ファーガ達の危機Ⅲ
ドウダンツツジさん、ご指摘ありがとうございました!
こんな感じでフォローしてみたんですけど、いかがでしょうか?
「レオーナちゃん!」
「は、はいっ!」
「任せろっ!俺がファーガ達を連れ戻してやるぜっ!」
「…あ、ああっ!
ありがとうございます、勇者様!」
「…おい…。
ボウズ、お前ぇさん、オレの言った事を聞いて無かったのかぃ…?
それとも『勇者様』と持ち上げられて、イイ気になってるのかぃ…?」
ギリークが、さっきよりも更に怒りを含んだ声色で訊ねてくる。
普段だったらチビってしまうくらいこえーが、今の俺には通用しねえ!
「はあっ?勇者?、ナニソレ?
んなモン知るかっ!
俺はそんな○トの末裔(笑)みたいな、御大層な生まれちゃうわっ!
俺んちはなあド中流階級で、俺自身といやあ県下で真ん中位の学校を卒業、成績は学年で常に中の下、彼女いない歴=年齢の、女の子と手を繋いだのは小学校の遠足しか覚えがねーヤツだっ!」
…イッキに言って、ちょっと悲しくなっちゃいましたよ。
でも思いっきりぶちまけてきて、あっけにとられたギルマスの顔を見たら腹が据わってきたぜ!
「人の苦しみを救うためぇ?はっ!なーんで俺が、赤の他人の為に命張らねーといけねーんだよ!」
「…じゃあ、何で今回は助けるんだい?
パイログリフォンって、君にとっては容易い相手なの?」
エザクのにーちゃんが面白そうに訊いてくる。
「それに赤の他人っていうけどさあ、このパーミルの街に知り合いはいないの?
その人達に、危害が及ぶかもしんないんだよ?」
―エザクに言われるまでもない。
この街にいる大切なマーシャちゃんやジオールおばさんを筆頭に、セレアル姫や公爵といったお城の人達、キシェントさんやシュリーさんのご近所さん達、はてはギルドの人々までの顔が浮かんでくる…。
みんなが、"パイログリフォン"に襲われる。
ギルマスに指摘され、恐れいたのはそこだった。
最初、俺は何とか"パイログリフォン"の目を掠めて、ファーガ達を救い出す方法ばかりを考えていた。
戦うにはあまりにリスキーな敵のようだし、イベントにしてもファーガ達を救出出来ればとりあえず成功なのだ。
しかし今の俺の考えは違う。
―"パイログリフォン"を倒す。
イベントの上位者報酬や、"パイログリフォン"のカードが欲しいためじゃあ無い(もちろん手に入ったら嬉しいケドね!)。
ファーガ達を救い、尚且つマーシャちゃん達パーミルの人達に危険が及ばないようにするには、"パイログリフォン"を倒すべきだ。
"パイログリフォン"は、もしかしてパーミルを襲わないかもしれない。
しかしもし襲ってきた場合、しかも街の上空、地上のカードモンスターの攻撃が届かない高高度からのブレス攻撃をされたら…。
俺のカードモンスターの中で、空中戦が出来るやつは現状そう多くない。
エースチームの全力戦でも勝てるかどうかあやしいのに、さらに戦えるやつが限られてしまえば、これはもう絶望的と言ってもいい。
ちょうど"アーミーアント"の巣を攻略したときと、立場が逆になってしまったようなモンで、いいように攻撃を受けてしまうだろう。
ならばまだ空間が限定されているだろう洞窟内の方が、マシな戦いが出来るはずだ!
「はっきり言って、今の俺ではかなりヤバい相手だと思う…。」
「ならお前ぇ!―「だけど必ず俺が倒すっっ!!」
ギルマスが言う言葉に負けないように、半ば叫ぶように俺は言い切る。
言葉にすることで、俺も最後の踏ん切りがついた!
今回はなりふり構ってられねえ、俺も前に出て戦ってやる!
少なくとも俺の防御値なら、いい壁役にはなるはずだ!
「…お前ぇサン、本気か?
今回はお前ぇサンでも、ヤバいんだろぅ?
死んじまうかもしれねぇのは、解ってるのかぃ?」
ギリークが今度は諭すように言ってくる。
『死ぬ』という言葉に、横にいるミールがハッとした顔で俺を見つめるが、それに対してなるべく平静な笑顔をつくって返してやる。
―あんまり旨く笑顔が出来なかったようだ。
ミールは何か決意を込めたふうに正面を向いて、ひとり小さく頷く。
…あああ、こりゃ絶対何を言っても付いてくるだろうなあ…。
「死ぬ気なんか、これっっぽっちもないし!
ちょっとでも気を抜けばヤバい相手ってことで、勝算は充分あるし!」
ギルマスに向かって話すが、これは少しでもミールが安心出来るために言葉に出して言う。
「なあ、確かにお前ぇサンはこの街じゃあ、単に戦闘力なら最強だろうよぉ。
けどお前ぇサンが手に負えねぇ魔物は、この世にゴマンといるんだ。
少し待てば、討伐の面子が揃うんだ。
それからなら、街の人間に危害が及ぶ可能性は無くなるんだぜぇ?」
「けどそれを待ってたら、ファーガ達がほぼ間違いなく死んでしまうだろ!」
「だから何で、そこまで一介の冒険者に拘るんでぇっ?!」
「んなモン、決まってるだろっ!」
そこで息を大きく吸い込む。
「獣っ娘美少女の為に決まってんだろうがっっ!!」
店の中が一瞬、静まりかえった。
「「「……………は?」」」
見事に店内の人達がハモる。
「…えーと、君、その冒険者達を救いたいんだ…よね?」
「もちろんだっ!」
「その話で、この娘がなんで一番にでてくんの?」
エザクはどうやら、理解が出来ないようだ。
俺にとっては世界の真理の如く、当然の事だと思うのだが…、仕方がない、そんなヤツにはこの格言を伝えてやろう。
「獣っ娘美少女の涙は、全てに優先されるのだっ!!」
エザクはそれを聞いて『ええー』ってな顔をする。
「いや、君、確かにこのコは、ビースト族の中でもかなり可愛い方だと思うよ?」
―うむ、一般的ヒューマンから見ても、そう思うだろうな!
「でも、このコ、その冒険者の中に、恋人いるみたいだよ?
イイカッコしても、惚れられる事は無いと思うよ?」
「はあっ?
そんな見返りなんか考えてねーわ!
俺は獣っ娘美少女の涙を見たくないだけだっ!」
エザクが再び『えええー』ってな顔をする。
「ククク…、フハッ!ガハハハハッ!
あー!もう我慢できねぇ!」
急にギリークが含み笑いをしたと思ったら、腹を抱えながら大笑いをし始めた。
「クハハハッ!
なんなんでぇ!お前ぇサンはよおっ!
若造のクセにとんでもねぇ力を持ってるヤツと思いきや、フハッ!娘っコの涙の為だけに無償で命賭けるたぁ、さすがにバカ過ぎて俺様の予想外よぉっ!ウハハハッ!」
「なんか色々失敬じゃねっ?!」
ギルマスのギリークは、一頻り目尻に涙を浮かべまでして大笑いをしたあと、ひざをパシンッ!とひとつ叩いた。
「よぉし!俺様もそのバカの話に乗らさせて貰おうかぃ!
お前ぇサン、ギルドにお前ぇ個人で救出依頼を出しなあっ!
ギルドへの依頼は悪事に関わらねぇ限り、基本全て受理される。
それでお前ぇサンがする事は、体裁がたつからよぉっ!」
「おおっ!なるほど!」
それからギルマスは、そのコワモテの虎頭を俺に近付ける。
「で、どうでえ?
俺様を雇う気はねぇかい?」




