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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第三章
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奏VS明日香

 更なる人物の登場で、明日香はまたしてもため息をついた。いい加減に自分を開放してほしい。そんな思いが明日香の感情を高ぶらせてしまう。

 一方で奏の方は、明日香の姿を見て激しく息巻いている。まるで、獲物を見つけたみたいに、奏は明日香に見えない牙を突き立てる。明日香はすでに、奏という獣の口の中に侵入していることと同義だった。


「そこの利発そうなアンタも後ろの変人どもと同じなの? 勘弁してよ……」


「立田明日香。あなたの名前よね?」


「ハァ……そうだけど?」


 面倒臭そうに答える明日香。早くこんなイベントは消化して真琴に会いに行こう。さっさと終わって真琴と遊ぼう。奏を見ずにそんなことを考えていた明日香が気づくわけがなかった。奏が自分を襲おうとしていることに。

 奏は能力を開放した。その瞬間、奏の手に真剣が握られる。剣道の時のような鋭い目で明日香の心臓を見極める。一瞬で、奏は地面から足を離した。


「――え?」


 風が切った音をしてから明日香はようやく興味を奏に移した。しかし、遅かった。奏はすでに明日香の目前で笑っていたのだ。奏は腕を引いて、突きの態勢を整えていた。


「お願い……死んでちょうだい!」


「――させないって!」


 明日香が突然後ろに引きずられた。引きずったのは諌見だった。強引に掴まれた明日香は地面に倒れてしまった。地面を滑って雑草まみれになった明日香は当然の如く諌見を睨みつけたが、それはすぐに目を丸くしたことで終わった。

 諌見が奏の剣に襲われていたのだ。だが、諌見は奏の持っている剣に向かって念を送る。すると、諌見の眼前で剣先は止まった。


「ん? どうしてかな? 剣がこれ以上進まない……!?」


「真琴先輩か私じゃなきゃ危なかった……」


 分が悪いと思ったのか、奏は一度後ろへと下がった。


「あなたも能力者なんだね。ここで二人を殺せば、私は一番になれる……!」


「奏先輩。落ち着いてよ。そんなの、奏先輩らしくない」


「あなたはすでに私のことを知っているらしいわね。どこから情報を仕入れてきたの? 和島さんから?」


「和島……さん?」


 あんな男にさん付けするとは、ますますらしくない。諌見は目だけを動かして周りの景色を観察する。だが、和島の姿は見られない。

 奏はプクーっと頬を膨らませてふてくされていた。


「和島さんったら酷いんだー。あの子が小学生だからって私の情報を渡すなんて……。でも、私もみんなの情報を貰ったからおあいこかな?」


「何を言ってるの……?」


「能力者は私と諌見……明日香と真琴。全員で四人いるらしいじゃない。そして、最後の一人になったら、最強の力を貰えるんでしょう?」


「嘘でしょう……?」


「嘘じゃないわ。和島さんが言ったんだもん。私は負けられない。最強の力を手に入れて、あのクソ親どもとお兄ちゃんたちを見返してやるのよ」


 あの奏先輩が親に対してそんなことを言うなんて。もしかして、前の奏先輩なら言った言葉なのかな。

 今までの奏とは違う性格に、諌見は気を引き締めた。恐らく、戦い方も違うはず。

 話を聞いていた明日香は、何故か二人が争っていることに対して悲しみを抱いていた。心なしか、目がウルウルしてくる。おかしな感情に明日香は戸惑っている。いつの間にか、明日香の手には鞭が握られていた。赤い色をしている鞭を明日香は見覚えがあった。始めての鞭なのに、記憶は既視感を訴えている。

 もしかして、これが利発そうな女の子の言う能力……?

 鞭から諌見と奏の方に視線を向ければ、二人は争っている。小学生という小さな体で体力もないだろうに、諌見は必死に奏の動きについてきている。あんな小さな子どもを相手にしているなんて……。そんなの、ダメに決まってる。


「ほらほら! さっさと私に殺されてよ諌見!!」


「っ! これが奏先輩の本気なの……!?」


 剣道の試合の如く、奏は動きは俊敏で隙が見つけられない。諌見も一生懸命、奏の剣技を回避しているが、いずれ体力が尽きるのは明白だった。


「あっ――!」


 地面に足を着けた諌見は足首に激痛を感じた。着地がマズかったのだろう。足を捻ってしまったのだ。奏は目を光らせて諌見の隙を見つける。すかさず、奏の剣が諌見の心臓を狙う。

 不思議と諌見の体は動かなかった。襲い掛かってくる剣に恐怖するしかない。万事休すか……。そう思った諌見は目を閉じたが、体に何かが巻き付く感触を感じた。その感触と共に、諌見の体は宙に舞った。


「邪魔をする気? 明日香」


「当然でしょう? 小学生に何やってんのよアンタは。最低な行為だってこと、分からないの?」


 両者の殺気がバチバチと火花を散らす。


「それと、アンタに聞きたいことがある」


「ほう? 冥土の土産ってことで教えてあげてもいいかな?」


「さっき能力者の中に、真琴の名前があったけどそれは本当なの?」


「確かな情報よ。なんてったって和島さんからの提供だからね」


「真琴も私と同じ力を……。あの子は私がいなきゃ、何もできないのに」


「ふーん、じゃあ今ここであなたを殺せば私は勝利者確定ね」


「……させると思ってるの? 真琴は私が守ってみせる!!」

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