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パイログリフォン戦!

ほんと、なんだアイツはっ?!


いや俺もさあ、パーミルで"六強"の中にこの若さで入って、五央国中のギルドでもそれなりの実力を持った冒険者だと思ってはいるよ?

まあ知名度は六人の中では一番低いし(でも女子ウケが一番いいのは、絶体俺だよね!)、俺なんかより遥かに強いヤツはゴマンといるのも分かってるよ?


でもそれをさっ引いても、アイツの能力はないわー。


なに、あの"パワー&ガードⅢ"って?

上級魔導師だけが唱えることが出来る、"パワーⅢ"と"ガードⅢ"を一度にかけることが出来るってぇ?

しかもちょっと前に訊いたら、『たぶん最大50人は一度にかけることが出来る』って言いやがった!


50人って言やあ、軍隊じゃあ、2個中隊だよ?

そんだけの人数を一度に事実上、戦力を二倍にしちゃうんだよ?

そんな魔法使えるヤツなんて、どこの国でも諸手を挙げて歓迎するだろ。


それだけでもトンデモなのに、"パーフェクトガード"ってなんだよっ?!

『一定時間、攻撃も出来ないが、ありとあらゆる攻撃を無効化する』(笑)って…、もう笑うしかないよねー。


まあ、実際いまそれを体感してるんだけどねっ!


―俺達はパイログリフォンがいるフロアに突っ込み、すかさずギルマスとサンダーバードとか言う魔物が、ほぼ同時に魔法のサンダーⅡを発動した。

久しぶりギルマスの最強魔法を見たけど、今回はそれが二発同時だ!

流石に稲光がすごいね!

フロア内にウジャウジャいたヒートスコーピオンは、八割がた跡形もなく消え失せた。(うわ…、晶貨やドロップアイテムが大量に…)


残り二割といっても、元の数が数なので、まだまだ数十匹いるんだけど、魔法攻撃にビビりもせず、俺達に向かってくるよっ!

それと…、

「キュオオオォッ!!」

サンダーⅡを二発、まともに喰らってるのに、ちょっと翼の先を焦がしただけのパイログリフォンが、雄叫びをあげながら天井まで飛び上がる。


なにアレ?

あの巨体で、無茶苦茶素早いじゃん!

あんなの、弓でも当てられんの?


「【パーフェクトガード】!!」

こっちの規格外クンから例の魔法がかけられ、俺達の身体から今度は紫色の光の粒が溢れ出てくる。

…つーか、ホントにコレ大丈夫なの?…と、思っている間もなく、火吹きグリフォンがっ!


「フォォォォッ!」

―ドウッ!!


「おわああぁっ!あちぃぃっ…って、あれっ?」

…すげっー!本当になんともねー!!

思ってる以上に早い弾速で、グリフォンから火の玉が俺の方に打ち出されて、不覚にも避けられなかったんだケド、…熱くも何ともねー!

あんなのマトモに喰らってたら、死んでた…とまで言わなくても、確実に戦闘不能になってたよ…。


足元の地面は、余りの熱量で一部真っ赤に溶けてるのに、何にも感じないし、ブーツだって焦げてることすらないじゃん!


「おっシャアっ!

エザ公っ!打ち合わせ通りいくぜぃっ!

ボウズ、デカブツを頼んだぜぇっ!」

「「了解っ!」」


ハハハ、魔物使いクンとハモっちゃったよ。


打ち合わせ通り、俺達、ギルドチームは、例の駆け出し冒険者達を救出に向かう。

「ケァッッ!」

「させっかぁっ!

"アントジェネラル""ヒルジャイアント""シルバーウルフ""キラーマンティス"!!」

「コァッ?!」


冒険者達の方に向かう俺達を邪魔しようとグリフォンが急降下してくるが、俺達とグリフォンの間に巨人やアントジェネラルなどのデカイ魔物が通せんぼする。


このフロアもなかなか広いが、流石にこれだけデカブツの魔物がいると窮屈に感じるな!


「クフォォォォッ!」

―キュドォッ!


またもやグリフォンのヤツ、火の玉を巨人に向けて打ち出してきたが、巨人に直撃した火の玉は、まるで煙のように霧散してしまう。


「ケアァッ?!」

…混乱してるしてる。

アイツからしたら、文字通り必殺の攻撃だったんだろうけど、全く効いてないんだもんねー。

いやいや、この馬鹿げた魔法があったら、ドラゴンの巣から財宝取り放題なんじゃないの?

……うわ、本当にそうだ!

…ちょ、ちょっと今度魔物使いクンを(そそのか)してみよう!


そうこうしている内に、駆け出しクン達の所に到着!

足元をヒートスコーピオンがドスドスガシガシつついてくるが、全く刺さりもしない。

逆にソイツらを踏んずけたり蹴飛ばしながら(向こうも傷つかないから、すぐ戻って来やがる)、俺は狐のビースト青年に駆け寄る。


「キミ、パーミルの"六強"が助けに来てやったよ。

ありがたく思うんだね!」

「う…あ…。」

うんうん、感謝で胸が一杯なんだろう。

まあ一生俺に感謝するんだね!


俺は懐から(ギルド支給の)ポーションとキュアポーションをぶっかける。

『シュー』という音と共に傷が治り、麻痺の毒素が抜けていくのが判るが、悠長に回復していくのを待ってるヒマは無いんだ。

彼の肩に手を回し(ヤローなんかの肩に手を回すなんか、本当に嫌だけどね!)強引に立たせる。

そして半ば引き摺るように、もと来た通路へ担いで行く。


「うわっ、ヤバ…。」

俺の身体から出ている紫色の光が、急激に減ってきたよ!

ま、魔物使いクン!

「おっと!更に【パーフェクトガード】!」


再び光の粒が、勢いを取り戻した。

俺は冷や汗をかきながら、もと来た通路へと走り込んでいく。

…魔物使いクンが言うには二回連続使用が限界らしいから、この光が消えたら本当の意味で戦闘開始だ!


少し奥まで行くと、魔物使いクンのカノジョ?二人が待機していた。

二人とも随分不安そうな顔をして、先の戦闘フロアの方を見ている。


他種族の女の子は守備範囲外だけど、魔物使いクンもこんな美少女二人に心配させるなんて、まだまだこっちの方は修行が足らないね!

アレはぜったい、まだ童貞だね!


「大丈夫だよ!

なにせこの俺を筆頭に、こんだけの面子が揃ってるんだ!

万が一でも負ける事は無いからねっ!」

そう言って二人に俺必殺のウィンクしてやる。

…フフフ、魔物使いクン、これでこのコ達が俺に惚れても恨まないでよね!


「は、はい~。」「お、お願いしますニャ…。」

たぶんあまりスレてない娘達なんだろう、俺のウィンクに戸惑った顔をしている。


彼女達をナンパしている内に、メリルさん、ギルマス(二人担いでいる)、最後にバウリンが半分引き摺って残りの四人を救出してきた。


彼らは既にポーションの効果が出始め、ふらつきながらも立ち上がる事が出来るようになってきている。

うん、これなら後は、カノジョさん達に任せておいていいだろうね。


これからの俺達の仕事は、新米クン達の退路の確保に、ヒートスコーピオンを掃討、そして魔物使いクンの援護だ!

俺は自慢の魔法刀を両手に構え、もと来た道をバウリンと並んで戻る。


紫色の光が消えてきた!


フロアの手前で、ヒートスコーピオンの団体さんが

俺達を出迎えてくれる。

「フンッ!」

バウリンがウォーハンマーをひと振りするだけで、三匹のデカサソリが吹き飛ぶ。


これは俺も負けてらんないね!

姿勢を地面スレスレまで傾け、バウリンの横を抜ける。

「シャァァッ!」


俺は今でこそ力も付いてきたが、駆け出しの頃はかなり非力だった。

だから俺は攻撃の手数を増やす、スピードタイプの戦闘スタイルに力をいれたんだ。


―シュバァ!ザシュッ!

人がひと太刀入れている間に俺は二太刀、二太刀入れているなら俺は三太刀を攻撃出来るように修行したんだ。

『余りの剣速に、まるで腕か三つあるみたに見える』

―おれの二つ名、"三本腕"はここからきているのさっ!


―ザキュッ!ズシュ!

あっという間に、四匹のヒートスコーピオンを葬る。

フフン、パワーと頑丈さだけのヤツには、負けてらんないからね!


…俺達にとっちゃこの程度の魔物、全くの敵じゃない。

ほとんど傷を負う事もなく(その傷もメリルさんの魔法で完治した)、先程のフロアに戻る。

しかしパイログリフォンも魔物使いクンも居ない。


―これは予定通りだ!

実は魔物使いクンがたてた作戦で、デカブツの魔物をパイログリフォンに対峙させていたとき、おチビの魔物ちゃん(たしかアルラウネだったっけ?)をその陰に隠れさせ、なんとグリフォンのタマゴをコッソリ盗まさせていたのだ!


タマゴを盗まれたグリフォンは、必死に魔物使いクンを追いかけるだろうし、魔物使いクンは俺達が来た通路から、反対側にある通路に逃げ込む。


通路はこのフロアのように天井が高くない。

グリフォンにとっては、飛んで逃げることが出来ないって寸法だ!

オマケにタマゴを盾にすればブレス攻撃はしてこないはず、ってのもウマイ事考えたね!


向こう側の通路から、戦闘音が聞こえる。

どうやら作戦通り仕向けられたようだね。

ヤルじゃないか、魔物使いクン!


俺達も援護すべく、彼の元へ走る。

つーかアイツばかり、いいトコ取られてたまるか!


「ゴアァァァ…!」

パイログリフォンではない、別の魔物の断末魔らしき叫びが聞こえる!


「っ!」「ボウズッ?!」「勇者様っ?!」「魔物使いクン!」

…俺達が駆けつけた先に、地面に倒れている魔物使いクンがいた…!

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