表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/78

5

「やめるわけには、いかないだろうが!」


ブランがヒラヒラと宙を舞い、何度も体当たりで攻撃を仕掛けている。

でも竜の体にはなんのダメージも感じられない。


「よせって! 地竜の体はこの世で一番硬ぇんだぞお! ムダだぁ!」

「そんなこと知ってる!」

「知ってんなら、よせー! おめえの体の方が、イカれっちまうぞー!」


――ズウゥゥーーーン!

イラついた地竜が、一歩、足踏みをした。


「うわあぁぁーーーっ!?」

あたしたちの体が飛び跳ね、地面に勢いよく尻もちをつく。


――ズウン! ズウン!


繰り返される足踏みに、あたしたちの体は小石のように翻弄される。

ついに洞窟の壁がガラガラと崩れ始めた。大きな岩がドサドサ上から落ちて、砕けていく。

周りのノームたちが悲鳴をあげて逃げ回った。


地竜の怒りは大地の怒り。

怒りの感情そのものを鎮まらせなければ、いずれは大地に甚大な悪影響が出るだろう。

このまま放置はできない。でも、どうやって鎮まらせるの!?


「オジサン! 竜神王の目を出して! 地竜に返そう!」

「だめだぁ! 仕返しとばかりに、おらたちノームが全滅させられっちまう!」

「事情を話せば分かってくれるよきっと!」

「そんなん、無理だぁ!」

「なんでよ!?」


あなたたちは、いってみれば同じ土の仲間なんでしょ!? なら大丈夫! 話せば分かる!


「だから、地竜は大地そのものなんだってばよぉ!」

「だから、それがどうしたの!?」

「おめえ、地面に向かって何かしゃべって、それが地面に通用すっと思うかぁ!?」

「思わない!」


あたしは即答した。


「そういうこった! 自然にゃ介入できねえ! おらたちは地竜の感情を、黙って受け入れるしかねぇ!」


そんなぁ! 竜って賢いんじゃなかったの!?

これじゃまるっきり、ヒステリー起こして夜泣きしてる赤ん坊と一緒じゃん!

ずうたいがデカイぶん、赤ん坊の1000倍タチが悪い!


「じゃ、どうすんのよこの状況!」

「それが分かりゃ苦労しねえよぉ!」

「おい、そこのノーム! 剣をよこせ!」


ブランがオジサンに叫んだ。

「ノームなら、剣を持ってるはずだ!」


え!? なに!? 剣?


「あ・・・・・・」


オジサンの表情がポカンと気抜けしたのを見て、あたしは勢い込んで聞く。


「なに!? 剣って、なに!?」

「おおぉ、そういやぁ、あったなあ! そんなもんがよぉ!」

「そんなもんってどんなもんなの!?」

「だからそりゃ、剣だぁ」

「・・・オジサンふざけてる!? まじめに答えて!」


あたしはオジサンに噛みつきそうになった。

頼むから、質問には的確に、正確に、そして手短に答えてちょうだい!


「大地の精気を集めて造った最強の剣だぁ。あれなら地竜を攻撃できる」


地竜を攻撃できる剣? ・・・でも地竜をぶっ倒しちゃったら、まずいんじゃないの?


「あの剣は地竜の分身みてえなもんだ。あれなら攻撃しても、地竜だったらほとんど傷付かねえよ」

「ほんと!? すごいじゃないの!」


まさに、今日のこの日のために造られたような剣。これぞ天の采配。世の中ってうまくできてる。

それ使いましょう! せっかくだから活用しましょう今すぐに!


「なんでそんな便利なもん、今まで忘れてたの?」

「なんせ特別な剣だから、使うヤツも特別なヤツじゃなきゃだめなんだぁ」

「特別な?」

「大地に選ばれたヤツでなきゃ、使えねえんだぁよ。今まで使えたやつぁ、ひとりもいなかった」


あたしはオジサンの言葉を、心の中で反芻した。

大地に選ばれた・・・特別な・・・。


「オジサン! その剣持ってきて!」

「へえ? いや、だからよぉ・・・」

「いーから持ってきて! 早く!」


ブランなら・・・使えるかもしれない!

大地の希少な金の精霊。中でも彼は、特別な・・・


「彼は、ブランは、伝説の白騎士なの!」

「はあ? なんだぁ? 伝説がどうしたってぇ?」

「説明は後でするから、とにかく持って来おぉいぃぃー!」

「おめえら早く持って来い! なんかこのねえちゃん、怖ぇぞぉ!」


オジサンの声に、ノームたちが弾かれたようにわらわらと駆け出す。


早く! 急いで・・・! 早く早く早くー!

ブランと地竜の様子を見守りながら、あたしはジリジリと焦燥感に苛まれた。


やがてノームの大集団が、「えっほ! えっほ!」と掛け声も勇ましく戻ってくる。

来た! 待ってたよ! さあ早く剣をブランに・・・。

目を輝かせて振り返ったあたしは、そこで固まってしまった。


な・・・・・・


「なにこの剣ーーー!?」


目にした剣の、想像を絶する巨大さに両目を見張る。

とにかくでかい! どんだけデカイのこの剣は!

幅、何メートル!? 長さも何十メートル!?


最初は、とても剣だとは思えなかった。

だってあたしの場所からは遠すぎて、柄も切っ先も、ぜんぜん見えないくらい大きいんだもん。

これほんとに剣? ・・・桁違いの巨大剣だ!


ノームの一族が全員総出で、頭の上に抱え上げ、顔を真っ赤にして懸命に支えている。


「こ、こ、これが・・・?」

「大地の精気を集めた剣だぁ。これっくらいのデカさは当然だぁよ」


そういうオジサンの言葉を聞きながら、あたしは軽く血の気が引いた。

ど・・・どーしよー。ブランなら大丈夫だと思って、太鼓判押しちゃったけど。

な、なんかちょっと、自信、なくなってきた、かも・・・。


だってこれじゃ、あんまりデカ過ぎるよぉ!


「心配すんなぁ! おらたちに任せろ!」

あたしの顔色を見たオジサンが、ドンっと自分の胸を叩いた。


「おめえらぁ、やるぞぉ!」

「おおーー! そーーれぇ!」


ノームたち全員が、息を合わせて大剣を放り投げる。

剣はズゥゥン! と大地を揺らし、地に落ちた。振動が足元から頭まで、ビリビリと痺れて抜けていく。

剣はその重みで、土にめり込んでしまっていた。


「いくぞぉ! ノームの底力を見せてやるぞぉ!」


オジサンの掛け声に、ノームの一族が威勢よく応える。

みんな揃ってハンマーを取り出し、クルリと構えた。

そして全員が剣を覆い尽くすように群がって、一斉に剣を鍛え始めた。


――キィンキィン! ガンガンガン!


金属を叩きつける凄まじい音が、洞窟中に反響して空気をビリビリ震わせる。

「うわーっ!?」

思わず悲鳴を上げて両手で耳を押さえた。ま、まるで音の力で耳の奥を殴られているみたい!


「よーし! 完成だぁ!」


オジサンの声に、ノームたちがパッと身を引いた。

見ると、剣が影も形もなくなってしまっている。・・・え!? どこいっちゃったの!?


「け、剣は!? まさか砕いちゃったの!?」

「よーく見ろぉ。ほれ、そこだぁ」


オジサンの指先に視線を向けると、そこにはごく普通の長剣が一本、あった。


なんの変哲も飾りもない、シンプルな柄。

豪華な剣にありがちな、ブレード部分の掘り込み模様もない。

一見、拍子抜けするぐらい貧相な、ただの剣なのに・・・。


なんなの? この威圧感。


目が離せない。近寄りがたいほどのオーラを感じてしまう。

ただの剣に向かって、思わず頭を垂れて敬服してしまいそうだ。

これまでに見たことのある、どんな立派な剣よりも威厳が漂っている。


「すごい・・・」

この剣も、ノームの力も。

いろんな意味をこめてオジサンに向かってつぶやいた。


「さあこれで準備は整った! 次は白タヌキ! おめえの番だぞぉ!」

「・・・おお!」


オジサンの声にブランの声が重なる。

地竜の顔のあたりをヒラヒラ舞っていたブランが、サァッとこっちへ向かって素早く飛行してきた。

そして剣の上でボンッと破裂音がして、白い煙がブランの体を包み込む。


煙が霧散して、変化したブランの姿が明らかになっていく。

あたしは祈るような思いで、あらわになっていくブランの姿を凝視していた。

スエルツ王子やオルマさんが、ゴクリとノドを鳴らす音が聞こえる。


そして

そこに現れたのは、白い・・・


白い・・・・・・

白銀に輝く鎧に身を包んだ・・・


剣をしっかりと手に構え、地竜を見据える剣士の姿をしたブランだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ