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パーミルのお礼

「さあ!こちらが貴方にお渡しする、"プレゼント"ですわっ!」


「…………は?」


…とりあえず今の面子を説明しよう。

俺、ミール、キエラさん、マーシャちゃん、ジオールおばさんの一団に、ここまで俺達を馬車で連れてきたセレアル姫とその護衛に付いてきたジョシュアさん、イスファーラさん、それに姫様のボッチャン騎士団から5名である。


次に場所だが、パーミル城から西に馬車で少し走った閑静なエリアである。

ジョシュアさんによると、この辺りは貴族のお屋敷や上級騎士、高級商人や神官が住まう、セレブエリアなんだそうだ。


周りを見渡しても、玄関から建物まで歩いて行ったら、ぜってー疲れるわーってお屋敷ばかりだ。

なにここ?ハリウッド?


そして姫様が手で指し示して、フンスって胸をはっている前方にも、周りよりかは少々小さいが、庶民レベルから見たら笑っちゃうようなお屋敷がある。

少なくとも俺んちが10個は入っちゃうよ?


「…えーと、意味がよく解らんのだけど…?」

俺だけでなく、ミール達も頭に『?』マークを何本も立てている顔をしている。

「もう!で・す・か・ら!

この屋敷を貴方に進呈すると、叔父様は仰っておられるのですわっ!」


「……」

「………」

「「「…はあああああっ?!」」」

俺、ミール、ジオールおばさんが見事にハモる。


俺達が、すっとんきょうな声をあげたのに、ドリル姫は気を良くする。

…おそらくこのサプライズで、俺達がこんな風に驚くのを期待していたんだろう。


「ウフフ!如何ですか?

貴方の新居として、恥ずかしくないものをご用意したつもりですわ!」

建物は石組みとレンガで出来た三階建ての洋館風で、殺人事件のドラマなんかでいかにも使われそうだ。

ツタが壁面の一部を覆っている。

…うっわ、建物の横には池まであるよ、アレだけで俺んちの敷地ぐらいはあるわ。


―事の起こりまで戻って言うと、昨日呼ばれたのでパーミル城に向かうと、待ってましたとばかりにセレアル姫達に拉致られ、馬車に放り込まれるやここまで連れてこらされたのだ。


もちろん車内でも一切の説明は無く、『着いてから説明致しますわ!』とすました顔で言われた。

で、着いて進呈すると言われたのが、このお屋敷という訳だ。


―いや、お礼に頂けるものもあの公爵だから、『この宝物庫から好きなモノを持って行きなさい。』だとか、某国民的RPGのように『城にある宝箱は全部開けてよいぞよ。』なんぞと言われるかもしれんと身構えていたのだが…、お屋敷ひとつ丸々とは、予想のはるか斜め上をいってます!


「…では中の方をご説明致しますわ。」

「ちょーとまてい!」

「なんですの?」

「いや、こんなデッカイお屋敷いらねーし。なあ?」

ミールもフンフン頷いている。

いや実際考えてみれば、住むところをくれるのは凄く助かる事だ。

ずっと宿屋暮しというのも考えもんだし、いずれは借家みたいなのを考えてはいたのだ。


…しかしこのお屋敷はねーわ(笑)。

うん、もし俺のかーちゃんが知ったら、間違いなく卍固めから流れるようにバックドロップをキメられるだろう。


「なぜですのっ?!

あ、もしかしてこの屋敷では小さいというお考えで?

たしかに(わたくし)も少々手狭かとは思いましたが…。」

「いやいや、逆、逆だって!」

つか、これで手狭なのかいっ!

さすがお姫様だね!


「お気持ちは凄く嬉しいのですけど、こんなにおっきなお屋敷頂けないニャ。」

「そうそう。それに俺達だけで維持するのは大変だよ、これ。」

そーいや、こっちでは固定資産税とか色々な税金って、どーなってるんだろ?

あるならコレ、税金だけでもスゲー事になるんじゃね?


「維持ですか…?

そのような事は、使用人に任せればよいではないですか?

…ああ!その者達を雇う費用も、もちろんわたくし達が負担致しますわ。」

…立場からいったら、俺達が使用人になる方だろうが。

つーか使用人て、アレか?

パーミル城にいた侍女さんとか執事さんとかいう世界か?

んな人達がいたら、恐縮して住み心地悪いわ、根っからの庶民をなめんな!


―それにしても、よくこんなお屋敷が空いていたな…。

もしかして俺達を住まわすために、誰かを強制的に退去とかさせてねーだろうな?

そんな事だったら、なおさら気まずくて受け取れない!


その辺のトコを姫様に訊いてみると、その答えはやや意外な、というか俺自身忘れていた人間の名前が出てきた。


その名前とはあのアンドゥとかいう、俺を陥れようとしていたおっさんであった。

あの"無貌"との戦いなんかですっかり忘れていたが、事の起こりはあのおっさんが俺に難癖をつけて、それで五柱もの"御使い"達が降臨してきた事が始まりだった。


あの件で誰がみてもおっさんが怪しいとなり、おっさんは厳しい取り調べを受ける事となった。

その結果、彼の不正がまあ出るわ出るわで、最後にはパーミル転覆の一端を担っていた事まで判った。


このパーミル転覆についてはまだ調査中らしく、そうとう根が深いようである。


まあそんな事だから、当然バンドゥは本国の五央国にに送られ、更なる取り調べを受ける事となり、彼の不正に蓄えられた財産は全てパーミルが没収した。


それで没収した財産の中には、おっさんの屋敷なんかも含まれていた訳で…、つまり今目の前にある豪邸は、バンドゥのものだった不動産のひとつという訳なのだ。


「…という訳ですので、貴方が気にされる事は何もありませんわ。

というより、あれだけ貴方を陥れようとしたのですから、これ位は受け取って当然の事ですわ!」

「いやいや、もらい過ぎだって…。」

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