ダークエルフ救出!Ⅲ
先ずはイシスさんの容姿を、もう少し詳しくお伝えしようかと思う。
チョコレート色とかいったら良いのかな。
ダークエルフさんなんで、ミールよかもう少し濃い茶色のお肌をなさっておられます。
アーンド、長身でドラゴニアンハーフのエトワに近い背丈をしてらっしゃいます。
髪は白髪に限りなく近い銀髪。
雨に濡れた腰上まであるロングヘアーが、雨間から時々のぞく陽の光に当たり、オレンジ色の宝石が付いた髪留めと一緒にキラリと光っておられます。
瞳は深いエメラルドグリーン。
見方によっては黒色に見える。
ちょっとつり目がちのオメメだが、今は追いつめられた今の状況のせいもあるかな?ちょっとキツめな感じです。
で、ダークエルフさん特有のナイスバデーでらっしゃいます。
特に胸部装甲はかなりのもの。
しかもあれ、ロケットタイプと申しますか…、所謂、美きょぬーってヤツです。
おみ足もスラリとながーい。
そんなばでーが、革製のボンテージ鎧みてーなのに包まれとるんすわ。
ひと言で言えば、超美女さんでございます。
―ざわ…ざわ…。
なんかカ○ジっぽい、静かなざわめきが後方から聴こえてきます。
「…す、全てか…。」
「…ゴクリ。」
「あ…やべ、おれ鼻血が…。」
うん、さっきまで命のやり取りヤッてたはずなんだけどねー…。
超絶色っぽい美女さんのイシスさんがブッ放した爆弾発言で、もはやそんな雰囲気は吹き飛んでしまいました。
イシスさんの『ワタシの全てをあげます』爆弾、コムサ領の騎士さんらは男所帯のようでして、かなりの破壊力を与えたみたいです。
「如何ですか?
私の提案を受け入れて頂けますでしょうか?」
そのイシスさんが、重ねて俺に訊いてくる。
―いやね、提案も何も、どうやって彼女達に精霊を召喚させようか悩んでいた所だったんで、渡りに船の状況なんですが…。
……でもこの状況でOKって言っちゃったら、『うへへー、あの美女が手に入るなら、その提案、受けてやらんこともないぞよー』って、受け取られちゃわないっ?!
……
いやいや!ヤバイヤバイ!
こんな事態、ミール達が聞いたりしたら、またどんな勘違いをするか…。
具体的には、俺が言わせた風の展開です。
「―ふぅーん…、ウチらを放って飛び出したと思ったらニャァ…。」
「あんな美女さんをねー…。」
「また嫁を増やす気ですの…?」
「あらあらあらあら~…。」
ほらぁっ?!やっぱりこうなるじゃんっ!
俺の背後、コムサ領の騎士さん達の中からミールが姿を現した。
彼女達の気迫に圧され、騎士さん達は割れたモーセの海の様に左右に退いて行きます。
「い、いやいや!
ちょ、ちょっと待ってっ?!
ちゃんと話の流れを聞いていたのかなっ?
つか、どっからミール達は聞いてたのっ?」
「そのダークエルフさんが、『私の全てを差し上げます』って言ってた所からニャ。」
―一番、あかんタイミングやっ?!
「いや、ちゃんと最初から聞いて―」
だが俺がミール達に説明をしようとした言葉を、イシスさんが遮ってきた。
「お待ち下さいっ!
私はこの方の妾になどと、おこがましい考えで言った訳ではありません!
単に私個人を全て捧げると言ったまでです。
私をどんな風に扱っても構わない、…そう、単なる玩具、または肉奴隷としての意味で言ったのです…っ!」
―このねーちゃん、ナニ言っとんねんっ?!
最悪の掩護射撃だっ!
「おもちゃ…。」
「にくどれー…。」
騎士団の皆さん、美女さんの口からR-18なワードか出てモジモジしだしたじゃん!
つかここの騎士団、純情だなっ?!中学生か!
「「「「………………。」」」」
はあああぁっ?!
ミール達が、地獄の氷原もかくや、ってばかりに冷ややかな目でこっちを見てるぅ!
「も、もうイシスさんっ!
俺はそんなアダルトな報酬要らねーから!
そんなモノ無くてもちゃんと戦いますからっ!」
「…そうですか…。」
なんでちょっと残念そうな顔してんだよ!
後ろの女性陣がジト目になってるのが、振り返らなくても判るから止めて下さい!
「と、兎に角、じゃあ、戦いますよ!
言っておきますが、手加減なんかしませんからね!」
「っ!
…分かりました、全力で戦わせて頂きます。
召喚っ!、サラマンダー!」
このままではどんどん変な雰囲気になってドツボにハマりそうだったんで、無理矢理戦いにもち込みます。
―最初はイシスさんが"サラマンダー"を召喚した時点で、【ヒールオール】を掛けてやろうかと思ってたんだけどね。
そしたら直ぐに戦闘終了になっちゃうじゃん。
そしたらビミョーな空気になっちゃうじゃん!
…てなことで、"サラマンダー"を倒しきる直前で【ヒールオール】を発動することにしました。
これならオマケに"サラマンダー"(R)のカードを、更に2枚ゲット出来るしね。
「―いきますっ!」
「うおっ?!」
と思ってたら、イシスさん自身が俺に突貫して来やがった!
いきなりシリアスモードか、切り替え早えよ!
イシスさん、火精霊を後方からの砲台にして、自分自身が近接戦闘にもちこむ気だな!
だが、カードモンスター達に割り込ませてもら―…
「サラマンダーっ!」
「「うあああっ?!」」
「…なっ?!」
俺を狙わないっ?
イシスさんの"サラマンダー"が、吐き出す火炎弾を周囲の騎士さんらにバラ撒き始めた!
騎士さん達は自分達が狙われると思っていなかったので、大慌てで回避している。
「今ですっ!」
「「はいっ、ご武運をっ!」」
「あっ?!」
しまった!これが目的だったか!
混乱のスキを見計らって、イシスさん以外のダークエルフさん達が脱出するつもりだ!
「ダークエルフさん達を引き留めろ!」
俺の掩護に回ろうとしていたカードモンスター達を、急いでダークエルフさん達の脱出の邪魔に回す。
が、これ、間に合うか?
俺は俺で、向かってくるイシスさんに対応しなければならんし!
くそっ、自己格闘スイッチである、"アルカナハーモニクス"に切り替えてなかった!
油断しすぎだろ、俺!
イシスさんはもう目の前だ。
"アルカナハーモニクス"は、まだ発動出来ない!
「セヤァッ!」
―ギィン!
「ハァッ!」
「あぎゃっ!」
イシスさん、特攻ばりの防御を捨てた剣撃を加えてくる。
こっちが反撃しようとしても、全く守る様子を見せない。
一発目は右腕の【魔神の籠手】でなんとか防いだと思ったら、それはフェイントでした。
素早く切り返して、わき腹に強烈な突きがきた!
…うぐはぁっ?!
俺のチート防御値でも少しズブリとヤられたよ、すっごく痛いです!
「噂にはには聞いていたけど、なんてカタいのっ?!」
もう少し平静時ならエロワードとして妄想でもしてたかもしれないが、今はそんな余裕ありません。
ズバズバ、肩、腰、腿と斬られまくってます。
なんとか致命傷な所だけ、集中して守ってるって状態です。
「反撃をしないなんて、甘いですわね。
―ですがいつまで保ちますかっ?」
いやいや、今、反撃したら、イシスさん殺っちゃうかもしれんじゃん!
イシスさん、防御無視の捨て身の全力攻撃なんで、"アルカナハーモニクス"を発動させないと手加減出来ねーす。
まなじ今の俺の中途半端な反撃が当たれば、防御無視をしているイシスさんの場合、俺の攻撃値なら一撃死だってありえる。
まさか己のチート攻撃値がアダになるとは…。
もう少しで゛アルカナハーモニクス"の『スイッチ』が入りそうなんだ、耐えろ、俺!
「こっちは任せるニャッ!」
―おおっ!
ここで思わぬ援護です!
「ここは通しませんわよ!」
「大人しく退いて下さい~。」
「脱出はあきらめて!」
「くうっ?!」
なんとミール達が、逃げ出そうとしているダークエルフさん達の前に躍り出てきたのだ。
どうやらミールはイシスさん達の行動を予測していたみたいで、俺がカードモンスター達に指示を出す前から動き始めてたようです。
…ミールさん、モンスターの動きを予想した対応を、最近するようになってきたなあと頼もしく思っとったが、対人でもその力を発揮できるとは。
うーむ、まさかあのネコミミ娘が、参謀とか軍師的な立ち位置になってくれるとは思いもよらんかったわ。
ミール達が時間を稼いでくれたお陰で、俺のカードモンスター達も足止めされたダークエルフさん達に追い付き、ミール達と挟撃の状態になる。
騎士団の人達も当所の混乱から立ち直り、盾で火炎弾を防ぎつつ"サラマンダー"にじわじわと近づき、包囲の輪を狭めだしている。
「……く…。
まさか勇者様の奥方様に、あれほど機を見るのが聡い方がおられたとは…。
油断いたしましたわ…。」
「うん、まだ婚約者なんだけどね?」
イシスさん、今まで冷静で表情をしていたけど、少し悔しそうな顔を浮かべた。
あと結婚済みになってるのが、どこまで広まってるのかトコトン調べたい。
「ですが貴方様を倒せば、まだ挽回出来ますわ!」
そう言いながら、今まで以上に鋭い斬撃を繰り出してくる。
―が、それを今度は余裕をもって回避する。
なおかつ彼女の剣に、重く体重をかけた一撃で弾き返す。
「―なっ?!」
はい!"魔響舞闘〈アルカナハーモニクス〉"、発動完了です!
今度こそ大きく驚愕の表情を浮かべるイシスさんに、二撃、三撃と連撃を加える。
「くっ!うぅっ!」
"アルカナハーモニクス"を発動すると、イシスさんよか数段上の技量になるようだ。
自分でもどのくらいのレベルにあるのかイマイチ解って無かったけど、イシスさんを基準に考えればかなりの剣術レベルだよ、これ。
―ギィン!
「ああっ?!」
マイ愛刀【スペルキラー】がイシスさんの剣を巻き込みながら回転し、そのまま鋭く剣の根元を打ち上げる。
その衝撃でイシスさんの剣は、上空高く彼女の手から離れてしまう。
「―チェックメイトです…。」
「くっ…。」
そう言って、イシスさんの首もとに【スペルキラー】を傾ける。
と同時に巻き上げたイシスさんの剣が、俺の後方にチャリンと音をたてて落ちてきた…。
……
…………うひゃーっ!
いやー、これやってみたかったんだよねー!
ちゅうにを拗らした黒歴史を持つ奴なら、一度は憧れるシチュエーションでしょ、コレッ?
まさかまさかのリアルファイトの末に、このセリフを言える日が俺に来るとは!
―あ、でもこの世界にチェスは無かったよね?
…えーと、ちゃんと意味は伝わってます?(マヌケ)
「…流石、勇者様とその奥方様達ですわ。
やはり歯がたちませんでしたか…。」
どーやら降参の意味は通じていたようです。
―ん?
でもなんだろ…、その声色はまだ諦めてないような…。
「ですが、あともうひと足掻き、させて頂きますわっ!」
イシスさん、そう言うなり後ろに跳び下がる。
…あっぶねー、慌てて【スペルキラー】を退かさなかったら、イシスさんの首をスッパリやっちゃってた所だったよ。
「…我が一族との古き盟約を守り、我が命にしたがえたまえ…。」
俺がどうしようか迷っている隙に、イシスさんは目を瞑り、まるで祝詞を唱えるように素早く呟く。
すると重々しい男の声が、降ってくる様に聞こえてくる。
〔応じよう、…さすれば命と代償を示せ…。〕
―これは、なんかヤバい流れだ!
その声に対して、彼女はその銀髪にかかっていた髪留めを引きちぎる様に外し、石畳に叩きつけた!
「かの者を討ち滅ぼせ!
代償は…わが生命っ!」
―ちょっと!
〔その願い、盟約と汝の代償により応じん…。〕
―ゴウゥッ!
イシスさんの背後から、巨大な火柱が燃え立つ。
そしてその炎は、巨人の形をとり始めた。
〔我はイフリート…。
これより汝を討ち滅ぼさん!〕
EVENT BOSS :
イフリート SR Lv ???
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