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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第四章
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新たなる能力と平和主義の真琴くん

 八戸都の視線が未来に刺さる。どうしようにも言い切れぬ不安が未来を襲う。

 未来の様子を見て、奏は大体の事情を理解した。


「なるほど。未来は自分のクラスの転校生に嫌な予感が走ったってこと」


 奏は剣を召喚させて未来と凛音を後ろに下がらせた。凛音は奏がいきなり無から剣を生み出したことに驚いて目を丸くして見ている。

 八戸都の方は攻撃をするわけではなく、ただ冷淡な眼差しを送っている。


「物騒な人なんですね。あなた方は」


「こんな行動させたくないなら、その殺意の眼差しを止めたらどうなの?」


「……挑発、ですか?」


「そう思ってもらっても構わないわ」


 八戸都に憎まれ口を叩き、彼女から攻撃を促そうとする奏。奏は八戸都の能力を確かめてみたいという意志もあった。まずは相手の能力を見極める。それが奏の戦い方だ。

 未来は少しだけ奏に苦笑いをしていた。


「奏ちゃん、そんなに相手を怒らせるようなことしても大丈夫なの……?」


「大丈夫。多分……」


「あ、あの……何が起きてるです?」


 向かってくる八戸都に対してオロオロしている凛音を見て、未来は先ほどまでの疑いを晴らした。能力を持っていて、ここまで驚くことはあり得ないだろう。だったら、彼女は本当にただの人間で、奏のお友達なのかも……。

 両者が敵意を持っているが、その敵意を相手に向けないという一触即発の事態に、一人の男が立ち上がった。

 その男は奏と八戸都の間に立って、両手を二人に向けた。


「待ちなさい二人。もう止めるんだ」


「ま、真琴くん?」


 その男は真琴だった。彼は奏にウインクをしながら、いつもよりも一オクターブ高い声を出した。嫌な予感しかしないとは、正にこの事だった。


「奏。争いはいけない。何故なら、争いは新たなる争いを生む。争えば争うだけ、争いは増え続けるんだ」


「争い争いってうるさいな」


「私は正直言って、理解できなかったよ」


 奏と未来がため息をついてがっくりと頭をうなだれさせる。明日香は理解しているのかいないのか、何故か感心していた。


「おお。さすがはまこ兄!」


「だろ?」


 神様お願いです。私たちの真琴くんを返して下さい。

 奏は本当に心の底からそう思った。


「笑えますね。そこの男はただの阿呆なのでしょうか」


「だ……黙れ! 真琴くんはいつもならもっとカッコいいのよっ!」


 くくくっと息を吐き捨てるように失笑した八戸都に対して奏が反論した。今にも襲い掛かりそうな奏を真琴が押さえつける。涼しい顔が今の奏にとってはムカついた。殴りたくもなった。


「ケンカはいけない。話しあおう。そうすれば全ては解決する」


「この状況でそんなこと言ってられると思ってるの!? 真琴くん! いい加減に目を覚ましてよ!」


「……? 俺はいつも通りの俺だよ。何を勘違いしているんだ?」


「――っ! もういいよ真琴くんのバカっ!!」


「ゴフッ!」


 意を決して、奏は真琴に向かって殴りつけた。真琴は抵抗せずに彼女の拳を受け入れる。奏の拳で頬が歪んだ真琴はそのまま地面へと倒れていった。


「ま、まこ兄!!」


 明日香がすかさず倒れた真琴に駆け寄ってくる。真琴は気を失っているようで、明日香の呼びかけに答えない。


「ま……まあ、自業自得ってやつなのかな?」


 未来はその一部始終を冷ややかな視線で見ていたが、一つの罪悪感が生まれる。もし、これが本当に私を生き返らせた代償なら、私はとんでもないことを……。


「あらあら? 私抜きで内輪もめですか」


「……待たせたわね、八戸都。勝負と行こうじゃない」


「いいでしょう。奏さん。勝負、開始……!」


 八戸都は両手を伸ばして、その手のひらを奏と凛音に向けた。

 とりあえず、自分に能力がいくように、奏は八戸都に向かって走りだした。


「さあ……いくです!!」


 奏は無意識にそう言葉にした。

 未来は自分が聞き間違えたのかと思い、凛音を見た。彼女は何故自分が注目されているのか疑問に思っているようだった。それからもう一度奏を見る。


「え? い、今の奏ちゃんだよね?」


「どうしたです未来。奏はいつも通り……ってなんですこの口調!?」


「え? 私と奏の口調がヘンになってる。どうして……?」


 童顔で小学生にしか見えない身長を持つ凛音の口から大人びた言葉が飛び出してくる。それはいつもの奏のような口調だった。


「ちょっとした余興よ。奏とそこにいるおチビさんの口調を入れ替えてあげました」


「ちょっと! 私はおチビさんじゃないわよ!」


「ど、どういうことみら姉?」


 明日香は八戸都の能力にシンパシーを感じているのか、表情を難しくさせて未来に問う。未来は意外そうに口を開いたのだった。


「てっきり明日香ちゃんに組み込まれているものだと思ってた。……これは、部分入れ替わりの能力者だわ」


「部分入れ替わり? それって僕の力と同じじゃないの?」


「明日香ちゃんのは事象と事象を入れ替えるもの。例えば心と心とか大きなものね。だけど、八戸都のは違うわ。彼女は小さな物でも入れ替えることができる。……厄介かもしれない。気をつけて奏ちゃん!」


「今更言っても遅いです。でも……分かったです!」

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