片言
生まれてから1年程たった。正確に何日かなんて数えてないので1年が何日かなんて知らないし、もっと言えば1日が何時間なのかも知らないけど、だいたい1年過ぎたので俺も1歳になったのだろう。
もしくは数え年なら2歳かな?どういう文化なのか知らないのでおいおい学んでいくことにする。
言葉に関して、少しだけ進展した。というのも、姉がよく一緒にいるので、何かしら喋ってくれるのだ。
そして、そんな俺たちの様子を見るときには母親も姉と言葉を交わすので、周りの環境として言葉に触れる機会が増えた。
それらの姉や母親の言葉を真似ていくうちに、段々と単語は理解できていったのだ。
今では日常生活で使う単語の6割程はわかるので、なんとなく何を喋っているかもわかるようになったが、発声がうまくできないのでこちらからは曖昧な喋り方しかできない上に、単語を繋げただけという状態でいる。
まだまだ赤子だからこれから覚えていけばいいさ。
ちなみに父親と兄二人は昼は居ない上に帰ってくる時に一言二言告げられて終わりなので、印象は非常に薄い。
きっと「ただいま、良い子にしてたか?」とか、そんな感じのことを語りかけてくれているのだろう。
表情を見る限りはこちらに対して優しく接してくれているので、嫌われてる訳ではなさそうだ。
あと、男衆が帰ってくると木を打ち付けるような音が近くから聞こえるので、おそらくあの工事だと思っていた音は武術の訓練の音なのだと思う。
3人ともガタイがよく、しっかりと筋肉がついているようなので、日常的に筋肉を使っているのだろう。
もしかしたら大工の一家で、家で3人で木工の練習をしているのかもしれないが、そこは少しだけ夢を見て騎士一家に生まれたのだと思っておくことにする。
あと、いい加減姉の名前がわかった。
母親が姉にマーレと呼び掛けるときに返事をしているので、姉はマーレと言うのだろう。
もしかしたらこれは愛称なのかもしれないが、ゆくゆく覚えれば良いだけの話だ。
ふと、姉さん呼びをしていたら名前知らなくてもなんとかなるのではないかと、そんなひどいことが頭を過ったのは秘めておくことにする。
片言とはいえ言葉を理解できるようになると、姉や母親との会話が楽しくなってくる。
拙いながらも一所懸命に喋りかけるとはっきりと応えてくれるし、相手もできるだけで伝えようとしてくれるのか、ゆっくりはっきり喋ってくれるのでどんどん語彙が増えていく。
この中のどれが幼児語なのかはわからないが、基礎があれば大人の言葉を覚えるのも楽になるだろう。
できれば辞書のようなものがあると、難しい言葉の勉強が楽になるのでそこは期待することにする。
そのためには、あのミミズがのたくったような文字もどうにか覚えなければならないというのが少しつらい所だが。
日本の学生時代にこんな感じで勉強していたらもっと英語を覚えられたのかなぁとも考えることもあったが、おそらく翻訳ツールか何かに頼って逃げ道を探していたような気もする。
まぁ、そんな今更どうにもならないことはいいか。
頑張って言葉を覚えて、流暢に話せるようになろう。