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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第三章
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第一回、奏ちゃんの記憶を取り戻す会議!

「第一回、奏ちゃんの記憶を取り戻す会議ー!」


 未来は高々と声を上げて会議の開幕を宣言した。

 場所は変わらず保健室に三人はいる。手当も終わって痛みも引いてきた未来はベッドに腰掛けている。諌見は捻挫のため椅子に座り、代わりに明日香が壁に寄りかかる形で立っていた。

 未来は手を上げて、さらに言葉を紡ぐ。


「さーて、どうやって奏ちゃんの記憶を呼び戻す?」


「うーん……やっぱりせっと――」


 明日香の普通過ぎる意見に対して、未来はストップをかけた。


「はい却下ー! もっと奏ちゃんに衝撃が走るようなのじゃないとダメ」


「でも、他に何かあるの? 未来先輩」


「フフフ……こんなのはどう?」


 未来は怪しい笑みを浮かべて腹の底からうめき声を出した。

 精神が幼い明日香はそれだけで怯え始めたが、諌見は若干呆れていた。


「……奏ちゃんは今、男の子が大嫌いになってる。つまり、男だらけの環境に置いたら発狂する! そのショックで記憶が戻る! 作戦名『ドキッ!? 男だらけのBL大会!!』」


「せっかくの意見だけど未来先輩、その男の子はどうやって集めるの?」


「そっか、いないね。ポロリもあるんだけどなぁ……」


「ダメだよ未来先輩!! それだけはやっちゃダメ!!」


 自分の素晴らしい意見が一瞬で袋小路に追い込まれた未来は、ため息をついてガクッとうなだれてしまった。

 未来と諌見の一連の流れが良く分かっていない明日香は、二人のやりとりをきょとんとした目で眺めながら自分も考えていた。

 どうにかして、奏の記憶が戻るような何かがないだろうか。

 その時、明日香はあることに気がついた。


「ねえみら姉。かな姉、もしかしたら記憶が戻るかも!」


「お、自信満々だね。さっきの説得とかいうつまんない流れはなしよ?」


「んとね、僕と入れ替わった猫……かな姉が飼ってるよね?」


「ほうほう」


「また僕と猫が入れ替わって、僕になった猫がかな姉に話しかけるの!」


 未来はすっくと立ち上がって明日香の手をギュッと握った。力強くなく、むしろ優しげに握るその手に、明日香は彼女の暖かさを感じた。


「最高だよ明日香ちゃん。その作戦で行こう!」


 未来は作戦を早速実行することを決めた。それからの未来の行動は早い。明日香に諌見をおぶさるよう命じて、未来たちは学校から出て行った。

 未来たちが向かった先は奏の家だった。意気揚々と、玄関前で激しく息巻いている未来に諌見がツッコむ。


「未来先輩、奏先輩の家、鍵がかかってるけど」


「安心なさい。私は合鍵を用意する天才なのだよ」


 そう言って、未来は鍵を四つ手のひらにかざした。形状がそれぞれ違うことから、一つの合鍵というわけではない。諌見はその鍵たちを怪訝に見つめた。


「これが真琴ちゃん、こっちは奏ちゃん、これは明日香ちゃんので、んでコイツが諌見ちゃんの家の鍵」


「犯罪じゃないか! どうして合鍵を持ってるんだよ!!」


 未来は鍵を持った手を力強く握りしめ、手を震えさせた。若干の痛みがあったのは、未来だけしか知らない。しかし、それをおくびにも出さず、未来は切ない表情で諌見に訴えかけた。


「……ごめん、諌見ちゃん。私はTSF好きとして、君たち四人の安全を監視しなければならなかったのよ……! それにはこの鍵が……必要だったの。犯罪だってことは分かる。だけど……それ以上に大切なモノが……君たちだったから」


「未来先輩……。って、そんな顔しても騙されないよ。シリアスっぽい声を出してもダメなものはダメでしょうに」


「っち! バレたか……まあ今回は多めに見てよ。これで奏ちゃんの家に入れるんだからさ」


 未来は勝手に奏の合鍵を使い、扉の封を解く。正しく入った合鍵によって、扉は開かれて未来たちを招き入れた。

 未来は笑顔で中へと入り、明日香と諌見は若干バツが悪そうな表情を浮かべておじゃまをした。

 一度、奏と入れ替わって生活をしていた未来はどこに何があるのかを大体把握していた。彼女が先頭になって、明日香と諌見を奏の部屋へと連れて行く。

 ある部屋の手前で未来が止まったことで、二人はここが奏の部屋だということを認識する。


「フフフ、女の子の部屋だよ。気になるでしょう?」


「そーかな? 僕はそうでもないけど……」


 明日香は至って普通に未来に返している。それは小学生だからだろうか。すでに女子高生の部屋で毎日を暮らしているからだろうか。

 しかし、一人だけうろたえている人がいた。諌見は自分自身の感情と葛藤をしていた。明日香は少年の精神だが、諌見は違う。青年には、女の子の部屋というのはどうにも緊張してしまうものだろう。

 本来ならば逃げたいところの諌見だったが、彼女は足を挫いている。それで明日香に背負ってもらっている。つまり、逃げられない。


「それじゃ、入るとしましょうか」


「……ごめん。奏先輩!」


 未来と明日香が部屋の中へと入っていく。諌見は出来るだけ何も見ないように目を閉じていた。

 未来はすぐに目的のものを発見する。彼女はベッドで寝ていた猫を持ち上げ、胸の中へとうずめた。


「よし。猫、捕獲完了!」


 猫は未来たちのことを覚えていたのか、抵抗せずに未来の胸の中でぐっすりと眠りについている。


「ねえねえみら姉。これで目的は果たせたの?」


「うん、そうだね。長居してても仕方ないし、行こっか」


「そう言えば明日香先輩。真琴先輩って今はどこにいるんですか?」


「まこ兄は……僕の記憶だと先に帰ったみたい。僕は元々部活をやるために残ってたわけで。まあ、サボりってことになっちゃったけど」


「そうか……」


「ん? 何かあるの諌見ちゃん」


「……記憶を操作されてても、奏先輩は真琴先輩のことを能力者だと知っていた。今は真琴先輩は一人。襲われる心配ない?」


「……ヤバイかも。明日香ちゃん! 真琴ちゃんといつも帰ってるルートを教えてくれない!?」


「お安いご用だよ。みんなで行こう!!」

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