ゴブリン夜襲Ⅰ
俺が狙っていた通りになった。
"キラーマンティス"や"レッサーデーモン"なんぞのイカツイ奴らがいれば、もし俺を見つけてもビビって近づかないかもしれない。
そう思った俺は、見張りの数を極力減らしてみたのだ。
("アルラウネ"なんぞは見た目、人形にしかみえないしな)
案の定、"ゴブリン"共がひっかかってくれた。
数は十一匹。
レベルは2~4で、一匹だけレベル6がいる。
そして気になる事がひとつ。
ゴブリン共とまったく反対側の、おそらく木の上、"ミール"という名称とカーソルが見えた。
モンスターではない。
文字とカーソルの色が青色をしている。
これはたぶんNPCを示す色だ!
コイツが"ゴブリン"共を引き連れてきているのか、と一瞬思ったがどうやら違うようだ。
まったく反対側にいて、"ゴブリン"と連携している様子がない。
単に状況を伺っているように見える。
そちらに動きが無いうちに、"ゴブリン"共はまったく油断しているのだろう、無造作に近づいてきた。
明かりに照されて出てきたのは、俺の胸位までの背丈で緑色の肌、汚ならしい革鎧に錆びた剣を身につけたヤツラだった。
「グフフゥ~!」
と嫌らしく笑いながら、俺を取り囲もうとする。
"ミール"さんとやらは、やはり動かない。
「フッ!この程度で俺を倒せると思ったのが、お前達の運の尽きだっ!」
一度言ってみたかったセリフを叫ぶと同時に、こちらから仕掛ける。
俺とヤツラの間に残り二頭の"グレイウルフ"を、ヤツラの後方に"キラーマンティス"と"レッサーデーモン"、それに"アングルアイビー"一体をよびだす!("ビーファイター"は夜目が効かないのでお休み)
すぐ俺は【パワー&ガードⅢ】を発動し、"アルラウネ"に【パニックボイス】を"レッサーデーモン"に【水魔法/初級】のひとつ[アイスジャベリン]を命じるっ!
「―――ッ!」俺達には殆ど音としてきこえないが、さすがハイレアの【パニックボイス】だ。
"ゴブリン"共のカーソルに、次々混乱を示すマークがついた。
「ふぎぁあっ!」
後方から声が聞こえると共に、ドサッと落ちた音がした。
振り向くと"ミール"さんが、どうやら木から落ちたようだ。
名前にしっかり混乱のマークがついている。
「みゃあああぁ~!」
あー、叫びながら逃げて行ってしまった。
ごめんな~!
そちらに気をとられている内に、戦いの方は決着がついたようだ。




