第20話 転居、しつけ
季節は秋になろうかとしてる頃。
内外への根回しは済んだようで、扱いが婚約者のそれに変わったらしいのだが、当人である俺達にとってはあまり大きく変わっていなかった。
そう、いなかったんだ。あくまで過去形。
秋から俺はヘルマの家で暮らすことになりました。
完全に居を移すのではなく、6歳までは秋冬をこちらで過ごして将来の為の教育やしつけを学び、春夏は実家に帰ることになっているらしい。
なんでそんなに詳しく知ってるかというと、滅多に帰ってこない父からそう告げられたからだ。
1歳から既に教育が始まるのかと貴族社会に驚きつつも、自分の為になることなので頑張ろうと思う。
ついでに併せて父から、春からは武術も鍛えてやると言われてるのが不安でしかない。
1歳...春なら2歳か。2歳の赤子に武術を教えるって、大丈夫なのだろうか。
その時期ってまだまだ体が充分に成長していないと思うんだけど。
でも、兄姉という前列があるからやらされるんだろうな。少し憂鬱。
まぁ、未来の憂鬱は未来の自分に任せて、今日からはヘルマの家にお世話になることになりました。
多分次期党首としての教育もそのうち来るだろうけど、今はまずちゃんと言葉や文字を覚えられるように頑張ろうと思う。
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すぐに教育だと緊張感をもって臨んでいたら、最初はヘルマと一緒に遊ぶことから始まりました。
そうだよね、1歳児を勉強漬けにはしないよね。
でも、おもちゃは知育玩具系が多いらしくブロックパズルみたいな同じ形の穴にはめこむおもちゃとか、色のついた積み木等があり、使用人が近くで俺達に課題を与えたりと遊びながらも学ばせる工夫がされていた。
どうやら俺が来たことでヘルマの競争心に火が着いたらしく、今まで以上に頑張っているらしいことを遠くで話している。
ただ、それを愛の力だのなんだのと囁きあうのはやめてください。
直接言うのではなく、聞こえにくいように気を遣いながら使用人同士で話してるから余計にこう、ね?
ヘルマは聞こえてないのか、それともそんなことに構っていないだけか、一緒に遊んでと構ってくるので俺も聞こえないことにしてヘルマと楽しむことにした。
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食事の時はマナーのしつけが始まるらしい。
とはいっても大人のような振る舞いを求められるのではなく、正しい食器を使うこと、口にものを入れているときに喋らないこと等の基礎から始めている状態らしい。
おそらく、俺がどの程度教育されているのか確認する意味合いもあったのだろう。
まぁ、フォークやスプーンを適切に使えていれば及第点はとれていたらしく、食事中にも食後にも何かを言われることはなかった。
ついでに俺も大人の食器の使い方をみていたが、どうやらヨーロッパのマナーとだいたい一致するようだ。
細かい点はこちらはもちろん前世の方も詳しくないので、多少違いはあるとは思うがこれから学んでいけば良いだろう。
食事の不安要素としては、すすらないように気を付けるってところだろう。
麺類や熱いスープ、お茶なんかはどうしてもイメージ的にふーふーズルルッといきたくなるが、この辺りでそんな音を立てて食べるのは顔をしかめられるに違いない。
この辺りは日本人の記憶の弊害だとは思うが、得も多いので静かに食べる癖を今のうちからしっかりと身に付けよう。




