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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第一章
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『彼』の能力

 全てが終わった――。そう思い真琴が目を閉じると、この状況では呑気過ぎる声が真琴の耳に入ってきた。それは、未来が真琴を探している声だった。


「ヒヒヒ……そこら辺にいることは分かっているんだぞ真琴ちゃん! どこにいるのかな~」


「……助かったな」


 男性はそれだけを呟くと、声のした方向とは反対へ向い暗闇に溶けていった。

 間一髪で命が繋がれた真琴は、始めて未来に感謝した。

 その後に未来が来ると、傷つき倒れている真琴を見て、目を見開いて近寄ってきた。


「ちょ、ちょっと! 一体何があったのさ!」


「襲われた……同じ能力者にな」


「暴力的な人だったんだねえ……。真琴ちゃんの家の方が近いし、とりあえず向かおうよ! 私が背負っていこうか!?」


「ハハハ……意外に協力的だな」


「そりゃそうだよ! こんな貴重な能力を持っている真琴ちゃんを死なせはしないって!」


「そっちが目的か……」


 結局、未来に背負われて真琴は自分の家へと辿り着くことができた。最初、自分の体重が重いかもしれないと心配していた真琴だったが、女の子になっている真琴を背負うことは未来にとって簡単だったようだ。

 真琴の部屋へと向い、未来は真琴をベッドに座らせる。それから真琴に救急箱の場所を聞き、取りに行った。

 救急箱を持ってきた未来は真琴が怪我した場所に応急処置をしようと試みた。


「安心しなさいって。これでも私は女の子なんだからさ」


「今はお前に頼るしかない……信じてるさ」


 消毒が体に染みつつも、真琴は耐える。

 未来の応急処置は丁寧に終わり、真琴が怪我した場所には包帯が巻かれた。ひと通り処置も終わった未来は真琴が怪我した場所を見て、首をかしげた。その位置に特徴があったからだ。


「胴体に手首か……。何かさ、攻撃されたとこが剣道みたいだね」


「……やっぱりあのウワサは本物だったか」


「ほえ? ウワサって何?」


 何も知らない未来に、真琴は説明を始める。剣道部員に広まるウワサを。奏との約束を破ってしまうことになってしまった形だが、今の真琴には未来が必要だった。

 未来は珍しく真剣な表情を浮かべて真琴の話を聞き入っている。そして、真琴の話が終わってから、何かを思いついたように口を開いた。


「なるほど、マナーの悪い剣道部員を指導する幽霊部員がいると。それがこの前のイケメンだったと。そういう事なんだね」


「ああ」


 真琴の話をもう一度自分の口で確認した後、未来は口をへの字にして腕を組み始めた。


「なんで真琴ちゃんが襲われたんかね? 剣道部員でもないし、マナーが悪くもないんでしょ?」


「……俺が能力者だからだろうな」


「だったら、最初に会った時に倒すんじゃない?」


「……ううむ、確かに」


 真琴を襲った男性の行動に矛盾が生じていることに、真琴は違和感を覚えた。未来の言う通り、能力者だからという理由ならば最初に出会った時に倒そうとするはずだ。そして、今まではマナーの悪い剣道部員のみをターゲットにしていたのにここにきて真琴を襲う行動。学校ではただの女子高生として行動しているのにも関わらず、狙ったかのように現れて攻撃する。

 悩んでいる真琴に追い打ちをかけるように、未来は更なる疑問を彼にぶつけた。


「それにさ真琴ちゃん、どうして真琴ちゃんはあのイケメンが自分と同じ『能力』を持ってるって思ったの?」


「どうしてって……他に能力なんて考えられないだろ。あるとして、想像できないぞ」


 真琴の言葉を聞き、未来は仄暗い井戸の底から湧き上がるような深いうめき声を上げた。


「フッフフフ……真琴ちゃん。実は思いついた能力が一つあるんだなーこれが」


「何だよ未来。その、思いついた能力ってのは」


 ニヤニヤと怪しげな笑みをする未来に、頬を膨らませて怒る真琴。未来はそんな真琴を可愛いと思いながらじらす。


「さあー、何でしょう?」


 対価が必要なのか? しかし、真琴は未来が望んでいるものが分からない。困惑しながらも、とりあえず未来に条件を差し出すことにした。今の状況、少しでも手がかりがほしい真琴の選択だった。


「わ……分かったよ。一回だけ言うこと聞いてやる。何でもな」


「ん? 今何でもって言ったね?」


「ああ……」


 不本意ながらも、未来が思いついた能力の詳細が知りたいがため、真琴は『何でも』のカードを切る。

 内心で勝ったと思った未来は立ち上がり、ベッドに座っている真琴を見下しながら、得意気に語り始めた。


「じゃあ教えてあげよう。真琴ちゃんが思いつかなかった能力……それは『変身』だ!」


「俺と何が違うんだよっ!」


 ギャグだったのかと酷く落胆する真琴に対して、未来は真剣な表情で真琴を諭す。そのキツイ目つきに、真琴は思わず息を呑んだ。


「アホッ! 全ッ然ちゃうわ! いいこと? 真琴ちゃんのは『転換』。転換は男の子が女の子に女体化する。つまり、真琴ちゃんの雰囲気が残ってる。だけど、イケメンのは『変身』。それだったら、元が女の子でも、まったく別人の男の子になっても不思議じゃない! 今日一日それだけ探したのなら、間違いじゃない! ドヤァ!」


 一理ある。真琴は未来の発言にそう思ってしまった。確かに、真琴がいくら探しても、未来が描いた女の子は発見できなかった。もし、別人の存在に変化していたのなら、辻褄はあう。


「んでんでんでー、能力者同士は惹かれ合うとか何とか言ってたじゃん。だったら、最近会った人がその能力者なんじゃないの?」


 真琴は未来の方をしれっと見つめる。当然、未来は顔を真っ赤にして否定した。


「バカッ! 私がイケメンのわけないじゃん! 始めてイケメン見た時、私もいたってのに!」


「冗談だよ。悪い悪い」


 改めて、真琴は最近出会った人たちを考える。未来のクラスメートたち……違う。剣道部員……違う。真琴が考えるその人物、それは奏だった。

 だが、真琴は自分自身を否定する。あの礼を重んじ女の子に優しいあの娘が、先ほど自分に攻撃した男性とは思いたくなかったのだ。突然落ち込みを見せる真琴に対し、未来は状況を察した。


「ほう、思い当たる人がいるんだ」


「でもあの娘は違う……と思いたい」


「ほへー、私もぜひ見てみたいもんですな。真琴ちゃんが肩入れする女の子ってのを」

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