パイログリフォン後始末Ⅰ
…ったく!
パーミル公爵も大概にせーよ。
次に姫さんと会うとき、なんか変に意識しそうじゃん!
だいたいどこの馬の骨かも判らんヤツ(俺のことね)に嫁に行かそうとか、ナニ考えてんの、あのおっさん!
とりあえず恐ろしいのは、公爵の思い込み暴走だ。
放っておいたら、知らない間に結婚式とか、まじでやりそうだからな!あの公爵さんは!
飯を食って動けるようになったら、公爵に釘をさしておかないと!
そう考えている内に、ジェファーソンのおっさんが、侍女さんやら医者らしき人らを連れて戻って来た。
侍女さんはオートミールかミルク粥っぽいモノや、パンを果汁と砂糖で柔らかくしたものを持って来てくれた。
俺は医者のじーさん連中の問診やらなんやらを受けながら、用意してくれたそれらをモリモリ食った(超ハラヘリだったので、めちゃくちゃ旨かった!)。
ジェファーソンのおっさんが、『そんなに急いで食ったら、胃が受つけねーぞ』と警告してくれたが、どういう訳か腹の方は全く異常が無い。
おっさんも呆れ返っていたが、これもチートレベルの恩恵だろうか?
医者のじーさん達も目を丸くしていたが、俺の食いっぷりを見て、『非常識に異常ナシ』と訳の分からん診断を出して、さっさと帰ってしまった。
「ピー!ピュイー?」
例のインプリティングしちゃった"グリフォン"の仔は、俺の食うモノに興味津々の様子だ。
―俺が気を失っている間も、"アルラウネ"達と一緒にコイツはずっと側にいたのだが、エサを欲しがる様子もなく、別に食べずに衰弱する気配も無かったようなのだ。
グリフォンパピー R Lv1
(幻獣族/風属性/cost 18)
AT:2,650/2,650
DT:2,370/2,370
【―】【―】
しっかりステータスも読める。
この仔は普通に生き物なんだから4日間も飲まず食わずだったら(しかも生まれたてだし)腹は減っているだろうと思い、試しに果汁に浸したパンをやってみる。(侍女さんが持ってきてくれたものには肉類が無かったから、モノは試しにやってみたのだ。)
「ピー!ピー!」
しばらくクチバシの先でつついていたかと思うと、旨そうに飲み込んでしまった。
「ピュイー!」
もっと欲しがっているようにみえたので、今度はブドウ大の木の実をやってみる。
「ピュー!」
これまた旨そうに食ってしまった。
「…おっさん、"グリフォン"って雑食だったっけ?」
「そんな話、聞いたことねえよ…。」
「ですよねー。」
まあファーガ達をエサにしようとしていたのだから、肉を食うはずではあるんだけどねえ。
あ、そういやファーガ達はどうなったんだろ?
無事なのは間違いねーとは思うがな。
これも後で訊いてみよう(おっさんは知らなかった)。
おっさんと"グリフォン"の仔に色々と食い物をやっている(ただ口にするのは、絶対俺からでしか食べなかった)と、またまたドアが開き、ミール、キエラさん、マーシャちゃんがやってきた。
「はあ~、本当に目を覚ましています~!」
…そういや目を覚ましてから大して時間は経っていないけど、誰かが伝えたにしてもずいぶん来るのが早すぎないか?
キエラさんの口調では、誰かが伝えたようだが…。
……その仕組みのわけは、意外なものだった。
―【女王の涙】だ。
ミールに預けたソレは、俺が死亡すれば只の石ころになって、所有者である俺が死んだ事を知ることが出来る。
だが今回その程度どころではなく、何故だか俺の身体的状況をミールは、【女王の涙】を通じておおよそ把握出来てしまっていたのだ!
【女王の涙】をミールが握りながら俺の事を思い浮かべると、俺がどうなっているのか、うっすらとイメージが脳裏に浮かんでくるらしい。
ギルドで鑑定をしたノームのじーさんは、そんな機能があるのをひと言も言わなかった。
単に言い忘れていただけなのか、これも後程訊いてみないといかんね。
とにかくこの【女王の涙】のお陰で、俺が気を失っていても大丈夫なのが分かっていたし、俺が目を覚ましたのも気付いたという訳だ。
…俺的には、姫さんの様に心配して抱きついてくれなかったので、ちびっと残念だったのはナイショだ(笑)。
あと今回で判った『カードモンスターが倒されると、マスターの精神にダメージが及ぶ』というアルカナマスターの弱点については、ミールとキエラさんには後で伝えておこう。
まあキエラさんは天界のヒトなんだから、もう知っているかもしれないがな。
これはアルカナマスター最大の弱点だろう。
知っている人間は、最小限に留めたい。
とはいえ先の戦いで、ある程度知られてしまったかもしれない。
パーミル城の人達が、なぜ四日間も昏睡状態になっていたのか訊いてこないのは、そういう所を気を利かせてくれているせいかもしれん。
―さて飯も腹一杯食えたし、ふらつく事ももう無くなったんで、そろそろ帰らせてもらおうと思ったんだが…、はい!ミールやキエラさんに怒られてしまいました。
「どうせすぐ動きたがろうとするだろうから、『せめて明日まで寝ておきなさい!』って言っておきなさいと、さっきその廊下の角で姫様に言われたニャーよ!」
「姫様、ずいぶんお顔が赤かったんですけど、何があったか知りませんか~?」
あの姫さんに行動を読まれてしまった。
…だって本当に、なんともないんだもん!
強いて言うなら、も少し肉っぽいモンを食いたい位ですよ!
不満そうなのが顔に出ていたのだろう。
だがミールにひと睨みされ、俺はアッサリと降参した。
…それにこのお陰で、キエラさんの質問をごく自然にスルーできた。
『姫さんに押し倒されたせいです』なんて説明したら、『押し倒したの間違いだろう!』とか言われそうだしな!
―あれ?自分で言ってて、悲しくなってきたよ?
俺って、こんな評価だったっけ?
とにかく仕方がない。
今日一日はゆっくりさせてもらおう。
ただ、いま『上』でやらかしている事なんか、すっげー気になっているんだけどなあ。
まあ悪い事態にはなっていないので、放置してるんだが…。
―おいっ!お前ら、あんまり悪ノリすんじゃねーぞ!
そのあと、ミールは『ぜーたい、今日は動き回っちゃだめニャ!』と釘を再度さして、一旦帰って行った。
マーシャちゃんは、仔"グリフォン"に興味津々だったようだが、まあ帰ったらいっぱい構ってやろう。
―さて!気になる事はテンコモリだが、今日、出来る事をやってしまおう。
俺は【メニュー】から【一日一回無料召喚】を選ぶ。
気を失って、数回分出来なかったのが悔しい。
ヴェノムスライム R Lv1
(魔導族/土属性/cost 29)
AT:3,150/3,150
DT:4,030/4,030
【ハードポイズン】 【吸収/毒攻撃】
―オイオイ!ちょおっとまていっ!




