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クッティルトのお店Ⅳ

まさかのこの店の話で、四話までいってしまいました。

どーしてこうなった…。

すみませんが、あと一話続きます。

「へえ、美味しそう!」

メリルさん達がカートに載せてきたのは、お茶とお菓子だった。


こっちの世界で『お茶』というと、一般的には麦茶みたいな味と色をしたものが出される。

しかし今ティーカップに注がれたのは薄黄緑をしていて、ホント、日本茶の緑茶にそっくりだ。


「ご主人様は、リファーレンのお茶はお飲みになった事はありますの?」

「へえ、これエルフの国のお茶なんだ…。」


ティーカップに緑茶が注がれているのに、ビミョーに違和感があるが、…うーん、香りもよく似ているよな。

さっそく一口含んでみるが、全く緑茶だった!


「まあご主人様、お砂糖も入れずにお飲みになって!」

リアナールちゃんが驚くが、いやいや!緑茶に砂糖は入れたらアカンやろ!


まあそこんとこは置いておいて、お菓子の方だ。


パーミルに来て、屋台やお店、またはパーミル城で幾つかのお菓子を食べたが、こっちのお菓子はクレープみたいなのや、菓子パンをずっと甘くしたようなものがほとんどだった。

あとはデザートと言えば、季節の果物が主流である。


だがカートに載っているのは、これはもう『ケ

ーキ』だよね?


数種類の小ぶりのホールケーキが、カートに色とりどりにならんでいる。

見た目は地球のケーキに遜色のない位、よく出来ている。


「当店自慢のデザートですニャ!

ウチは菓子職人のレオーナが、ちゃんとお店で作ってるんですニャ!」

シーリちゃんの示す先には、先程メリルさんと一緒に出てきた女の子がいた。


狼系のビースト族の女の子で、茶色のセミロングの髪に色白で小柄な少女だ。

なんとなく儚げな雰囲気がある獣っ娘美少女である。

因みに彼女はメイド衣装は着ておらず、たぶん菓子職人の衣装なのだろう、作業着っぽいものにシンプルなエプロンを着けている。


―ん?…なんだろ?

なんか引っ掛かるモンがあるんだが…。

…うーむ、何が理由なのか解らねー。


当のレオーナちゃんはバウリンの前にカートを持って行って、彼と何か話をしている。

バウリンは俺が見たことの無いような笑顔で、レオーナちゃんに話し掛けている。

―まさか彼女が、バウリンのお目当てのヒト?

…いやいや!それはないやろー!


おれがあんまりバウリン達をガン見してしまったせいで、バウリンにも俺の視線に気付いてしまったようだ。

彼はレオーナちゃんと嬉しそうに話をしていた事を見つかったのが恥ずかしかったのか、とたんにブスッとした顔になる。

「…なんじゃ。ワシの顔に何か付いとるか?」


「いやー、あんたのそんな嬉しそうな顔を、初めて見たモンで…。」

直球で訊いてみました!


「フン、ワシはここの菓子が目当てで来とるんじゃ。

この娘の作る菓子は絶品じゃからの!」

「…そんな私なんてまだまだで…。

でもいつもご贔屓にして頂いて、ありがとうございます…。」

レオーナちゃんが謙遜しつつ礼を言う。

でもすこし嬉しそうだ。

「何を言うか!

エルフの菓子を少し見て味わっただけで、ここまで自分のモノにしてしまうとは、素晴らしい才能じゃぞ?」


―へえ、それは凄いと思う。

お菓子作りって、用量やら手順とかがきっちり判ってないと、上手く作れないんだよね。

だからレシピも無く、それどころかケーキをちょっとしか食べた事がないのに、これほどのを作っちゃうって本当に凄いことなはずだ。


「おお!オヌシ、それが解るかっ!

そうなんじゃ、なにせこの表面の艶をだすのなぞ、自分で考えついたと言うではないか!

いや、ワシも今までー」

バウリンは俺が賛同の事を話すと、火がついたように喋りこんできた。

この技法がどうだの、甘味料にこれを使っているだの、俺はただうんうん頷くしかない勢いだ。


―まあ、これで判った事がある。

バウリンはまさかの、スイーツ男子(ドワーフ)だったのだっ!(ドドーン!)


バウリンは一通り喋り尽くすと、やっと自分がまくし立てて喋っていたのに気づいたようだ。

少し恥ずかしそうに、最後はモゴモゴと言葉が尻すぼみになる。

「…じゃ、じゃから、本来ならこんな酒場の酔客相手なんぞに出すモンではなく、もう立派に店を出してもおかしくない技量があるんじゃ、お前さんはの。」

「そんな…。」


バウリンの話によれば、彼女は数ヵ月前に菓子職人を目指してパーミルにやってきたのだが、生憎、パーミルではこの様な菓子を作れる職人が居なかった。

実際、パーミル城にいた時も、これほどのものは出てこなかったしな。

…どうやらパーミルではお菓子については、地位が低くあまり発展していないようだ。


で、レオーナちゃんとしては誰かの弟子について修業するつもりだったのだが、パーミルではそういった人物はいなかった。

そういう人を探すには、五央国の方まで行かないとダメなんだそうだ。


五央国まで行くための路銀もなく、困っていたところをこのお店のオーナーとふとした事から出会い、勤め始めたという訳だ。

オーナーも懐の大きいひとらしく、レオーナちゃんがお菓子を開発するのに、リファーレンからケーキを取り寄せて食べさしたりして、随分援助をしたようだ。


レオーナちゃんも、この店で修業がてら資金を貯めてパーミルで店を出すか、貯めた資金で五央国へ行って弟子入り(弟子になるにもお金がいるらしい)をするか、今は貯まってから考えるつもりでいるらしい。


「ご主人様、お話しばっかりしてないで、レオーナのお菓子を食べてみてニャ。

お味もきっとお気に召されるはずニャ!」

シーリちゃんがホールケーキのひとつを切り分け、お皿に乗せてきた。

見た目は、チーズケーキにクリームがのっているようなやつだ。


「はい、あーんニャ。」

―なっ!なんだとうっ!

ま、まさか伝説の『あーん』なのかっ!!

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