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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第四章
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バトンタッチ!?

 次の日の朝、奏はりんごのように顔を赤らめて高校へと歩いていた。その理由は隣に真琴がいるからだった。彼女と足幅を合わせて同時に歩いている真琴は、未だに涼し気な顔を奏に向けている。彼だけに、火照った体を冷まさせるような心地良い風が吹きかけているようだ。真琴の様子は誰が見ても明らかにおかしかった。


「……うう。まさか、今の真琴くんにあんなことされるなんて」


 昨日気絶して朝目覚めた時、奏はベッドに寝ていた。眠い目を擦って何故自分が家に着いているのか考えようとした時、真琴が椅子に座ってずっと見ていた。

 奏は一瞬だけ心臓が止まり、そしてベッドから飛び上がった。真琴に聞けば昨日の夜から居るというではないか。

 さすがの奏も、真琴の行動に呆れた。その後も奏は一人で登校しようとするが、真琴が勝手についてくる。


「奏、手を繋ごう」


「今の真琴くんとは繋ぎたくないっ! 絶対に!」


「そうか。奏が嫌なら、俺は我慢するよ」


「これ、重症だよね……」


 やはり、未来に相談した方がいいだろう。彼女が来るまで奏は頑張ることにした。後は未来に任せよう。いつもよりも遅く登校し、未来に出会えるように調整した奏の努力は実を結んだ。

 未来は奏と真琴の姿を発見して大急ぎで走ってきた。挨拶代わりに、奏の背中を強く叩く。しかし、奏の反応が何もないことで、未来は首をひねってしまった。


「ん? どーしたのさ奏ちゃん。元気ないよ?」


「未来……アンタも真琴くんを見ればそうなるわよ」


「え? 真琴ちゃんを?」


 焦燥しきっている奏を見てから、彼女の言葉に従って真琴を見た未来。真琴は未来にもさわやかな笑顔を向けて、女の子を口説くような言葉を発した。


「やあ、未来。今日も可愛いね」


「……頭おかしくなったの?」


「分からない。昨日の夜からずっとこんなんなのよ」


「ま、まさか――」


「未来の考えてることは大体分かってる。だけど、この真琴くんの顔を見て。どうみても操られているようには見えないから」


 未来は真琴の顔を今一度見てみた。敵など最初からいなかったような清涼感抜群の表情。男性アイドルのような顔で、今までで怒ったことなど一度もないといったような表情だ。


「俺の顔を見てどうしたんだい、未来?」


「真琴ちゃん、何か変なもの食べた? 私、こんな真琴ちゃんは見たくないんだけど……」


「そうか……。すまない未来。お前はこの姿は苦手だったんだな」


「てか未来の言うことは聞くの!?」


 負けた……。この瞬間、勝負が決まったと思った奏は強く心に悲しみの感情が生まれた。がっくりと膝をついて、地面に土下座しているような体勢になった奏を、未来が苦笑いでフォローしようとする。


「あの、奏ちゃん。今の真琴ちゃんだとちょっと私も嫌なんだけど」


「でも、私は負けたのよ。……ふーんだ、どうせ私なんて、剣道部に入ってるのにマンガやアニメの登場人物みたいに日本一にもなってないし、一回戦で負けるような実力だし、未来ほどTSFの知識もないバカだし、戦いに至っては何の役にも立てない雑魚だし……ブツブツ……」


「か……奏ちゃーん……」


 落ち込んでいる奏の背中を擦って彼女をなだめている未来に向かって、真琴が呟いた。


「さあ未来、この姿ならいいだろう? 思い切って飛び込んできてもいいんだぞ」


「ブッ!!」


 真琴はいつの間にか女の子の姿になっていた。今の真琴は、涼し気な表情というよりは大人しさを秘めていながらも強い意志が感じられる不思議な魅力を持つ女の子へと変化していた。

 未来は思わず鼻に手を当てて血の流出を止めようとする。だが、無理だった。

 ……あ、そういうことだったんだ。なーんだ、てっきり真琴くんは未来のことが大好きで、態度を変えようとしてたわけじゃないんだね。

 奏は先ほど言った真琴の言葉をようやく理解し、すぐに立ち直って未来にティッシュを渡す役目に就いた。


「た、立ち直り早いねー奏ちゃん」


「まあ、色んなことがあったからね」


「そ、そう……」


「未来……お前の鼻血を出している姿もとっても可愛いよ」


「うぐぅ……背筋が凍りつく……」


 いつもならこんなことを言うはずがない真琴が放つ言葉に、未来でさえも寒気を覚えるほどだった。

 ……よし、今は未来に集中している。今がチャンスだ!

 そう思った奏は未来の肩を叩いて笑顔になった。その意味が分からない未来は、きょとんとして奏の言葉を待っていた。


「後は任せたっ、親友!!」


「え……?」


「私は部活に行ってくるから、真琴くんは宜しくね、未来!」


「ええええええええ!? ちょっと、抜け駆けする気なの!?」


「私はあの真琴くんと一晩過ごしたのよ!? もうたくさんなのよ!」


「一晩って……ナニをしやがったってんだ奏ちゃん!!」


「な、何もしてないってば!」


「あー! その吃る感じが怪しいんですけどーっ!?」


「変に疑わないでよ! とにかく、次は未来にパス!」


 そう言うと、奏は一目散に走って逃げてしまった。未来も追いかけようとしたのだが、真琴が抱きついてしまったため逃げられなくなってしまった。

 ……で、この後どうすればいいのよ。

 途方に暮れながら、未来は様子がおかしい真琴と一緒に登校することになってしまったのだった。

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