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飛行許可

何とか今回のことはお咎め無しとしてもらったが、本来なら一発で牢屋行き→犯罪者として強制労働、悪ければ死刑まであり得ると聞いて、ガクブルになる。

ノホホンとした比較的平和な世界と思いきや、やはり油断はならない。


うん、最近ちょっと気が緩んでた。

気をつけねばな!


帰り際にゴラルじいさん以下の飛竜隊の人達と、少し話が出来た。


俺がパーミルに来てからずっと飛竜隊がいなかったのは、やはり領地に出没したモンスターを討伐に行っていたからだった。


本当ならこのようなパーミル城に飛竜隊が不在になる事はあってはならない事態なのだそうで、パーミル公爵の開墾推進が予想以上の拡がりをみせたのが原因だ。


厄介なのは、"ゴブリン"や"オーク"、"コボルト"といった亜人達で、イギス村のような森に近い村ばかりを襲い、飛竜隊が助けに来ると森へスタコラと逃げ込んでしまうため、なかなか退治出来ないでいるようだ。


俺は昨日のイギス村であった"オーク"を殲滅、周囲の森にいた亜人どもを駆逐したことを伝えた。


「なんと!40匹以上のオークどもを、貴殿、おひとりで殲滅されたとっ?!

それに森に隠れておる魔物を、貴殿は見つけることが出来ると申されるか!」

ゴラルじいさんが驚いた顔をする。

「それが(まこと)なら、ぜひっ!ご助力頂きたい!」

じいさんが覆い被さるように迫ってくる!

ゴッツイ、ヒゲモジャの巨体なじいさんが迫ってくるのだ!(ひいっ!)

さっきの尋問されてる時もそうだったが、その迫力たるや、別に今回は咎められてないのに、チビりそうな位こええー!


「わ、分かりましたっ!

俺で良ければ、力になりますぅ!(だから早く退いてっ!)」

「おおっ!かたじけない!

ならば、儂も貴殿が飛行許可を手に入れるのに、少しでも援助いたそう!

腐っても、儂も侯爵領を拝領しておる身だ。

任しておかれよ!」


おお!思わぬ所からの援護がっ!

たしか侯爵って、公爵の次くらいに偉くなかったっけ?

このじいさん、そんな偉いさんだったんだ。

そんな人からの口添えがあったら、これは心強いなっ!


じいさん達からは、『くれぐれもご助力お頼み申しましたぞ!では後日また!』と念を押されながら別れた。


一瞬、じいさんに迫られたとき、イベント発生フラグが立つかなと思ったが、そんな事は無かった。

これはあるとすれば、正式に向こうから依頼があった時だろうな。

もとより公爵には、色々してもらった恩返しをするつもりだったので、幾らでも手を貸そう。


さて、そう言えばこれだけ騒ぎになったのに、あの姫さん、出て来なかったな。

てっきりセレアル姫のことだから、『あの様な魔物、わたくしと私の騎士団が倒してみせますわっ!』とか言って飛び出してきそうなモンだが…。


「…不甲斐ないっ!

あの様な魔物、わたくしの剣のサビにしてくれますわっ!」

あ、やっぱり出てきた(笑)。


お付きの人や侍女さん達に必死で引き止められているが、もう今にも腰にある細剣を振り回しそうだ。


仕方ない、侍女さん達が可哀想だから、姫さんを止めにいくか。


「おーい、ゴメンゴメン!

さっきのは、俺の"パイログリフォン"だったんだわ。

んだもんだから、もう騒ぎは終わったよー。」

「へ?ゆ、ゆ、勇者さま?」

「つー訳で姫さんの活躍は、スマンけど今回ナシね!」

「あ、あ、そ、そうですの…。」

あら?

何だか姫さんの態度がよそよそしい。

目も合わそうとせず、アッチの方を向いて喋ってくるし。


なんか前に姫さんを怒らす事を俺、してしまったっけ?

つーか、この前に姫さんに会ったのはいつだった?

…うーん、しばらく店の方が忙しかったせいで、思い出せん。

けっこう前だったような気がするが…。


……まっ、いいかっ!

別に姫さんも、超怒ってるようでもないし。

このヒト、あんまりネチネチと怒りを持続させるタイプのコじゃあないしね!


ならば、ほとぼりが冷めるまで、ここは退散させてもらおう!

そう思って『んじゃあ…。』と言って、この場を去ろうとした。

しかし、『お、お待ちになって!』と引き止められてしまった。


「……。」

「……?」

なぜか引き止められたのに、何も言わない姫さん。

てっきり何か文句を言われるのかと思っていたが、ワタワタとしているだけで何も言ってこない。


「姫様、勇者様に今日の顛末を、お伺いするのではありませんでしたか?」

「え?」

どうゆう訳か、侍女さんのひとりが助け舟をいれ、姫さんに(しき)りに目配せをしている。

「はっ!

そ、そうですわっ!

パーミル公爵家に連なる者として、ゆ、勇者さまに今日の事を、お伺いしなければなりませんわ!」

…いや別にジョシュアさんから訊けばいいやんと思ったが、まあ何だかそう言うのも気が引けたし、なにより周りの侍女さん達が、『おめー、姫様の言葉を無下にする気じゃねーだろうな?』的な視線が怖くて頷くしかなかった。

うん、怖かった。


―俺が頷くと同時にお付きの人や侍女さんが、光の速さでその場にお茶席をセッティングしてしまい、そこで俺と姫さんはテーブルを挟んで向かい合ってお茶を飲みつつ会話している。

つかココ、端っことはいえ、練兵場ですよねー?

お付きの人が並んで目隠ししているケド、遠目に兵士さんがチラチラこっち見てるのが隙間から見えるし!


そっちの方はなるべく気にしないようにしながら、俺は昨日のイギス村のことから、さっきのゴラルじいさんから受けた飛竜隊の手伝いまでの事を、かいつまんで姫さんに説明した。


「ウマの足で3日かかるのを半日も至らず…、ですの?」

「うん、あいつ、スッゲー速かった。」

「それで半刻(時間)もしない内に、40匹以上のオークどもを全滅ですか…。」

「うん、ブレスと広域魔法で一撃だった。」

「それで飛行許可ももたずに、城に乗り込もうとしたと?」

「認めたくないものだな…、自分自身の…若さ故の過ちというものを…。

はい、ごめんなさいです!」

「もう何ですかそれは…、でも大事にならなくて良かったですわ…。」


姫さん、最初はずっとうつむいて下ばかり見て、やはり目を合わそうとしなかった(なんか耳が赤かったような気がした)が、俺の話が突拍子もなかったせいか、最後には呆れたように、それから少しして普通に話かけてくれてきた。


やっと話が進んできた所で、何気なくキュールちゃんを乗せて飛んだことの話となった。

「ふ、ふたりでですのっ?!」

どうゆう訳か、タンデムで飛んだ事に食いつく姫さん。

「ミールさんやキエラさんは、一緒ではなかったのですのっ?」

「う、うん。

えーと、あんまり時間も無さそうだったし?」

「…ふぅーん、そうでしたの…。」


…アレ?

何だか姫さんの後ろに『ゴゴゴゴッ』っていう擬音が見える気がするんですけどっ?!

何だかキエラさんからにも時々感じる、笑顔なのに妙なプレッシャーを、姫さんが放っているだとっ?


もしかしてアレか?

一番好きな姫さんのことだから、『グリフォンの背に、最初に乗るのはわたくしのはずだったのに、どことも知れぬ村娘を一番に乗せたのですかっ!』みたいなことで、お怒りなのではないだろうか?


ぬう…。姫さんなら言いそうだな。

よし、ならば飛行許可か出たら、今度のフライトにお誘いしてみようかな。


「わっ、わたくしと一緒にですのっ?!」

顔を真っ赤にして、驚く顔をするドリル姫さま。

「(ボソッ)二人っきりの空の旅…、いいですわ。」

「へっ?」

「なっ、なんでもありませんわ!

それより、勇者さまのお誘いではお断り出来ませんわね!

わたくしも忙しい身ですが、勇者さまがどうしてもと仰るのでしたら、仕方ありませんわね。

予定を空けておきますわっ!」

―いや、別にどーしてもというのじゃないんだが。

…まあ姫さんがご機嫌になったから良いか。


「まあ飛行許可を、もらわないとダメなんだけどね。」

「そのようなこと、わたくしが叔父様にお願いすれば容易い事ですわ!

すぐに許可をもらってきますから、楽しみにお待ちになってくだしいまし。

ではごきげんよう!」


姫さんはそう言って半ばスキップするように、パーミル城へお付きの人や侍女さんを引き連れて戻っていった。

なぜか最後尾の侍女さん(さっき姫さんに声をかけた人だ)が一瞬振り返り、親指を俺に向かってグッ!として戻っていった。

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