魔薬施設攻略Ⅱ
「わ、私は…、私はっ…!」
ジャハダハールさん、頭を抱えています。
周りには、同じ様な状態のダークエルフさん達がいる。
「お父様、気をしっかり持って下さい!
全ては魔薬のせいなんです!」
「ああ…シェハラール…、シェハラールなのか…?」
そのジャハダハールさんを介抱しているのが、シェハラールさん。
彼女はイシスさんと共に来た、もうひとりのダークエルフお姉様である。
このシェハラールさん、なんとジャハダハールさんの長女だった。
凄い偶然だ。…いや、それほど凄くもないか?
まあいいや。
―ダークエルフの族長、イスマイールさんの命を受け、コムサ騎士の人達を殲滅すべく意気込んでやって来たジャハダハールさん達、ダークエルフ一行。
しかし、とーぜん俺が不意討ち&カウンターで【ヒールオール】をカマしてやり、魔薬の洗脳を解きました。
まあその際、彼らが召喚した火精霊や風精霊なんかもサクっと倒してゲットさせて頂きましたけどね。
ダークエルフさんは火と風、それに闇属性の精霊と仲がいいんで、この3種の精霊をガッツリ得られてます。
もう俺的にはホクホクですよ。
いやー、今回は精霊族モンスター祭りですな。
ちなみに昨日からのイシスさんらダークエルフ達から得られた精霊モンスは、こんだけになりました。
火精霊
【イフリート】(SR) × 1
【サラマンダー】(R) × 3
【ファイアリザート】(HN) × 5
【レッドエレメント】(N) × 7
風精霊
【エアメイデン】(HN) × 3
【イエローエレメント】(N) × 8
土精霊
【グリーンエレメント】(N) × 3
闇精霊
【ダークフォッグ】(HN) × 1
【ブラックエレメント】(N) × 3
デュフフ…。
これからの戦いで、さらに精霊をゲット出来るでしょうからね。
ですんでまだ【合成】はしてません。
まあこれで精霊族のモンスターは、かなり充実することになるでしょう(皮算用)。
―で、そんなこんなで今に至る訳です。
「あ…えっと…、も、もう大丈夫ですか?」
「…君は?」
「お父様、このお方が例の魔物使いの勇者様よ。
この方が、私達やお父様の魔薬の呪いを解いて下さったの。」
「おおっ…。」
…えーまあ、シェハラールさんが、俺が自己紹介する前に、色々と経緯から説明してくれるようです。
いつもの人見知りスキルを発動してしまい、上手く話せない俺に代わって説明してくれるのは助かりま―…
ちょ……
……ちょっと?シェハラールさん?
ソレ、脚色し過ぎじゃね?
…うぉい!シェハラールさんってば!
ナニ言ってんのよっ?何だよそのスーパーマン的活躍はっ?
…してへん、してへんって。そんなカッコイイ現れ方、してへんかったやろっ?!
「……なんというお方だ…。」
「おお…。」
「凄い…。」
ほらあっ!お父さんのジャハダハールさん、すっかり信じきってんじゃん!
あと周りで聞いていたダークエルフさん達まで驚いた顔してるし!
「何も脚色した覚えは無いのですが…?
勇者様、そんなにご謙遜されなくても…。」
ええー、そんな不思議そうに見られても…。
シェハラールさん、どんな色眼鏡フィルターつけてたんすか。
つかこの人も、イシスさん並に扱いづらい人だったんかいな。
「と、とにかく!
俺、そんな大した事はしてませんし!
それより、これからのことを打合せさせて下さい!」
「む、そうですな…。
そ、そうだっ!イスマイール様…!
…お願いしますっ!
助けて頂いた上にお願いを申すのは心苦しいのですが、族長や他の者達も助けて頂けないでしょうか?
どうか…、どうかお願い致しますっ!」
「も、もちろんです。
そのつもりで来てますんで。」
「おおっ…感謝致しますっ!」
いやいや、全員の救出がイベント成功条件ですのでね。
…ですからそんなに畏まらないで下さいって!
……さてここで問題がある。
今、ジャハダハールさん以下、魔薬から"解放"出来たダークエルフさん達は34名だ。
そしてイシスさんから聞いているに、施設にいるダークエルフさん達は合計で150人前後だというのだが…。
「―我らを入れ一族の者は、全146名です。
それにパデルボルン侯爵の者が、監督役として3名。
…あ、あと先日、得体の知れない男が、視察と称して来ております。」
「得体の知れない?」
「はい、今まで我らは見たことが無い、何か薄気味悪い男でしたが、パデルボルンの者達は丁重に扱っておりました。
そいつは、…あの地下の"化け物"をよく知っているようでした。」
―なるほど。
ジャハダハールさんが思い出して顔を歪めながら言うのが、間違いなくイベント内容に記されていた隠しボス、"調剤師"メーベランとかいう奴だな。
あと地下の"化け物"っつーのが、"アーザンズスポーンメディカ"ですね。
だがそっちの方は一先ず置いておいて、問題はダークエルフさん達の方だ。
魔薬に洗脳されているダークエルフさん達は、残りあと100名ちょっと。
それに対し俺の【ヒールオール】は、一度に掛けられる数がピッタリ50名までなのだ。
これは今までに何度も【ヒールオール】を使ってきて、これ以上の人数に掛けれなかったので間違いない。
あと《マギクリストラ》に込められた【ヒールオール】は、全て先の戦いで使いきってしまっている。
これらの《マギクリストラ》は、再チャージ完了までに至ってなってないんだよね、現在。
ということで最悪のパターンになっちゃうのは、ボス戦の"アーザンズスポーンメディカ"と戦いながら、ダークエルフ達の解放も同時にせねばならなくなった場合だ。
この場合、どう考えてもイベントクリアの難易度が跳ね上がってしまう。
今は【ヒールオール】を何度も使えないからな。
ダークエルフさん達に、【ヒールオール】を使っていられる余裕が無さそうなんですよ。
そんな事情なんで、残りのダークエルフさん達は、ボス戦前に全員解放しておきたい。
できれば施設を攻略する前に、ダークエルフさん達を50人以下にできていればいいんだが…。
…やはりそれは難しいだろうか。
まあその場合の対策も一応、考えてはいるけどね。
「―わかりました。
では私達で、出来る限り仲間をこちらに誘き出せればよろしいのですね?」
「はい、お願いできますか?」
「かしこまりました。
我が命に代えても成し遂げてみせましょう!」
「いや!死んだらダメですからね!
出来る限りでいいんで、無理しちゃダメですからねっ?!」
「くっ…!
私の様な者の命まで、お気遣いされるとはっ!
なんという器の持ち主…、流石は噂の勇者様だ…。
……分かりました!
このジャハダハール、たとえ幽霊と成り果てても戻って参りますっ!」
「いや、それだと死んでますからっ!」
大丈夫か、このダークエルフ…。
―つかダークエルフって、扱いづれーひとばっかかっ!
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