表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第三章
95/156

引きこもる鳥籠

 催眠に掛かっている奏と会ったその日は、未来は家に帰ることにした。奏の様子がおかしくなっていることで、頭が混乱し、他の人に会えることはとても出来なかったからだ。もしかしたら、自分の家さえおかしくなっているのでは?

 そういう不安もあって、未来は自分の家へと急いでいた。息を切らしながら自分の家に辿り着き、ドアノブを回して飛び込むように玄関へと入った未来。玄関前はひっそりと静まり返っていて人の気配がない。

 未来は恐る恐る大声を出して自分の帰宅を告げた。


「た……ただいまー!! ……誰か、いないの?」


 誰かの声が聞こえてくることなく、先ほどと同じように辺りは静まり返っている。不安になった未来は靴を脱ぎながら何度も大声を出した。いつもならば靴を揃えるのだが、今日は脱いで散らかった靴をそのままにしてリビングへと入っていく。

 リビングにも誰もいない。バッグを捨てて、未来は色々な部屋を探しまわった。両親の寝室の前に立って、震える手でドアを開ける。


「お母さん!! いないのお母さ――」


「どうしたのよ未来。さっきからそんな大声出して」


「……お母さん!」


 未来の母は寝室にいたのだ。大慌ての未来の顔を見て、呆れた表情をしている未来の母。

 未来はすぐに母に抱きついた。母の温もりを直に感じ取って、未来の感情の高ぶりは落ち着きを取り戻す。

 変わらないことがここにはある。良かった……私がおかしくなったわけじゃないんだよね……?

 奏の異常な性格の変化と記憶の消失で、未来は自分に自信がなくなってきていた。今までの自分の記憶は作り物だったのではないか。自分は本当に奏と親しくしていたのだろうか。

 しかし、変わらない記憶と感情はここにある。未来が一番接している人物、彼女の母親が。


「ねえお母さん。何か手伝えることない?」


「どうしたの急に。何か欲しいものでもあるの?」


「ううん。それはもう貰えたから」


 その日の未来は、母親のお手伝いを積極的に行ったのだった。


 次の日になり、未来は校門前で真琴と明日香をずっと待ち続けていた。朝一番に校門に着き、未来はその場で立ち止まって壁に寄りかかっている。

 奏がおかしくなっているのなら、多分明日香と真琴も男の催眠に掛かっているのだろう。それをハッキリさせるために、確実に会えるだろう校門前で待ち伏せをしていたのだった。

 その時は意外と早く訪れた。未来の前方。遠く離れたところから一人歩いてきている。

 未来は目をこすってよく眺めると、その姿は真琴だということが分かった。しかし、真琴の格好はどう見てもセーラー服だ。それに、真琴は女の子に女体化して来ている。

 我慢できなくなった未来は自ら真琴の元へと駆け寄った。

 いきなり目の前で立ち止まられて、真琴はびっくりしている。未来はそんな様子に構うこと無く真琴に呼びかけた。


「真琴ちゃん! 覚えてる? 私、未来だよ」


「あ……あの。だ……誰ですか?」


 しかし、反応は奏の時と同じだった。真琴は未来と目を合わせないようにし、俯いている。その様子はどこか弱気だ。

 未来は諦めず声をかける。真琴だけは、彼だけは元の姿へと戻ってほしい。それが未来の願いだった。


「お願い真琴ちゃん! 男の子に戻ってよ……! 戻って……いつもみたいに私がふざけたら怒ってよ……!」


「……え……?」


「まことちゃ――」


「ちょっとアンタ誰!? 真琴に何してんのよ!」


 必死に真琴に呼びつづけた未来の肩を握った人物。それは明日香だった。彼女にはもう、幼さを感じさせない。彼女も記憶を失っているようで、未来を睨みつけている。

 明日香は無理矢理未来を真琴から引き離して、真琴の前に立った。

 真琴は怯えるように明日香の後ろに隠れて未来の様子をちょっとだけ覗いている。


「あ、明日香ちゃん……」


「何で私の名前知ってるわけ? 真琴の知り合い?」


 明日香は真琴に顔を向ける。真琴は必死に顔を横に振って否定をした。

 それが確実となったのか、明日香は未来に敵意しか向けていない。


「明日香ちゃんも……覚えてないんだね」


「何をしてたか知らないけど、真琴に変なことしたら許さないから。行こう、真琴」


 明日香が差し出した手をしっかりと握って、真琴は明日香と共に歩く。去り際に、真琴は一瞬だけ未来の方に振り返り、小さくお辞儀をした。


「……ハハ。本当の私のこと覚えてる友だち、いないや」


 未来は全身の力が抜けてしまい、その場にペタンと座り込んでしまった。

 諌見もきっとそうなのだろう。未来のことを覚えておらず、自分を本物の諌見だと勘違いして小学校に通っているはずだ。

 未来の瞳から涙がこぼれそうになる。それを見られたくないがために、未来は地面と顔を平行にして髪で顔の表情を隠した。

 これからどうすればいいの? 私一人じゃ、あの催眠術師倒せないじゃない。

 未来のすすり泣く音が聞こえる。声を必死に抑えても、出てしまうものは仕方ない。未来は嗚咽を混じらせながら必死に声を出さないようこらえていた。……が、それも数秒の間での出来事に過ぎない。


「……って、何しんみりしてんのよ。シリアスが嫌いだって言ったのは私じゃないの……」


 未来は涙を拭って、立ち上がる。


「こんなことで挫けてらんない。せっかく夢にまで見たTSFの能力が揃ってるのよ。あんな変態催眠男なんかに奪われてたまるもんですか。私の大切な友だちを……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ