第4話 はいはい、言葉
更に2ヵ月程の時が経ち、現在生後7ヵ月位になった。ようやくはいはいができるようになり、最近はちょっとした運動や探索を兼ねて積極的に動くようにしている。
部屋の外を見ること事態はできないけど、魔力による感覚でなんとなくなにがあるかがわかるので、世界が一気に広がったように感じた。
それに、魔力に視界を連動させられるようにもなったため見えない位置のものも見えるようになったのだ。
勿論魔力が影響を及ぼせる範囲に限定されるが、それさえクリアすれば箱の中のような暗い所も、視界が通っていない所も見えるのはとても便利なのだが、当然のことながらデメリットもある。
単純に、頭がついていけないのだ。実際に目で見ている映像に別の映像を重ねてるようになるので、混乱してごちゃごちゃになってしまう。
慣れればしっかりと両方を処理できるようになるかもしれないと期待しているので、今は無意味に色々と見るようにしている。
ちなみにやろうと思えばスカートの中だろうと衣服の中だろうと簡単に覗けるのだが、今のこの体でそれをしても虚しいだけなので気にせず与えられたオモチャを色々観察している。
俺に与えられたオモチャは綺麗に磨かれた木製のもので、口に入れても良いように加工されているのだろうがその辺りの知識が無いためなんかツヤツヤしている滑らかなものとしか思えない。
色がつけられていないし、よく分からない形のものなので、もしかしたら手作りのものなのかもしれない。
ちなみに歯が生え始めているので、むずむずするときにこの滑らかな、ツルツルのオモチャはしゃぶると少し気持ちいいので密かにお気に入りだったりする。
あと、言葉についてはいまだによく分からない。
考えてもみて欲しい。全く言葉が通じない所に辞書もなにももたず、ボディランゲージもなく勉強しろとか無理に決まっている。
英語を習い始める生徒だって英和辞典を用意してようやく始められるのだ。
英語を覚えようとする相手に英英辞典を渡しても謎の暗号書にしか思えないだろう。
今の俺もそんな感じで、なんとか単語を把握し始めることが出来ないかと両親の会話や目線には注意を払っている。
絵本みたいなものがあれば名詞がわかるようになるので、その辺りをそろそろ見せて欲しい。
世の赤子はどうやって言葉を覚えるのか少し気になってしまう。
あと、気になる親の名前なのだが、これもよく分からない。
というのもお互いの呼び名はあるのだが、それが固有名詞なのか一般名詞やあだ名なのかと、判断することが出来ないのだ。
例えば日本の家族でも、夫が妻を呼ぶときに「おまえ」とか、「ハニー」とかあだ名とか、候補がいくらでもあるのと同じだ。
なので、実は明確に理解している単語はひとつも無かったりする。
いい加減こっちの世界の言葉をちゃんと教えて欲しいのだが...流石に赤子に言葉の授業なんてしないよなぁ。
切実に和訳辞典が欲しい。