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第18話 微睡み、うっかり

ふと、視界に母親達の姿が入っていることに気が付いた。

愛いものを愛でるような、微笑ましいような視線は(あたか)も動物の子供達のじゃれあいを見ているかのようだ。

まぁ、俺達も子供なのだから間違ってはいないか。うん。


そんな暖かい視線は全力で見なかったことにして、ヘルマに視線を集中させる。

起き抜けなのにと言うべきか、起き抜けだからと言うべきか、ヘルマはまたうとうとし始めているようだ。

もう今日はこのままヘルマには寝続けてもらおうかな。起こすべきだとは思うけど、目を覚ましたらその時にはまたさっきのように、なにをすればいいかわからない時間が生まれてしまう。

それならばいっそのこと今日はお昼寝に徹してしまえば見た目は仲良くなれてるように見えるし、次の時にはきっとその時の俺が何か名案を思いつくはずだと未来の自分に先送り(キラーパス)しようと決めたところで、さっきまで眠そうにしていた目の前の赤色に意思が宿り始めていることに気が付いた。

どうやらヘルマは起きる気になったようだ。パスしたボールが跳ね返ってきたよくそぅ。

でも諦めない。このまま目の前の綺麗な赤色にそのままパスを送り付け...


「綺麗な赤色?パス?」


...どうやら動揺し過ぎてどこからか考えてたことが漏れだしたらしい。どこからってそら口からか。いや、そうじゃなくて、口に出し始めたのがどこからなのかが問題であってですね。


「ヘルマの目、きれーだなぁ。」


混乱し過ぎて勝手に口説き始めたこの口を止めてください。もう遅いか?いや、まだまにあ...


「ありがとう。」


照れて赤くなった顔も可愛いです。いや、そうじゃなくて、どうやら手遅れなようです。

もうこうなったら開き直ってしまおうか。

幸いというべきか、ヘルマは普通に可愛い。まだまだ赤子だとはいえ、母親も美人なのだし、このまま育てばキレイになるだろう。

となれば、ここは光源氏のように、幼い子供を自分の好みになるように導いていけば良いのさ。


あれ、でも光の君って確か元はマザコンで、拗らせ過ぎて母に似た子は手当たり次第手を付けて、母の面影があった幼い紫を自分の好みになるように育てたとかそんな話だったような...


ま、まぁ、細かいことは置いておこう。要はこの子を俺の理想に育てつつ、この子の理想が俺になるようにしていけばいいことだ。うん。

ここで実は男の子だったというオチにならないようにどうにか確定させれば憂いはなくなるな。


と、よそ事を考えて現実逃避するのはやめよう。

今は、何をして過ごすかという最初の問題を解決せねば。


「ヘルマ、今なにしたい?」


解決案、丸投げ。

なんだかんだでこの子がやりたいことを一緒にするのが今は大事だからね、今は俺のやりたいことを押し付ける時ではない。

だからこそ、この案こそが最上なのだ。


「このままでいいよ?」


「わかった。じゃあ、このままね。」


このままなぜることを頼まれたからには全霊を以てさせていただきますとも。なでりなでり。

赤子だからこそ、肌色はもちもちぷにぷにしてて非常にさわり心地がよく、髪もサラサラしていてなでているこちらも大変心地いい。

これが相手も自分も大人だったらセクハラとして訴えられかねないが、両方ともそんなことは頭によぎりもしないのだから問題ない。

そう、問題なんてないのだ。だから視界の端にいる母親達の表情なんて見えないし、婚約がどうこうなんて話も全力で聞かなかったことにする。

でもヘルマが女の子だって確定できたのは少し嬉しいからそこだけはこっそり感謝しよう。

そして、撫でられているのが心地いいのか、目を細めて受け入れてくれているこの子の好みになれるように人知れず努力することにしよう。

相手を染めるだけでなく、相手に染まるのも大事だからね。

お互いの理想になればお互いを大事に思えるようになるはずさ。

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