大トンネルの奥地へⅧ
GW進行、今週は二回目の投稿です。
"教会の間"とはなんぞやと思ったが、とりあえずバウリンがもう近くというので、弱音を吐きまくっていたファーガももう少し動けるようだ。
でも『動く』つっても、移動に関しては、俺達、カードモンスターに乗っかっているだけなんだけどね。
因みに俺とバウリンは、それぞれMaxレベルの"アントサージャント"に乗っているんだが、それ以外の皆は"ストロングスラッグ"の背に乗っているのだ。
ストロングスラッグ R Lv 12
(甲虫族/水属性/cost 24)
AT:11,800/11,800
DT:10,050/10,050
【アシッドショット】【吸収/麻痺・酸・毒属性攻撃】
先日のボスバトルで手に入れた奴を、早速強化して使ってみた。
なんせナメクジさんっすからね、小型のバス並のデカさにもかかわらず、壁面であろうが天井であろうがヌルヌル動き回る事が出来る。
おまけに意外と動きも素早いんだよね。
通常でも、速足の馬車位のスピードで動けるのだ。
ナメクジの背なんぞ…って、ヌルヌルなのを想像していたけど、ヌルってるのは脚…つーか腹の部分だけで、背の部分は硬い爬虫類みたいな皮をしていた。
あとこっちの世界の人達は、ナメクジに対しての忌避感も全く無いようです。
自分のカードモンスターなんだけど、俺の方が乗るのにちょっと抵抗感があるというか…。
まあアリンコのタマゴ(←"アーミーアント"のアレね)を、喜んで食えるんだもんなー。
いや、タフでないと生きていけない世界だよ…。
さてそんな、普通の冒険者達からみたら常軌を逸したスピードで進むこと約30分。
俺のカーソル表示に反応が現れた。
ん?…つーかこれ…。
「なあバウリン、その"教会の間"ってもうすぐか?」
「うむ、この速さならもうまもなく着く―、…何か起きとるのか?」
「ああ、どうやら誰かが戦ってるみたいだ。」
そう、俺の目には数10体のアンデットモンスターと、何人かの人間が対峙した状態のカーソルが見えている。
モンスター側には、レベル9の"スケルトンオーバーナイト"まで数体いやがる!
お互いに防御値がガリガリ減っていってるので、今も戦闘が行われているのは間違いないな。
「かなりヤバい負傷者もいるみたいだ。」
「…いかんな、よし、助太刀に向かうぞっ!」
「了解っ!」
「ひいーっ?!ま、また戦うっすかー?」
「ちなみに戦ってるの、名前からして全員女性みたいだけど?」
「なにしてるっすかっ!
早く行くっすよっ!
ナメクジさん、最速だすっすぅー!!」
…うん、やはりファーガは、女性で釣るのが一番だわ。
とは言え、嘘を言ってる訳ではない。
戦っている人達の詳細を見てみると、全員、ガールゥみたいな神官戦士みたいだが、確かに女性っぽい名前ばかりだ。
そうこう進んでいる間に、剣撃の音や人の声が聞こえ始めてきた!
―戦局はかなりヤバそうだ。
防御値が100の位まで減り、動かない人が何人かいる!
―ピコーン!
おおっ?イベント発生ですか?
イベント名:【女性神官団を救え!】
イベント発生条件:
神官団に死者が出るまでに、"教会の間"5km圏内に到着する。
イベント内容:
規程時間内に"教会の間"前の広場まで到着せよ!
アンデット軍団に包囲された、女性神官団を救出するのだ!
規程時間を越えるとイベント失敗。
神官に死者が出て、アンデットと化してしまうぞ!
規程時間終了まで【00:05:48】
成功条件:
女性神官をひとりも欠けることなく、アンデット軍団を撃退させる。
イベントボス:
イベントボスはありません。
全てのアンデットを倒して下さい。
達成報酬:
経験値:+350
晶貨:+1,500
【聖水】× 5
【スキルポーション】× 1
【強化カード(HN)】× 1
上位者報酬:
【強化カード(R)】× 1
スキルカード【ヒールⅠ】
及び女性神官達、全員の好感度アップ(笑)
※上位者報酬は、"スケルトンオーバーナイト"を2ターン内に全て倒すと支払われます。
神官さん達の好感度アップって、…好感度アップっ?!。
…こ、これは急がなければっ!
「かなりヤバそうなんで、俺、先行します!」
「おう、任せたぞ!」
―おお、辛口なバウリンから信頼されちゃったよ!
では期待に応えねば!
自分の乗っていた"アントサージャント"を【カード一覧】に下がらせ、自分の足でダッシュをかける。
「来い!るー子!きゅー子!みー子!」
るー子(←アルラウネ)、みー子(←アークフェルパー)は素早く俺の両肩に乗り、きゅー子(←フェンサースプライト)は俺の傍らを並走して飛ぶ。
あっちこっちから岩が飛び出したりしてる悪路なんだが、全てすっ飛ばして猛ダッシュだっ!
「見えたっ!」
"スケルトン"や"ゴースト"系のモンスターが、ウザいほど集まっている広場の向こう、半ば崩れている扉を背に、10人位の人達が必死に戦っているのが見える。
モンスター共はまだ俺達に気付いていない、ちゃーんす!
バトル表示を素早くオン!
「"キュムロニンバスホーク"、"サンダーバード"!」
更に2体を呼び出す。
んでもって、【マギクリストラ《ヒールオール》】発動っ!
もちろん対象に、向こうにいるおねーさん達を含める。
「…え?え?なに、なんなの?」
「傷が…、もう皆、魔力が尽きているのに…。」
「誰なのっ?!」
なんか急に傷が癒えたんで、向こうの人達も慌てるようだ。
でもまあ説明は、一先ずあと!
「短期決戦だ!デカいのカマせ!」
「るー!」「きゅー!」「みっ!」
―ドガガガッー!!
「「「ギャアアアアアッー!」」」
皆の範囲魔法、スキルが、まるで連続打上げ花火の様に目の前で炸裂した!
特に"キュムロニンバスホーク"の【光魔法/中級】である範囲魔法の【サンライト】が、光に弱い"ゴースト"系を一掃する!
「ヨッシャアッ!
あとは肉弾戦だっ!」
お馴染み【パワー&ガードⅢ】を発動しつつ、"キュムロニンバスホーク"と"サンダーバード"を下がらせ、"ブレードゴーレム"、"グランガチシニアー"に【チェンジ】だ!
「こっちは味方の使い魔ですっ!
応援に来ましたっ!
もう少し頑張って下さい!」
「きゃあっー!やった!味方よっ!」「た、助かったの?」「ああ、神さまっ!」
俺が大声で向こうに人達に声掛けると、黄色い歓声が上がる。
「皆、気を引き締めて!
あと少しよっ!」
「「「はいっ!」」」
そのうちの一人、背の高い女性が指揮をとっている様だ。
キリッとした目差しで白髪のロングヘアーの、なんつーか、キャリアウーマンって言葉が似合いそうなカンジの人だ。
―おおっと!
んな見とれてる場合じゃねー!
おねーさん達の好感度アップ、…じゃない、上位者報酬ゲットのためにも、"スケルトンオーバーナイト"を瞬殺だあっ!
―各自、多少の無理はしても構わない!
"スケルトンオーバーナイト"を全力攻撃せよっ!
「みっみー!」
"アークフェルパー"のみー子が、【フラッシュボール】を放つ。
直線上にいた"スケルトン"を粉砕しつつ、数m向こうにいた"スケルトンオーバーナイト"に直撃する。
「るぅうー!」
―ビシィィッ!
そこへ"アルラウネ"のるー子が突進し、鞭状になった自分のツタで"スケルトンオーバーナイト"を打ちすえる!
「ガ、ガッガ…。」
我らがチームの、エース2体による連続攻撃に耐えられるはずもなく、何も出来ないうちから"スケルトンオーバーナイト"が1体消え去る。
―先ずは1体撃破だっ!
んじゃあ、俺もイイトコみせちゃおっかなー?
「うおりゃああー!〈アルカナハーモニクス〉発動ぉー!」
【魔弾】をぶっ放しつつ、愛刀【スペルキラー】を手にしてモンスターの中に突っ込んで行く!
》
》
「…かなり危なかったので、本当に助かりましたわ。
ありがとうございます。
あなた方にプルトゥナ様の祝福があらんことを。」
「「「ありがとうございました!」」」
「いやいや!
冒険者として当然の事をしたまでっすよ!」
ファーガよ、ずいぶんと自己アピールしてるけど、たぶん彼女達はほとんどお前を見てないぞ…。
もちろん俺でもないんだけどなっ!
「本当に助かりましたわ!」
「もうだめかと思ってましたの!」
「オオカミのビースト族なんですね!
私の祖父もそうなんです!」
「私達と同じ神官なんて、何か神のご意志を感じますわ!
何の神様にお仕えしているのですか?」
「あ、あの、…ぜひお名前をお聞かせ下さい!」
頬を染めて神官のおねーさん達(かなりの美女ぞろい、しかも半分はビースト族)が一斉に取り囲んだのは、イケメンビースト族のガールゥだ。
―あっはっはっ!
…くっそうっ!考えてみりゃ、このオチになるの解ってただろう、俺!
"スケルトンオーバーナイト"を集中して攻撃してたから、他の敵からの攻撃はモロ食らってたんだよ。
けっこうボロボロだよ?
そういやイベントの『女性神官達の好感度アップ』って、『俺が』とは記されてなかったよね?!
あっ!最後の『(笑)』って、このオチのことかっ?!
「お、おい、助けてくれよ!」
ガールゥがおねーさんに囲まれて、こっちに助けを求めている。
「兄貴、おれ、あいつが相棒で、今日ほど妬ましい日はないっすよ…。」
うん、ファーガ頑張ってたよなあ。
"スケルトンウォーリアー"からけっこう痛いの食らってたけど、ガマンして戦ってたけどなあ…。
俺もかなり、頑張ったと思うんだがなあ…。
「「爆発するがいい…。」」
俺とファーガは、二人して呪いの言葉を吐くのであった。
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