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【大王の迷宮】攻略Ⅳ

お待たせ致しました。

時間があきましたので、前回のあらすじを…。


スターリングシルバー城の地下に広がる【大王の迷宮】に挑戦中の主人公一向。

50階での"ドラゴン"らと調子に乗って連戦をしたせいで、セレアルやエトワ達が疲労困憊となってしまった。

そこで攻略を中断して、戻ることになったのだが…。

50階にあった転移魔方陣から帰ってくると、そこはまだ見たことのない大部屋だった。

どうやら帰りは、最初に入った【大王の迷宮】の入り口とは別の場所のようだ。


(ちな)みに【大王の迷宮】の入り口は、スターリングシルバー城の中央、その地下2階にある。


野球場のグラウンドより広いフロアで、その真ん中に地下へと降りていく階段が口を空けておりました。

入り口の周りには12個の魔方陣があり、いかにも高レベルの騎士さん達が直立不動で何十人もそこを守っている、無駄に広いフロアでした。


あのフロアに比べればここは10分の1もない広さだが、それなりの広さがある。

とは言っても俺達が現れた魔方陣が中央にある以外は、脇に3名の侍女さんが控えているくらいで、これと言って何も無い部屋だ。

窓があり空が見えるから、地下という訳ではないみたいですな。


「お帰りなさいませ、お疲れ様でした。

皆様方、どうぞこちらに。」


侍女さん達は突然、俺達が現れたのにも顔色ひとつ変えず(さすが央都の侍女さんですね!)、正面にある扉を開けて隣の部屋へと誘導してくれた。

隣の部屋には追加の侍女さんや執事さん達がおり、テーブルや椅子、ソファーなんかの家具(絶対、高価そう)があり、くつろげるようになっていた。


かなり疲労困憊なセレアルとエトワは、二人してソファーに倒れ込んじゃいました。

ルーゴ王子もヤセ我慢が限界だったようで、燃え尽きて真っ白な灰になっちまったボクサーさんなポーズで椅子に座り込んでいます。


すかさず侍女さん達がその周りに集まり、くつろげる様に鎧なんかを外すのを手伝っていく。


─さて、この部屋で何をするのかといいますと、ドロップアイテムの引き取りでございます。


この【大王の迷宮】は、基本、モンスターから得られるドロップアイテムを央国が全て買い上げる決まりとなっているのだ。

もちろん、対価に金貨(正価以上の金額で)が支払われる。

あと魔晶貨も金貨に換算され渡される。


まあ自分が得たモノが手に入らないのは残念かもしれんが、アイテムにしろ魔晶貨にしろ、国の重要な資源なんだからな。

それに迷宮に(いど)んだ者も、しっかりと金貨で支払われるし損はしていない。


それにドロップアイテムでどうしても欲しい物があった場合、交渉次第で買い戻す事も可能なのだ(央国にとって希少な物だと難しいらしいが)。


ただ俺の場合、魔晶貨は全て俺のモノとさせてもらう約束に事前の話し会いで決まっている。

というのも─


「では、こちらに品をお出し頂けますでしょうか?」


執事さんに(うなが)され、部屋の真ん中にドロップアイテムを実体化させる。


「おお!

ただの1回の探索で、これほどの品を手に入れられるとは!

聞いてはおりましたが、さすが勇者様であらせられますな!」


執事さんの中でも一番歳上に見えるチョビヒゲを生やした執事さん、モリッと積まれた状態で実体化したアイテム群を見て少し興奮した声をあげた。


「それでは鑑定をさせて頂きますぞ。

『"叡智(えいち)の書"よ、その(ちから)の一端を我に示せ。』」


どうやらそのチョビヒゲ執事さんは、ドロップアイテムを調べることが出来る魔道具を持っているようだ。

左手に持っていた古めかしい広辞苑大の本が、執事さんが呪文を(とな)えると勝手に開きページをめくりだした。


「………むむむ…"魔力を帯びた蛇革(大)"がひとつ、ふたつ、みっつ…って、まだある!?

それにこれは"鬼の黒角"、…なんと、"巨人の籠手(ガントレット)"までありますぞっ…!」


執事さん、次々に鑑定結果を隣の若い執事さんに伝えていくが、報告するたびにテンションが上がっていきます。


「…こ、これだけの物が半日程の、しかも1パーティーの収穫とは…。

いやはや、驚きを禁じ得ませんな!」


まあ無理も無いといいますか。


俺には、アイテムドロップ確率が爆上がりするスキルを持っているからねー。

普通の人のドロップ率なんて、俺の1/3~1/10程度ですからね。

それに俺の場合、ドロップのレア度も準じて跳ね上がってますから。


先程、執事さんが言っていた【鬼の黒角】や【巨人の籠手】は、上位"オーガ"や"ジャイアント"の激レアアイテムだ。

俺でも10~20回倒して1度出るかどうかのモノなんで、普通の人なら確率的な考えなら数100体は倒さないと出ないアイテムなのだ。


─俺が央国と取り交わした約束というのはコレが関係しております。


つまり異常にアイテムドロップの出が良いのを説明しまして、それを供給する代わりに魔晶貨を融通(ゆうずう)してもらう交渉をしたのだ!

先の聖魔鉱やクリスタル鉱が、良い証拠となったようです。


もちろん交渉は、主にセレアルとエトワにお願いしたのだが!

俺にそんなネゴシエーションスキルはありません!


央国にしても、例えばR(レア)クラスのモンスターが落とす激レアアイテムなど、それこそいち年に一度、有るかないかの出物(でもの)らしい。

そんなモノをズンドコ手に入るというなら、魔晶貨など安いものという訳です。


まあせっかくゲットしたマジックアイテムのコレクションを手離(てばな)さねばならんのは悲しいが、このレベルのアイテムなら後で手に入れる事もあるだろうしな。


…て、あれ?

鑑定していた執事さんが、何か言いたげなんですが、どうかしましたか?


「あ、あのう…ドラゴン由来(ゆらい)の品が、多すぎる様にみえますが…?」


「─え?

あ、いや、あのボスドラゴン戦を7回もすれば、これくらいは集まると思いますけど?」


ボスの"ノーマルドラゴン"はカードモンスター達でトドメをさす様にしていたが、お(とも)の"レッサードラゴン"なんかはセレアル達が倒すこともあった。


そうなるとセレアル達の倒したヤツには、俺のドロップ率アップのスキルが適用されなくなる。

だからドロップアイテムも、逆にまだ少ない方だと思うんですけど?


「な、7回っ?!

あの50階のドラゴン共と、連続で7回も戦ったのですかっ?」

「そ、それで死者や重傷者も出ずにですかっ?!」

「…信じられない。」


あ、驚くのはソコなんすか。


これは後で近衛聖騎士のサーマルさんに聞いた話しなのですが…。


50階のボスドラゴン戦は半年以上訓練やメンバーなどに準備をかけ、それで1回戦って帰るのが普通だそうです。

連戦なんぞ疲れや消耗が激しくて、リスクが高すぎるようでして。


もちろん連戦可能な実力を持ったチームも幾つかいるそうなんだが、そんな所でも一度戦ったら連戦なぞせず、数日はインターバルをおくようです。


うん、そういやボス戦を再戦しようとする前、サーマルさん達が何か言いたげな顔しとったわ。


…ヲイ、サーマルさん?

驚く執事さんや侍女さん達に、『ですよねー?』みたいな同意を求めるような顔を向けんで頂きたい。

アンタらも文句も言わず戦ってたやんけ。


「"竜の爪"に"竜の牙(大)"、"竜の鱗(大)"がこんなに…。

ああ…"竜石(ドラゴンストーン)"まであるのですか…。

さすがは、ゆーしゃさまですなー…。」


チョビヒゲ執事さんから、"さすゆう"頂きましたー。

でもって執事さん、でもちょっとナゲヤリな感じになってません?

なにかちょっと不本意です!


あ、【竜石】ってのは"ノーマルドラゴン"の激レアドロップだ。

アイテム説明では、"ノーマルドラゴン"の心臓の様な物なんだそうです。

心臓が石なんて、さすがファンタジーの生き物だ。


この【竜石】、ゲームでは採集イベントに使うか高価売却品でしかなかったアイテムだが、この世界では武具の製造時に魔力付与するためのアイテムとして最高級なモノらしい。

まあどちらにせよ、俺が持っていても仕方がないモノであるは変わりませんな。


あと"ノーマルドラゴン"には【竜石】を越える超激レアドロップ品、【竜玉】があるのだが、これは俺でも1%以下のドロップ率なんで、まず期待はしてませんでした。

これはアルカナマスターとしても非常に有益なアイテムなんで、ゲームなら出るまで狩り続けたかもしれんが、流石の俺でもリアルで100回以上"ドラゴン"と戦うのはムリ…………いや、アリか?


─ま、まあそんなこんなでドロップアイテムの鑑定、売却まで終わりましたよ。


アイテムの売却額、央国金貨で数百枚、日本円にしたら数千万円になりました。

半日弱のお仕事で数千万円て。

まるで超大物芸能人か(いや知らんけど)…!


これらアイテムの一部は、オークションにかけられたり央国に多大な利益をもたらした者なんかへの褒賞に()てられ、市場に出回ることになる。

やはり央国政府が稀少な品を()め込んでばかりいると、イロイロと軋轢(あつれき)を生むようだ。


オークションは毎月月末に行われるそうなんだが、『今月は凄いことになりそうですな!』と執事さんが苦笑されてました。


─さて!精算も無事済んだことだし、それではもう一度、誰か【大王の迷宮】入り口まで案内してもらえませんでしょうか?


どうやら先の帰ってきた転移魔方陣は、出口のみの一方通行な魔方陣のようなんですよ。

なもんで、もっかい地下の迷宮入り口フロアまで戻らなくては、50階まで転移出来ないのだ。

この部屋がお城のどの辺にあるのか、全く見当もつかないんで。


はい、このお城、広すぎ。


「ちょっ、ちょっと待ってっ?!

帰って来たばかりなのに、もう迷宮に挑むつもりなのっ?」


「ん?

ああ、もちろんエトワ達は休憩してて。

今回は俺だけで、ちょっと追加で"ドラゴン"シバいてくるだけだから。」


「…なにその『ちょっと買い忘れた物買ってきます』みたいな言い方…。」


─いやね、"ノーマルドラゴン"をレベルMaxまで【合成】するには、あと1体足らんのですよ!

まあ"レッサードラゴン"から【進化】させれば数は足りるんだけどねー…。


でもちょっとひと狩り行けば、(わざ)々【合成】から【進化】に使う魔晶貨を消費しなくてすむじゃないですか?

なら行かない手は無いですよね!

少しでも魔晶貨は節約しないとね!


一度その階をを制覇したら次からは自分ひとりでも転移できるから、俺だけでチョチョっと行ってきますよ。


「チョチョって、お前…。

…ああ、なるほど皆が言っていた『勇者だから仕方無い』とは、これのことを言うのかっ…!」


─をいルーゴ、ちょっと待て。

なに慣用句みたいな扱いに、そのワードがなっとんねん?

……あれっ?!

まだ出会って半日程度しかたってないサーマルさん達まで、ウンウンと(うなづ)いてらっしゃるっ?


「うむ、その自己鍛錬を(おこた)らぬ向上心、さすがは我が認める奴だ!

そしてその常識に収まらぬその言動、我が友に相応(ふさわ)しい!」


─いや別に鍛錬とか、そんなんとちゃうけど…。

つーか俺、いたって凡人で常識人ですよ!


「…ま、まあもう一度、一緒に迷宮に挑むのは、今度にしておいてやろう!

我としては、もっと戦いたかったのだがな!

うむうむ!実に残念だっ!」


─ほおう…。

なら別に一緒に行くのは、なんら構わないだぞ?

うん、壁役のカードモンスター達は幾らでもいるからな、思う存分戦えるぞ?


「い、いいいや!

こ、今回はちょっと…。

け、けっしてもうヘトヘトになった訳ではないのだぞっ?

公務…そう!王族としての公務が控えておるのだ!

我くらいの立場になれば、お前の様に好き勝手に出来る時間はそう無いのだっ!」


まあそうしておいてやるか。

こいつをイジってる時間も惜しいしね。


「おうそうだ、公務で思い出した!

姉上からお前に、後で面談の時間を(もう)けてくれと言われていたのだ!

お前、迷宮から帰ったら、都合を我に伝えるのだ!」


今になって思い出すのかよ…。


─ええっと、ルーゴのお姉さんという事は、今回の選択イベントで"魔薬"にルーゴと共に洗脳されてた人か。

確か第一王位継承者の人だったよな。


「うむ!

姉上自ら、此度(こたび)の事で礼を言いたいそうだ!

バハラント王国一の美姫と(ほま)れも高い姉上から、直接お言葉を頂けるのだ!

涙を流して感動するがよい!」


いや美少女成分は、ミール達で充分過ぎるほど足りてるし。

…とは言え、そんなエライさんのお言葉を無下(むげ)にはできんよねー…。


「あと、ミール殿に約束の褒美も見繕(みつくろ)わねばならぬしな!

うむうむ、忙しいことこの上ない!

ではそーゆーことでっ!」


あっ!こいつ、まだミールへプレゼント渡すこと(あきら)めてねーのか!


「ふはは!

ではまた後でな!」


そう言うやルーゴの奴は、思いその他素早く部屋から出て行ってしまった。

うぬぬ…ミールへの好感度アップなぞ、させてたまるか!

いつも読んで頂いてありがとうございます!


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