勇者に寝取り属性はありません!
初投稿です。かなり拙いと思いますがご了承ください。
とある辺境の町の酒場で誰もがフードを目深に被った旅人の英雄譚に耳を傾けていた。
「今宵語るはかつて魔王を退けこの世に平和をもたらした勇者パーティの聖女の話、様々なしがらみに負けず自らの手で愛する人と結ばれた者の話にございます。」
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「勇者パーティーよ、魔王討伐ご苦労であった。」
とある国の謁見の間にて魔王を討伐したパーティーの謁見が行われていた。
「勇者よ、其方には褒美として侯爵位を授けよう。それ以外にも褒美として望ものを申してみよ!大賢者、聖女、英雄も望むものを申せ、叶えられるなら叶えるぞ。」
そう言われ、真っ先にブロンドのゆるふわカールの髪を腰辺りまで伸ばした、白い修道服を着た少女が名乗りを上げた。
「無礼を承知で申し上げます。私、クレアは第一王子であるジョセフ殿下との婚約を破棄を望みます。」
少女-クレア-がそう言うとざわめきが広がった。
それもそのはず、王侯貴族の中ではクレアは人見知りで、いつもおどおどとしていて、勇者の影に隠れているような印象しかもっていなかったのだから。まさか、真っ先に要望をいい、その要望が婚約破棄などとは思ってもいなかった。
クレアの意志が弱いと思い込み、外堀を埋めて行き、ごり押して王妃にし、民の印象を高めようと考えていたため、皆苦い顔をしている。
その中で勇者は思わずほくそ笑む。勇者はこれまでの旅路で時折クレア熱烈なアピールをしてきたし、クレアも勇者には普通に接していたし、何かがあれば勇者に隠れていたり、頼りにされていたためそれが結ばれたと思い込んでいる。
しかし、その笑みも次のクレアの言葉で消えさった。
「私はこれまで、故郷にいる幼馴染みと結ばれるために努力をしてきました、私が望むのはその彼と田舎にて平和にのんびりと過ごす事です。なので私にはお金も、名誉も必要ありません、ジョセフ殿下との婚約を破棄して頂けるだけで十分です。」
そう言った彼女には今までの意思の弱さが見えなかった。
王は一度彼女の瞳を覗き見、その瞳から不動の意思を読み取った。
だからといって、はい、そうですかとは言い難い。
まだ民衆には聖女と第一王子の婚約は伝えていなかったので婚約破棄したところで外面への印象は何の問題もない。しかしここで認めてしまえば、今までの準備が無駄になってしまうし、王族としては聖女の血を取り込みたい。
そして、そんな国王の悩みをクレアもまた、理解している。そのため妥協として、この国では神聖とされている決闘を申し出る。
「それでは、私は決闘を申し出ます。しかし、私は戦闘能力は宮廷魔道士よりも遥かに下回っています。なので、私の張った結界を破壊できたら、皆様の勝ちで、私は第一王子殿下との婚約を喜んでお受けします。しかし、破壊出来なければ、第一王子殿下との婚約を破棄し、故郷へと帰らせて頂きます。」
それを聞いた国王の顔は苦い、なぜなら聖女と第一王子との婚約は民衆は知らない。この国では決闘は公開し、民衆の前で行われる。そのため決闘を行うと、民衆に第一王子が聖女に婚約を破棄され、それが認められずに決闘を行ったと見られてしまう。
そんな中、未だにクレアの想いを認められない勇者が国王にこう言った。
「陛下はここでジョセフ殿下と、クレアとの決闘を行いたくは無いのでしょう。でしたら一対一ではなく一対多とし、クレアの結界を破ったものとクレアが結婚するとはどうでしょうか、誰も結界を破る事が出来なければクレアが良い人を探すために旅にでると言うことにし、故郷に帰るようにすれば誰も怪しまないでしょう。」
それを聞いた国王はそれを了承した。
そしてまた勇者はほくそ笑む。魔王討伐の旅を共にしてきた勇者は知っている。自分が全力を出せばクレアの結界を壊すことが容易いことを。様々な人が参加出来るようにした事で自分が参加し、クレアを自分のものに出来ると思い込み…
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王国の王都の噴水前-デートの待ち合わせスポットとして定番である-にて1人の男が立っていた。彼はいま、5年ぶりに再会する将来を誓い合った幼馴染みを待っている。
彼の幼馴染みは聖女として勇者と共に魔王討伐の旅に出て、この前帰って来た。
彼は5年前に彼女とここで待ち合わせると言った約束を覚え帰って来た日から毎日待っていた。彼女が帰ってきてから今日で1週間、それまで彼女から連絡も何も無い。
彼は内心とても穏やかでなかった。昨今の物語小説では、将来を誓い合った幼馴染みが勇者と共に過ごすことで、どんどん勇者に惹かれて行き最終的に勇者とくっつく物語が多くなっている。
それに自分を重ね合わせてしまい、彼はどんどん不安になっていた。
そんな彼の内心を憚らず、明るい声が彼に聞こえた。
「ケイトくん!久しぶり!」
彼-ケイト-は顔を声がした方にバッと音が聞こえそうな速度で振り向いた。
そこには忘れもしない、ケイトの大切な人がいた。
「久しぶりだね、クレア。旅は大丈夫だっ――ぐふっ」
思わず駆け出してしまいそうなのを押し込んで務めて冷静に対処しようとしたが、クレアが飛び込んできた。
飛び込んだクレアは向日葵の様な笑顔を見せケイトにこう言った。
「逢いたかったよ!ケイトくん!私ね、頑張ったんだよ、辛くなる度にケイトくんと一緒に平和になった世界で暮らすんだ、って思いながら。」
ケイトはそう言ったカノジョの腰あたりに尻尾がブンブンと振って居るのを幻視し、彼女がまだ自分の事を想ってくれている事にホッとすると同時に前まで疑っていた事に罪悪感を覚えた。
「本当にお疲れ様、もう故郷に帰れるかい?帰ったらのんびりと畑でも耕して暮らそう。クレアが旅に出てる間でかなり家事は上達したから、まかせてよ。」
「まだ、帰れないんだ…実は…勝手に王子と婚約されちゃっててね…それを破棄するために1週間後に決闘をするんだ。だからそれが終わったら故郷に帰ろう!あ、ケイトくんも決闘見に来てね!席は私の真後ろで!絶対に負けないから大丈夫だよ。」
そう言って両手を握りふんすっと鼻を鳴らした彼女がとても愛らく、ケイトは頭を撫でた。
「僕のためにありがとう、クレア。何もしてやれなくてごめんな。」
「ううん。ケイトくんがいるだけで私は充分だから。ケイトくんと一緒にいるだけで力が湧いてくるもん!」
そうして1週間、ケイトとクレアは久しぶりの逢瀬を楽しんで王都を過ごした。
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「只今より聖女クレアの婚約者を決める決闘を行う!聖女クレアの結界を壊した者が聖女クレアと婚約者になる事が認められる!」
「「「「おおおおおーー!」」」」
2人の再会から1週間。運命の日が訪れた。
挑戦者は100人超、30分の間にクレアの結界を破壊出来た人がクレアとの婚約が認められる。
約束通りケイトはクレアの真後ろとなる位置で不安そうにクレアを見つめている。
「クレア、頑張れ!」
その声を聞きクレアは微笑んでから結界を張る。
「【聖結界】!!」
クレアが結界を貼ったのを審判が確認し、決闘の火蓋が切って落とされる!
「それでは只今より30分間、始め!」
始まり合図が行われたが、誰も攻撃を行わない。
それもそうだろう、相手は魔王を倒した勇者パーティーの防御と回復を担った聖女だ。結界を破る事は容易くは無いだろう。相手が攻撃をし、結界の耐久が落ちたところで攻撃を加え結界を破ろうとしているのだろう。
しかしこのままでは無駄に30分が過ぎてしまう。
誰もが様子を見ている中1人動き出す者がいた。勇者だ。
「【聖剣召喚】!!くらえ、【流星斬】!!」
勇者の手に聖剣が召喚され、目にも留まらぬ速さで斬撃が放たれる。この斬撃一つ一つでAランクの魔物――1体で村一つは滅びるレベル――を一撃で倒す事ができる威力がある。
「よしっ」
勇者は砂煙が立ち込めている中で勝った事を確信する。
しかし煙が晴れた中で見えたのは攻撃を受ける前となんら変わりのない結界とクレアの姿だった。
「なぜだ!なぜ壊れない!!」
勇者にはこれが不思議でならない、なぜなら旅の中でクレアの結界はそんなに強く無く、Aランクの一つ上のランクであるSランク――これは一体で町を滅ぼせる――の一撃をギリギリで耐えらる程度しか無かったのだから。
しかしほかの人にはこの結界の違和感は分からない、勇者が程よく耐久を削りチャンスと考え皆動き出した。
ある戦士は力任せに強引に。
ある王子は一点に集中し魔法を放つ。
ある魔道士は攻撃を受ける際に瞬時に受ける所を硬くして、防いでると思い範囲魔法を放つ。
しかしどれだけ攻撃を受けようとクレアの結界はびくともしない。
これはクレアが必要が無いのであまり語る事の無かったスキルの効果である。
スキル【純愛】
効果:半径10m以内に想い人がいる際に任意で発動。
結界内に想い人がいるなら60分間全ての攻撃を防ぐ結界を張る。結界が解けたら術者は30日間ステータスが10分の1になる。
このスキルにより始めからクレアの勝利は確定していたのである。
そしてそのまま誰も壊すことができずに30分が経過し、結果を審判が語る。
「そこまで!!今回の決闘勝者は聖女クレア!!」
これにて決着は着いたと思われた。
「なぜだ!なぜだ!勇者と聖女がくっつくのが物語の決まりだろ!こんなの認められん!」
と勇者が騒ぎクレアの元へ駆け出したが、
「【水縛】!!」
客席から飛び出した大賢者に止められる。
「あんたね、これは物語じゃないのよ!!現実を見なさい!それにね、クレアの結界が強くなったのはスキルの効果よ。想い人が近くにいると結界が強くなるって効果。」
大賢者はクレアと旅で恋バナをしていたのでクレアがケイトが好きな事やこのスキルを知っている。
大賢者の声で会場にざわめきが走る。
それもそのはず、この場にいる人の殆どは聖女の好きな人は強い人であるからその人を探すための決闘だと思っていた、しかしこの大賢者の発言で殆どの人が勇者を振るためだと思い込む。真実は勇者でなく王子だと言うのに。
そうしてその中でクレアが立ち上がりケイトの腕を組んでこう言った。
「私、クレアは故郷の幼馴染みが好きです!そのため幼馴染みとのんびりと田舎でこれからは過ごします。さようなら!」
そう言うと辺りが光に包まれる。
光が止むと、そこには素早い展開に着いていけない民衆と認められないと喚く勇者が残され、クレアとケイトの姿はなかった。
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―――そしてその後2人で幸せに暮らす姿が田舎の村で見れたとか見れなかったとか。
これにて物語は終幕です。如何だったでしょうか。それでは、またどこかで。」
そう言うといつぞやの決闘の時のように辺りが光につつまれ光が止んだ時には男は居なくなっていた。
場所が変わって田舎の村にて先程まで物語を語っていたフードの男が一軒の家の前に立っている。
その家は質素で生活感溢れる外見をしている。男はその家のドアを開きこう言った。
「ただ今帰りました、クレア母さん、ケイト父さん。」
如何だったでしょうか?
初めて小説を書いて見ましたけど難しいですね…。
頭の中で思い描いてるのが全然表現出来なくて。
自分が読んでる物だけかもしれないけれど勇者と共に過ごした幼馴染みがくっついて主人公が悲しむ物が多く、幼馴染み同士でくっつくのも欲しいな、と思い書いてみました。