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しがらみという名の傷跡

町を駆け抜け、まさに飛ぶように一直線!

すれ違った何人かの町の人たちに、ポッカーンとした表情で凝視された。


「い、いいのかな? しっかり注目されちゃってるけど?」

「暗ぇし、目の錯覚だと思うだぁよ、きっと」

「いやそんな、お気楽な・・・」

「んだけども、人間はそうだべ? 自分の見たくねえモンは、見ねえフリするじゃねえか?」


・・・そうだね。返す言葉もないよ。


たてがみを靡かせ、風を切り、ユニコーンはひた走る。

あっという間に城に到着した。


本当に速い! ひょっとして地上では世界最速だったりして!

カッコイイよユニコーン! スケベだけど!


いななきながらユニコーンは門を潜り抜ける。

中では門番や衛兵たちが、右往左往の大騒ぎをしていた。


「な、なんだあぁ!?」

「あれ、ユニコーンじゃないか!? ユニコーンだよ!」

「バカな! きっと何かの見間違いだ!」

「そ、そうだ! 絶対そうだ!」


口々に叫んでる。

パニックを起こしながら、それでも彼らは職務には忠実だった。

及び腰でビクビクしながら、槍を構えて扉の前に立ちふさがる。


「おめえら、どけ! ケガすっぞー!」


ユニコーンは一切躊躇せず、ガンガン突っ込んでいく。兵士たちはついに悲鳴をあげて逃げ出した。

よーし! 行けえユニコーン!


――ドゴオォッ!!

ユニコーンが体当たりで突っ込み、扉は簡単に粉砕された。


・・・よし! 無事に城に入った!


砕けた木屑の粉が舞い散る中、城内を見回す。

城仕えの人たちが、腰を抜かしたり立ち尽くしたり、様ざまな反応を見せている。

ユニコーンが脅すように高くいななくと、クモの子を散らすように一斉に逃げ出した。


「オルマさんを探さないと!」

「どこにいるか分かるけぇ!?」

「たぶん、最上階にいると思う!」


ユニコーンって階段のぼれるのかな!? 無理なら降りて、自力で探すけど!


「男爵夫人!?」


二階から声が聞こえてきた。

見上げると、スエルツ王子が目を丸くしてこっちを見下ろしている。

良かった! 王子を見つけた!


「訪ねてくれとは言ったけど、ずいぶん派手な・・・。しかもそれ、ユニコーンじゃない!?」

「スエルツ王子! オルマさんはどこ!?」

「え? え? オルマがどうしたって!?」


事情が分からず、混乱の極地の王子にオジサンが叫んだ。


「おぉい! にいちゃんよぉ!」

「ノームのオジサンじゃないか! なんで!?」

「大変だぁ! 目ん玉が無くなっちまったんだぁよ!」

「目ん玉って、オジサンの?」

「そーじゃねえよぉ!」


あたしが会話に割り込み、王子に説明する。


「竜神王の目を、どうやらオルマさんが盗んだらしいの!」

「・・・はあぁ!? なにそれ意味が分からないよ!」


王子は階段に向かって走り出した。

「ちょっと待って! 今そっちに行・・・」


――ズズズズ・・・・・・


不意に、足元から微妙な振動が伝わって来た。

王子が階段の手すりにつかまり、不安そうな顔で立ち止まる。

これは・・・この、嫌になるほど身に覚えのある振動は・・・。


徐々に大きくなる。

すぐに、はっきりと体感できるほどに城全体が揺れ出した。


――ズズズ・・・ガタガタガタ・・・


装飾品の壺や、壁の絵の額が揺れて音を立てる。

不安が倍増し、揺れも音も倍増する。大きな騎士の像がグラグラ左右に揺れ始めた。

まさか・・・まさか、来たの!?


――ゴゴゴゴ・・・・・・!


もはや、地鳴りのような音。

壺が床に落ち、割れる音があちこちから聞こえ、王子が懸命に手すりにしがみ付いて揺れに耐える。

ユニコーンがよろけ、あたしもオジサンも必死になって、たてがみにしがみ付く。

騎士像がついに横倒しに倒れ、像の首と胴が真っ二つになった。


そして・・・・・・


――ドオォォォーーーーーン!!!


城が・・・破壊された。


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