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はああぁぁぁっ!!?
「あたしが同行!? それってどういう意味!?」
思わず本性丸出しの言葉遣いで叫んでしまった。
「意味? スエルツ王子に従って、共に道を進・・・」
「『同行』の単語の意味を聞いてるんじゃなくって!」
なんであたしが、探索隊に同行しなきゃならないのか!? って聞いてんの‼
顔を引きつらせるあたしに、姫がまたケロケロ~っとした顔であっさり答える。
「それはわたくしがあなたにシンパシーを感じたからですわ」
「あ・・・あのねぇ・・・!」
あたしは頭を抱えてしまった。
あぁ、やっぱり王位継承問題に引きずり込まれちゃった! この姫、あたしをガッチリ抱え込んで放さないつもりだよ!
お願い、すっごい迷惑だから、その手ぇ放して!
それに・・・
「スエルツ王子がもし本物を見つけちゃったりしたら、どうするんですか!?」
その可能性はゼロではないよね? どうすんの? まさか王子の隙を狙って、あたしにかっぱって来いって?
無理! あたしはね、清く正しい奴隷人生を送ってきたんだから。
そんなコソドロみたいな真似、やったことない!
それとも、ことごとく探索の妨害工作をやれとでも?
そんなんどっちも無理無理! あたしそんな器用じゃないよぉ!
「どうもしませんわ。スエルツ王子が秘宝を見つけたなら、それはそれですわ」
「・・・へ? い、いいの? 見つけちゃっても」
姫とオルマさんが神妙な表情になる。
「アザレア姫は、公正な勝負をなさるお方でございます」
「伝説の秘宝を手に入れたとなれば、潔く負けを認め、道具として結婚いたしましょう」
どんな結果でも受け入れるってこと?
でも、それなら別にあたしの出番って、無くない?
姫には心静かにおとなし~く、人智を尽くして天命を待っていただく、ということで・・・。
「王子が偽物を用意しようとする恐れもございます」
「そうはいかぬように、監視する者が必要なのですわ」
そ、それで、その監視人があたし!? 姫のシンパシーのせいで選抜されちゃったの!?
「シーロッタ・ヌゥーキー男爵夫人、私からもお願いする」
は!? セルディオ王子まで!?
そんな、お願いされても困るんですけど!
「兄上がこれ以上、愚かな行為に手を染めぬよう、見張っていて欲しいのだ」
「いや、あの、その役目はぜひ、セルディオ王子さまの忠臣に・・・」
「私の周囲は、私を王位につけようと画策する者ばかりで信用できない。城内の派閥に無関係な者が適役なのだ」
なのだってそんな、キッパリ断言されても。
あたしの方が、よほど信用できない人物だとは、ぜんっぜん考えないんだろーかこの人。
なに? ひょっとしてセルディオ王子もシンパシー感じちゃったの?
「国の平安のためなのだ。むろん、相応の礼はさせてもらう」
「相応の礼?」
「下賜を欲しがっていただろう? 男爵夫人」
・・・・・・!
あたしはゴクッとツバを飲んだ。無言でセルディオ王子を見上げ、真剣な目で問いかける。
そ、それって、つまり・・・
「私から、男爵夫人の願いを聞き入れるよう、父上に進言すると約束しよう」
「・・・・・・!」
その言葉は、あたしの胸の中の萎みきっていた希望の花を鮮やかに開かせた。
一気に鼓動が躍動し始める。闇の中に、一筋の光が見える。
まさかこんな展開になるなんて、想像もしていなかった!
あぁ・・・・・・
もう断たれてしまったと思っていた道が、未来が・・・
もう一度、目の前に開けてきた!!
「もちろん、わたくしも力になることをお約束しますわ」
アザレア姫がイスから立ち上がった。
ドレスの裾を引きながら近寄ってきて、あたしの両手をキュッと握る。
「お互いシンパシーを感じた者同士、もうわたくしたちは、友です」
「アザレア姫・・・・・・」
シンパシーうんぬんの件は、とりあえず横に置いておくとして。
あたしと姫は、身分は違えど似た者同士。確かに分かり合える部分がある。
これも運命的な縁なのかもしれない。
この人の力になれるものなら、なってあげるべきかも。
だってこの人も戦っているんだもの。運命の過酷な輪の中で、精一杯、生き抜くために。
・・・・・・よし!!
あたしは大きくうなづき、はっきり断言した。
「分かりました。私、同行します!!」
「きっとそう言ってくださると信じていましたわ! シーロッタ・ヌゥーキー男爵夫人!!」
あたしたちは手を握り合い、お互いの目をしっかりと見つめ合った。




