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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第二章 後半
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意外なる決着

 中へと進んだ真琴が見た光景は、自分が通っている三階建ての高校と同程度の大きさを持った怪物と戦っている奏と明日香の姿だった。二人の体は傷だらけで、怪物によって相当な攻撃を受けたものと察することができる。真琴の姿を発見した明日香は、泥をつけている顔に笑顔を灯した。


「まこ兄! 来てくれたんだ!」


 明日香の元気な声に反応して怪物の動きに注意しながら後ろを振り向いた奏は、女の子になっている真琴の姿に変わらない涼しげな表情を送った。


「真琴くん……! 傷は大丈夫なの?」


「ああ。……ところで、あの怪物は何なんだよ」


「話すと長くなるけど、説得に成功した諌見ちゃんをアイツが操った」


 真琴は奏が指さしている先を見つめた。怪物の後ろで隠れているその存在。それは真琴がよく知っている人物だった。真琴の覚醒を手助けしてくれた存在。彼女は今、真琴の敵として対峙していた。

 女性は目をそらして真琴に会うのをバツが悪そうにしている。


「……やっぱり敵だったんだな、アンタ」


「バレてしまったものはしょうがないわね。まあ、最初に言ったでしょ?」


「おっさんの味方でもなく、俺の味方でもないってことか」


「そういうこと。でも今の状況は私も望んでないんだけどね」


 巨大な怪物は固まっている真琴たち三人を潰すためにハンマーをかざして叩きつけようとする。しかし、巨大が故に動きも鈍く、三人は簡単に回避することができた。三人を潰せないことに苛立ちを覚えた怪物は次に後ろに隠れていた女性を狙う。

 女性も走って怪物の攻撃を回避しようとする。今なら女性を襲っているしチャンスだ。奏はすぐに三人を集めて作戦会議を始めた。


「どうする? あんなに大きいんじゃどうやって戦えばいいか分からないぞ」


「……私が囮になって気を引く。だから、その時に真琴くんと明日香ちゃんで怪物を倒して」


「でもかな姉、今はいさみーの精神が入ってるんでしょ? 怪物を倒しても大丈夫なの?」


「殺さず生かせってことか。ショックを与えて正気を取り戻させる」


 真琴の言葉に頷く奏。真琴は何故操られていた奏が諌見に情を持っているのか分からなかったが、奏を信じることにした。

 怪物の攻撃を女性が回避する。その瞬間に作戦は開始された。奏は早速木刀を作って真琴に手渡し、自分は怪物に向かって突撃していった。怪物は向かってくる奏に照準を定め、襲い始める。

 右手の鋭い槍で奏を一突きしようとでもいうのか。怪物は右手の槍をかざして、怪物視点ではちょこまかと走る奏を狙う。槍の先端を奏に向ける。彼女の動きに合わせて、槍の先端も彼女の頭上に移動させる。


「……そう。その調子よ」


 自分が狙われていることで、作戦が進んでいるのを理解した奏は、怪物が攻撃しやすいように立ち止まった。

 案の定、怪物は奏に向けて槍を突き刺そうと右腕を奏に突き出した。

 ギリギリまで引きつけて、奏は槍を回避する。地面は、奏が回避したことで槍が突き刺さって野球ボールほどの小さな穴を開けた。目の前の地面を見て、奏は絶対に当たってはいけないと思った。

 狙いの外れた怪物に攻撃を仕掛けるべく、真琴と明日香はすでに動き出していた。


「明日香! お前の鞭を使わせてくれ!」


「うん!」


 怪物の頭を叩くために、真琴は明日香の鞭に触れた。鞭が鉄の鎖へと変化したことで、明日香は何をすればいいのかを察した。真琴は自分の腕に鎖を巻き付けて、激しい動きをしても外れないようにする。それを確認した明日香は力を振り絞って、ハンマー投げの要領で怪物に向かって真琴を投げつけた。


「まこ兄、いっけええええ!」


「おりゃあああああ!!」


 真琴の体は明日香のおかげで徐々に怪物の頭部へと接近していく。真琴の能力によって木刀が真剣になっているが、真琴は刃を裏返してみねうちで怪物を叩くことを決めている。


「目を……覚ましやがれ!!」


 真琴は両手で持った剣を振りかざして怪物の頭に叩きつけた。怪物は体制を崩して地面へと倒れていく。

 それと同時に、怪物から光が漏れだしてきた。その光は倒れている諌見の体へと流れだし、やがて集束していく。それは諌見の精神が元の体に戻ったことを意味していた。


「やった! いさみーの心がいさみーのところにいった!」


「成功した……のね」


 明日香と奏はそれぞれ諌見の救出成功に喜んでいる。真琴も喜ぼうとしたのだが、彼の状況がそうさせてはくれなかった。明日香によって空へ飛んだ所までは良かった。だが、彼も普通の人間である。地面に落ちるとどうなるか、想像に難くないだろう。


「お……おおおおおおお落ちるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」


「ま、まこ兄!!」


 真琴は自然落下で地面へと叩きつけられてしまった。地面に落ちたことで砂ぼこりが舞い上がり、辺り一面の空気が汚染される。女体化していたからだろう。真琴の体は落下ごときで死んではいなかった。顔に土をつけながら、咳き込んで穴の空いた地面から現れた。


「ゴホッゴホッ……! みんな無事か?」


「今の状況で、真琴くんが一番心配だよ」


 苦笑いしながら奏は元の体へと戻ることができた諌見を介抱する。彼女はまだ意識を取り戻していないが、呼吸だけはしっかりとしている。

 この一部始終を見ていた女性は拍手して彼らを祝福していた。心の底から喜んでいるのかは分からないが。


「あーあ、私の計画が全部パーになっちゃった」


「何でも思い通りにいくと思ったら大間違いよ、お母さん」


「奏……」


「でも教えて。お父さんもお母さんも、どうしてこんなことをするの? この能力は一体何? あの怪物だって、能力を戦わせるのだって……。分からないことが多すぎるよ」


「私たちが行動している理由か。それはね――」


 その瞬間、怪物が奏の後ろで起き上がったのを女性は目撃した。最後の力を振り絞って、怪物は奏に狙いを定めて槍を突き刺そうとした。

 怪物に背を向けている奏はそれに気づかない。


「奏! 逃げろ!!」


「かな姉! 後ろ!!」


 明日香と真琴がフォローに入ろうにも、時間的に間に合う位置にいなかったことも不幸だった。しかし黙って見ているわけにもいかず、二人は精一杯の声で奏に叫び、真琴に至っては諦めずに怪物へ向かっていった。


「え?」


 奏は明日香の声に反応して、後ろを振り向いた。怪物の槍が目の前に来ていた瞬間だった。

 奏は動けなかった。そして、死すら意識できないでいた。突然の出来事は、人の心を惑わせる。ぼんやりとジッと見ていた奏はらしくなかった。


「――ッ!」


 奏は何者かに押し出された。諌見を抱えながら横へと倒れた奏は押し出した人物を見た。

 その人物は奏の母。さっきまで敵対していた女性だった。

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