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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第一章
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おとり捜査……?

 学校祭の手伝いをした帰り道、真琴は複雑な気持ちを抱えていた。結局、未来が描いた人物は聞いた全員が知らないと言い、代わりにその男性版は見たことがあると言う。しかも、それがマナーの悪い剣道部員を始末しているというウワサ付きである。自分と同じ女体化もとい男性化ならばどこかに面影が残っているはずで、それを手がかりに捜索が進むはずだった。しかし、状況は真琴が予想した道とは別を行っている。


「今、ここで女の子になってみるか……?」


 この一人きりの状況で、夕焼けも消えかかった薄暗い時間帯ならば、もしかすると遭遇できるかもしれない。このままでは調査が進まないと思った真琴は一種の賭けに出た。周りに誰もいないことを確認して変身する真琴。着ている服も、肉体も女の子になった真琴は改めてこの体の貧弱さに不安を抱いた。もし、能力者以外の人間に会ってしまって、悪い状況に陥ってしまったら……。真琴は少しだけ体を震わせて、それから平然を装い歩き出した。

 なるべく、高校が見える位置ではゆっくり目に歩き、真琴は能力者の出現を待つ。そして、真琴の計画通り、能力者は現れた。

 真琴と同じ高校の男性用の制服を身にまとい、手には真剣が握られている。短髪で整った顔立ちは、確かにイケメンだった。

 どうでるつもりだ……? 真琴は男性の動きを警戒しつつ、距離をとる。


「お前は一体何者なんだ……」


 しかし、男性は真琴の質問には答えない。それどころか、真琴に対して剣を構え始めた。

 相手のやる気を確認した真琴は拳銃を取り出して、自分も敵に戦う力を見せつける。内心、真琴は銃を持っている自分の方が優っているのではないかと思っていた。その慢心は真琴の足元をすくうことになる。

 男性は走りだし、琴との距離を詰めていく。怪物は撃てるが、人間を撃つことにためらいを感じる真琴をあざ笑うかのように、男性は真琴を恐れずに突き進んでくる。


「それ以上来たら撃つぞ! ……本当に撃つぞ!」


 真琴は覚悟を決め、引き金に触れた指に全神経を集中させる。そして、引き金を引いた。弾丸は真っ直ぐ男性へと向かっていく。しかし、男性は剣で弾丸を弾いたのだ。金属音が鳴り響き、剣に小さな火花が散る。

 この一撃で致命傷を負わせる予定だった真琴は、弾丸が防がれたことに驚き、思わずパニックになった。次の弾丸を放とうとしたがすでに遅かった。男性は真琴のすぐ側に来たのだ。


「――っ!」


 男性は目にも留まらぬ早さで真琴の胴体に向かって剣を振るった。一瞬、呼吸ができなくなる感覚の後、真琴の体は宙に浮いて吹き飛んでいった。横に吹き飛ばされた真琴は壁に激突して全身を強く打った。

 どこの箇所も痛みがあったが、一番痛い箇所は男性に攻撃された胴体だった。へそ辺りの箇所を擦ってみると、激痛が真琴を襲う。しかし、流れ出る液体の感覚は感じられなかった。さっきのは峰打ち……? だが、それで喜んでいられる状況でないのは真琴が一番良く知っている。峰打ちでも、胴体の激痛は本物なのだから。

 男性はゆっくりと真琴に近づいてくる。先ほどの吹き飛ばしにより拳銃を落としてしまった真琴は次の武器を探す。

 風に乗ってきたのだろうか。細い木の枝が近くの道路に投げ出されていた。真琴が周りを見渡しても木などない。本当はもっと太い枝を求めたが、今は贅沢を言っている場合ではない。真琴は迷わず細い木の枝を手に取った。真琴自身が焦りを感じていたのか、木の枝は手にした瞬間から光り輝き楕円状の細長い鉄の棒へと変化した。

 片手で腹部を擦り、片手で鉄の棒を構える真琴。ダメージを与えてもまだ立ち上がる真琴に対して、男性は彼を嘲笑した。

 確かに、男性は戦い慣れをしている。つい最近能力を手に入れ、しかもそれの使い方さえもままならない真琴では勝機はつかめないかもしれない。しかし、真琴はそれでも諦めないだろう。この理不尽な能力を手放すために……。


「ゲホッゲホッ! ……ま、負けるかよ」


 こみ上げてくる咳を我慢せずに出しながら、真琴は立ち向かっていく。

 真琴はこの状況で速攻で作戦を考えた。泥臭く、若干卑怯な作戦だったが背に腹は代えられない。真琴は思いついた作戦を実行させた。

 真琴はしっちゃかめっちゃかに鉄の棒を振るう。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるということわざを信じ、狙いも定めず適当に振り回した。残念ながら、その攻撃は男性には通用しない。男性は鉄の棒の流れを見て回避し、棒を振るう真琴の手首に狙いを定め、峰打ちした。

 手首が折れそうになる感覚と、サーッと血の気が引いていく感覚。鉄の棒を離さずにはいられない痛みが、真琴を襲った。だが、そのリスクを背負うことで真琴の作戦は開始される。

 わざと倒れこみ、男性の油断を誘う。その隙に、真琴はスマホを変化させた辞書を叩き込もうとしたのだった。真琴は数秒間倒れて、それからむくっと起きて辞書を投げ込んだ。


「なっ……!!」


 その声を出したのは真琴だった。男性は油断することなく辞書を剣で弾いたのだ。辞書はスマホに戻り、地面へと落ちる。男性は追い打ちを掛けるために、液晶の割れたスマホに向かって剣を突き刺した。真琴のスマホは完全に液晶が破壊されて内部もめちゃくちゃになってしまい、使いものにならない代物となってしまった。

 作戦が失敗し、真琴は苦悶の表情を浮かべ、座りながら後ろへと下がる。男性はそんな彼にとどめを刺すべく、剣先を真琴の喉に近づけた。

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