救出イベントⅤ
暫くして、ヤツらは冒険者達を連れてきた。
連れてきた、と言っても手足を縛ったまま、それに丸太を通し、前後二人で担ぐというものだ。
まるで獲物を担いだ猟師のようだ。
つまり5人の冒険者にふたりづつで、合計10人の担ぎ手というわけだ。
いや、それに装備品の担ぎ手が3人もいる。
…っ?この担ぎ手3人は例のレベル10の戦士だ!
その時ゴブリン達の目を通して、戦士達とフリードが目配せしたように見えた。
…もしかしたら、ミールさんを見つけた時点で、ゴブリン達をバッサリとか考えているのかもしれない。
それどころか、『仕事』が終わったら口封じに全員を…とかありえそうだ。
まあそういう考えてであれば、こっちも遠慮は要らないな。
最初から護衛で連れてきたヤツらを倒し、少しでも戦力を削るつもりだった。
ただこれだけ数が増えると、少々苦戦しそうだ
レベル10の戦士も侮れない。
そうこうしている間に、一行は出発し始めた。
まわりを見ても、隠れてついてきている者はいない。
向かうは俺とミールさんが隠れている、5km 程離れた空き地だ。
そう、これまでのやり取りは全て、ゴブリン達からの目や耳から伝えられたものだ。
元からそれに近い共有感覚ができたが、それがより明確に出来るようになってきた。
こうやって、モンスター達と繋がっているうちに、俺は彼らの視界や聴覚なども共有出来るようになってきたのだ。
特にゴブリン達のような、ヒト型のモンスターの方がこの感覚は共有しやすい。
逆に"キラーマンティス"達のような昆虫類は、なんだか違和感がある。
彼らの見た物を一度脳を通して、俺の感覚に処理変換してから送られると言えばいいのだろうか?
さすがにフルデッキの七体を一度に全部は無理だが、二体『同時中継』位は短時間なら可能だ。
これももっと経験していけば、全部同時中継もできそうだ。
まあべつに気持ち悪いわけでもなく、たぶん繋がりが、より深く出来るようになったという事だろう。
さっきから担いでいるヤツらから、まだかまだかと催促をしてきているが、もちろんこの"ゴブリン"達はヒトの言葉がわからないことになっているので無視だ。
せいぜい疲れまくってもらおう。
予定より合流ポイントを、さらに遠くにしてやろうかな(笑)。




