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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第一章
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新たなる能力者

 ある日の放課後、真琴は未来と帰り道を歩いていた。未来を知っているクラスメートから見れば、この光景は高校一清楚で大人しい少女とのデートということになる。もちろん、周囲は羨みの視線で二人を眺めていた。しかし、真実は真琴のみが知っている。未来は清楚などではなく変態だということを。

 本日も未来による真琴の着せ替えショーがあるため、真琴の帰り道に未来がついて行っているという構図となる。最初は拒絶した真琴だったが、家まで知られている未来には何をしても無駄だと悟り、諦めている。

 まだ高校からさほど離れていないため、未来の表情は落ち着きを見せ、大人しい笑顔をしていた。


「ったく……ずっとその猫かぶりが続けばいいのにな」


「ん? どうしたのかな、真琴君」


「いや、何でもないよ……ハァ」


「真琴君っておもしろーい」


 面白いのはお前の猫かぶりだよ。思わず心でツッコミを入れた真琴だった。

 高校から大分離れてから、事件が起こった。

 二人が歩いていると、突然顔を撫でる風が変わったような気が真琴を襲った。周囲を見渡すと、真琴と未来以外の人間がいない。店のシャッターは全て閉まっているが、まだ閉店するような時間帯ではない。

 真琴が異変に気づいた瞬間、白き人型が奥の方で複数体待ち構えているのを発見した。真琴はすぐに未来に報告し、未来の歩みを止めさせる。


「待て未来。奥に何かいる」


「え? あ、本当だ。この前のSFXだ」


「だから本物だって」


「知ってるよ。言葉の綾ってものよ」


「ってことは俺たちは閉じ込められたか」


 無駄だと思ったが、真琴は確認のため白き人型から逃げ出し、出口を探す。しかし、ある一定の距離でまたしても透明な壁に遮られてしまった。だが、真琴は慌てない。白き人型に対抗する手段があるからだ。

 真琴は心で念じて男の子から女の子へと変身する。そして、あれ以来ずっと持ち歩いている拳銃を手にとって白き人型へ照準を合わせた。

 本来ならば、真琴が銃を放つことで勝負が決するはずだった。しかし、今回は違っていた。

 真琴が引き金を引く前に、イレギュラーが起こったのだ。

 白き人型の前に、突然謎の男性が現れた。素早い動きで白き人型の正面に立ちはだかった男性は剣を持っていた。刃・つば・柄全てがオーソドックスな剣。真琴はそれが何の種類かは分からなかったが、真剣だということは刃が反射させている光で何となく理解した。


「一体何者だアイツ……」


 真琴は密かに、ポケットに手を忍ばせてスマホを取り出し、カメラを起動させた。この空間で戦える人間は、真琴とボロボロのコートを着た男性が求めている能力者しかいないと判断したからだった。それなら、資料はあった方がいい。そう判断して、真琴はピントを男性に合わせた。

 男性は剣を構えると、白き人型を一太刀でなぎ払い、切断していく。複数体登場していた白き人型は、謎の男性により全て消え去った。

 男性が真琴たちの方を見た瞬間、真琴はシャッターを切った。無言の空間で鳴るシャッター音。男性はそれに気にも留めずに真琴たちから離れていった。白き人型がいなくなったことで、周囲も活気を取り戻す。まるで、真琴と未来のみが異空間にいたかのように、街の人通りは復活し、いつの間にか店のシャッターも開いていた。

 未来は突然現れ、突然去っていった男性の顔を見て興奮していた。


「誰あのイケメン……誰あのイケメン! あれも真琴ちゃんと同じTSFを持ってる人間なのかな!?」


「知るか! ていうか、お前異性には興味ないんじゃないのかよ」


「TSFしてれば問題ないのよ!」


「……まったく」


 気持ちを高ぶらせている未来を一蹴し、真琴は先ほど撮影した写真の確認をする。もし、ピントがずれていたら全てが無駄になる。そう思って恐る恐る見た真琴だったが、彼の心配は杞憂に終わった。

 ピントが合った写真は、先ほどの男性の姿を正確に写し撮っていた。よく見ると、真琴と未来が通っている高校の制服だった。

『能力者同士は惹かれ合う』というボロボロのコートを着た男性の言葉が思い出される。真琴の近くで、すでに能力者は存在し、行動を起こしていたのだ。

 これを好機と受け取った真琴は無意識にほくそ笑んでしまった。真琴の微笑みに気づいた未来は彼のスマホを眺めて、先ほどの男性がいることで更にテンションを上げる。


「おお! イケメンが写ってるじゃないか! あとでラインで送って」


「ふざけるな! これは見せ物じゃねーんだぞ!」


「えー、ケチー」


 どうしても写真を欲する未来に、真琴は一つの案を思いついた。それを言えば、今日はもう未来と行動を共にする必要はない。


「じゃあ、今日の着せ替えショーはなし。これでいいなら渡してやる」


「ぐ! うぐぐ……わ、分かったわ。その条件を飲もう」


「今転送してやるよ」


 若干の面倒くささを感じつつ、この動作で未来と離れられることを糧に真琴は未来のスマホに先ほどの画像を送った。画像が来たことを確認した未来は思わず舞い踊る。それを真琴は冷ややかな視線で眺めていた。


「それじゃあ、また明日な」


「オーケーオーケー。私は約束は守るよ」


 スマホを見ながらひとりでに歩き出す未来。それを危ないと思いつつも、真琴は注意せずに一人で帰ることにした。

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