ベーシックインカムを考える
ベーシックインカム(basic income)以下はウィキペディアの引用だ。
『国民の最低限度の生活を保障す るため、国民一人一人に現金を給付するという政策構想。生存権保証のための現金給付政策は、生活保護や失業保険の一部扶助、医療扶助、子育て養育給付など のかたちですでに多くの国で実施されているが、ベーシックインカムでは、これら個別対策的な保証ではなく包括的な国民生活の最低限度の収入を補償することを目的とする。包括的な現物給付の場合は配給制度であり、国民全員に無償で現金を給付するイメージから共産主義・社会主義的と批判されることがあるが、ベーシックインカムは自由主義・資本主義経済で行うことを前提にしている。新自由主義論者からの積極的意図には、ベーシック・インカムを導入するかわりに、現行制度における行政担当者による恣意的運用に負託する要素が大き い生活保護・最低賃金・社会保障制度などに含まれる不公正や逆差別といった問題を解消し、問題の多い個別対処的福祉政策や労働法制を「廃止」しようという 考えが含まれる。』
さて、このベーシックインカムについて知っている人はどれだけいるだろうか(ちなみにスイスでは、市民運動の代表者がこれまでの活動で集めてきた署名十万人分を政府に提出し、国民一人あたり(成人)に一カ月二千五百スイスフラン(約二十八万円)を支給することを訴えた。ただ、スイスの物価は世界一高いと言われている。よって日本と同じ金銭感覚ではなく、スイスの二十八万円を日本の物価になおすと、感覚的には約十五万円ほどだろうか)。このベーシックインカムにおいて重要なのは、生活保護みたいに、「必要な人には保護を実施する」と言った感じに、一部の貧しい人が受けるんじゃなく、国民一人々々に対してなんの見返りなくお金をくれる所だ。そこにはお金持ちも含まれているし、小さな子供も含まれている、それこそ赤ん坊だってそうだ。家族がいるからどうのこうのっていう話しはなくて、例えば、四人家族なら、その四人の一人々々にお金がもらえる。そこにあるのは徹底して個人を尊重するっていう考えだ。
では何故このベーシックインカムを紹介しようと思ったのか、それは資本主義社会となった今の生活の在り方が、あまりにも合っていない、そう感じたから。じゃあ資本主義にあった社会にするにはどうすればいいのか、そこで重要になるのがこのベーシックインカムという構想だ。まず、なんで僕が今の生活の在り方が合っていないと感じたのか、それを説明するために一つ、知人から教えてもらったお話を紹介したい。
『土曜日はミサの前日だから皆でどんちゃん騒ぎしよう』
『日曜日はミサがあるから神様の有り難いお話を聞いてお祈りしよう、ミサが終わった後はドンチャン騒ぎだ』
『月曜日はどんちゃん騒ぎの二日酔いで頭がいたいから仕事は辞めておこう』
『火曜日はおおそうだ、守護聖人をねぎらう日じゃないか、こうしちゃいけない、守護聖人をねぎらうための準備をしなくちゃ』
『水曜日はよし、今日は気合をいれて働くとしようかな』
『木曜日は……あ、あそこの家の人の守護聖人の日じゃないか、どれ、一つ訪ねて行こうじゃないか』
『金曜日は流石に一週間に仕事をするのが一回だけじゃいけないから仕事をしよう』
『さて、土曜日はミサの前日だからみんなといっしょにどんちゃん騒ぎだ』
こういったお話。これは中世の農民の姿なんだと言う。この話を聞くと、いいなぁと思う。これを読む人は皆そう思うんじゃないだろうか、この話が実際に本当であったかは分からないけど、実際にそうであったとして、それと比べて今の人達はどうだろう、これ位のんびりして、仕事と生活を考えることが出来るだろうか。いや出来ない人が殆どだと思う。今の状況は毎日朝から晩まで働きづめ、土日だって仕事を家に持ち込む人もいるだろうし、土曜出勤や日曜出勤だってざらだろう。僕は今現在の人々の暮らしが、全てこうだとは考えないけど、大部分がこうなんじゃないかと思っている。読者の方々も、想像してみたらこうなるんじゃないだろうか、毎日毎日働き詰めで、家に帰っても疲れ果ててバタンキュー、こういった感じ。改めて考えると、明らかに生活の中に含まれる仕事の割合が異常だ、むしろ仕事が生活を侵食しているとも見える。こんな状況が普通になっているんだから異常だと思わなきゃいけない。だって本当なら昔よりずっと仕事が減っているはずなんだから。もう一つ紹介したい話がある。
『古代アテネ市民はついに人間の奴隷ではなく、「機械という奴隷」を手に入れたのだと言う。経済の恩恵は変わらないが、機械により、今まで必要であった労働が減少し、その分、自由な時間が増えるということだ。』
機械化が進んでいるということを感じるような事を例に上げるなら、例えば郵便物の再発送なんてそうだろう、扉に挟んである紙に電話をかけると、受話器の奥から聞こえるのは人間の声に似せた機械の声だ。プログラムに操作された声が、マニュアル通りに応答してくれる。それ以外にもたくさん、機械が人間に取って代わっているところなんてたくさんある。これからも増えていく。なのにどうしてこうも今の人達はせかせかと働いているんだろう、機械化が進めば進むほど、仕事はなくなってのんびりできる時間が増えるはずなのに、逆に仕事が減るのを嘆いて嘆いて、どうにかして働かなくちゃと考えて、新しい仕事を作ってはそれにかじりついてる。機械が人の代わりに働いてくれる、そうは考えないで、機械が人の仕事を奪っているって考えているんだ。これじゃあいけない。元々この世界に全ての人間が働けるほどの仕事なんてない。だけど、それでも人間が職にありつこうとするのは、仕事をしなければ生きていけないからだ。ありとあらゆる技術が革新してるっていうのに、心の中には余裕がなくて四六時中動いている心臓と同じだ。今、ニュースを見ていると、生活を豊かにするには皆の所得をあげていかなくてはいけないだとか、いかにして就職を増やすか、仕事を増やすか、ということで、翌々考えてみると、それらは全部仕事という存在に依存しているのがよく分かる。世の中がずっと昔に比べると、ドラえもんの二十一世紀の世界までとは言わないけど、便利になっているのに、昔以上に忙しいのは生活の土台が、仕事をしなければどうしようもないから、そこが、問題なんだ。
じゃあ、ベーシックインカムを導入したらどうなるのっていう話だけど、良く聞くのはこういった質問、勤労意欲が低下するんじゃないの、働いてもいないのに、お金を貰うってどうなのってこと。だけど、さっきも言った通り、今の時代、働きたい者に対して、仕事の量は圧倒的に少ない、だから、この「働かざるもの食うべからず」的な考えというのは酷だ。だって働きたくても働けないんだから。じゃあどうすればいいのか、働かなくちゃ生きていけないっていう土台から、働かなくても最低限暮らせる、そういった土台に変える必要がある。そこで出てくるのがベーシックインカムだ。このベーシックインカムというのは、働いている人にも働いていない人にもお金がもらえる。これは最初のほうで言った通り。働かない人は最低限のお金しかもらえないから勿論、遊ぶお金なんてないし、もう本当に生きるためだけのお金しかない。より裕福に暮らしたければ働いてくれってこと。最低限のお金をもらえるからって、皆が皆、仕事をしなくなるってことはまずない。だって、皆、生活を裕福にしたいだろうし、お金がかかる趣味を持っていたら、趣味を続けたいからお金を稼ぐ。元から働いている人であれば、ベーシックインカムのお金で、今ある選択肢を広げることが出来る、家族がいれば家族に使うお金を増やすもよし、将来のために貯蓄することもできる、勿論そのお金で遊んだって自由。それに、この世の中には、働きたくもない仕事を、働かねば食いっぱぐれるっていう考えで働いている人が大勢だ。そういう人は結局、やりたいことをやってるわけじゃないから作業の効率が悪い。人を雇った所で作業効率が悪いんじゃ仕方がない。もしベーシックインカムの所為で働く気がなくなって、仕事を辞めるんであれば万々歳、開いた席に仕事をしたくてたまらない奴が入ればよりGood。今日、仕事をしたくてたまらない人が多いのに対し、仕事をしたくないのに無理やり仕事をしているという人もまた多い。ベーシックインカムはこの関係をひっくり返す力を持っている。それに、何度も言うように、このベーシックインカムは個人を尊重しているから、子供も当然お金がもらえる。子供だから、下手に使わないように、親がちゃんと管理(親が子供のお金を勝手に使うなんてのはもっての外)してやれば、子供が成人になった時、バカにならない額が手元にあることになる。先立つモノが用意されているってことだ。創作活動でも何にでも、先立つモノを用意されていると、それだけ早くやりたいことに着手できるし、探すことも出来る。最近の若い人が持つ、直ぐにでも仕事をしなくちゃいけないっていうプレッシャーからの開放っていうのもある。プレッシャーがないぶん、心にも余裕ができていて、人としても粘り強くなる。
さて、次に質問として出てくるのは、ベーシックインカムは、果たして実現できるのかってこと。これについて、経済評論家の山崎元は、
『年金・生活保護・雇用保険・児童手当や各種控除をベーシックインカムに置き換えることで、一円も増税することなく日本国民全員に毎月に四万六千円の ベーシックインカムを支給することが可能であるとする。』
と言ってる。もう一つ同志社大学経済学部教授の山森亮の言葉を引用すると、
『毎月八万円を支給した場合、年間約百二十兆円が必要になる。ベーシックインカムの導入に伴い生活保護費や年金などの不要になる社会保障費分を差し引いて も、新たに五十兆〜六十兆は必要だ。日本はもともと租税と社会保障を合わせた国民負担率が低いため、この分を上乗せしてもドイツやフランス並みの負担率に 過ぎないとの試算もある。必ずしも全く非現実的な数字とは言えない面はある』
と言ってる。又、前衆議院議員の平智之さんは、
『たとえば毎月十五万円
非常にあらっぽい仮定の話ですが、たとえば、すべての成人に毎月五万円、未成年に毎月二万五千円の給付を仮定すると、
・父母と子供二人の家族単位でも
・一人親で四人の子供を育てる家族単位でも
・低年金・無年金の高齢者三人の家族単位でも
・二十歳の若者三人の共同生活単位でも
ベーシックインカムの合計額は十五万円となります。ちなみに、この支給パターンで必要なコストは年間五十八兆円であり、現行の社会保障給付(医療費除く)は約七十兆円です。』
と言っている。つまりは、ベーシックインカムは決して実現できないというわけではないということだ。でも、ベーシックインカムに移行するための改革は余りにも大掛かり、だから明日からいきなりベーシックインカムに変えます、とは言えない。しかし改革を起こさなければ結局はどうにもならないってうのは分かりきっている。僕達は今選択を前に立っているわけだ。改革を行うか、何もしないでいるか、もしくは、仕事やお金に取って代わる新しい価値観を創りださなくてはいけないのかもしれない。こうやって選択肢の前に立つだとか、物々しく言っちゃうと皆萎縮しちゃうから、もっと簡単な言葉に変えちゃうと、to do or not to do ってことだ。格好を付けて英語を使ってるけど、やるかやらないかっていう意味でしかない。本当に単純な話だ。僕はベーシックインカムが持つ問題を解決できれば、その奥にあるのは確実に今とは変わった、資本主義社会あったものになると思っている。僕達は行動を起こすためのきっかけの一つとして、ベーシックインカムという情報を持つべきだ。この記事でその情報の一端でも知ることが出来たのなら、幸いだ。
ここに、僕がベーシックインカムを知るために読んだ記事のタイトルを紹介させていただく。皆さんも、自分自身でベーシックインカムについて調べてもらえたら、これほど喜ばしいものはない。
・なぜ今ベーシックインカムなのか第一回~第五回
http://thepage.jp/detail/20140711-00000017-wordleaf?pattern=1&utm_expid=72375470-20.CAoXJQDFRbetlH8-COkAhw.1&page=2&utm_referrer=http%3A%2F%2Fthepage.jp%2Fdetail%2F20140711-00000017-wordleaf%3Fpattern%3D1
・ベーシック・インカムは社会保障政策の切り札となり得るか
http://www.videonews.com/marugeki-talk/591/
・支給額は月二十七万円!スイスで導入されるかもしれないベーシックインカムとは?
http://matome.naver.jp/odai/2138121392108418101
・【京都】平智之京都講演会「ベーシックインカムを考える」(動画)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/189416
・ベーシックインカム(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%A0