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【ミール】召喚Ⅲ

「ぬおぉぉぉっ!」

"無貌"がここまで聞こえる叫びをあげる。

が、ヤツ自身は全く動けない。

しかしヤツの不思議すぎるローブの模様が、七色の光を発し始めた!

そこへ光の矢が直撃した!


―ドバァッ!

矢が爆発して、土煙が上がる。

「チィ!ローブに何か仕込んでたわね…。」

土煙が晴れると、"無貌"がまだ立っている姿がみえた。

ただヤツのローブから、あのヘンテコな模様が消え失せ、ただの濃緑色なローブになっている。


"無貌"がフリードのヤツに何か命じている。

フリードは"無貌"の前に立って、更にその前に自分の召喚した"スケルトン"達を密集して立たせ始めた。

そして"無貌"自身は、その後ろで何かをしている。


ミールさん(仮)が、文字通りの矢継ぎ早に矢を放っていく!

彼女の連射に、次々と"スケルトン"が爆ぜていく。

「ああもうっ!

ヤッパリ貫通属性の方も習得すべきだったニャー!

《アローレイン》は、この距離じゃあ命中率わるいし!」


…残すところあと数体となった時、その異変は起きた。

ヤツらの近くに倒れていた、冒険者さん達や同じく邪魔扱いされて殺された戦士達の遺体から、【ケイオスサークル】の嵐と同じ色をした、気色の悪いオーラが立ち昇る。

―オオオオォォォ


…地獄の底から、という表現が最も正しいだろう。

聞いているだけで心が寒くなるような声が、"彼ら"から発せられた。

―そう今まで死体だったのが、ゆっくりと立ち上がり始めた"彼ら"からだ。


―【クリエイトゾンビ】か?

最初はそう思った。

フリードのような"ネクロマンサー"が使う魔法の中でも、高位の者しか扱えない魔法だ。

死体をゾンビ化させ、意のままに操る魔法である。


俺は"彼ら"のカーソル名を見て、愕然とする。

アンガス Lv 17

(レンジャー/ヒューマン/男/土属性)


それはあの飯を作ってくれていた、おっちゃんのカーソル名だった!

「…生き返った?!」

―いやいや!

他の人達もキャラクター名のカーソルだが、首が変な方向に向いたままの人もいる。

あんな状態で、生きてるはずがない!

おっちゃんの傷だって、一発で致命傷と判るもののままだし!

"ゾンビ"になってるなら、カーソル名は"ゾンビ"だろ!


何だよこれはっ!

俺は言い様のない、押し潰されるような不安を感じた。

何か絶対的に相容れないモノを、無理矢理見せられている気分だっ…!


「…その神兵に追われたら敵わんからのぅ…。

置き土産を渡しておくぞぃ…。

…ではまたのぅ…。」

くっ!まただ!

500mは離れているというのに、目の前で喋られているみたいだ。

何かの魔法なのか?


"無貌"はフリードの後ろ襟を掴むと、岩の影に二人して沈みこんでいく。

そして何かを放り投げたような仕草を最後に、完全に影の中に消えてしまった。


「ちぃ!逃がしちまったか!

このねーちゃんがいれば、勝てると思ったんだかな。」

"ブラックナイト"をあらかた倒して、手が空いたジェファーソンのオッサンがこちらにきた。

"ブラックナイト"はあと3体まで倒して、皆で絶賛タコ殴り中だ。

ただ30体を越える"ブラックナイト"と戦ったため、みなかなりの傷を負っている。


俺はもう一度【アイテム】キーから【スキルポーション】を取りだし、【ヒールオール】の準備をする。


「で、あとはあのゾンビか…。

くそっ!胸くそ悪い!」

元々仲間だった人達に剣を振るわないといけないのだ、オッサンが不機嫌になるのは当たり前だ。

俺だって、めちゃめちゃムカついている。

…だがアレのカーソル名が、"ゾンビ"になっていないのが気になる。


「む?なんか、おかしくねえかっ?」

オッサンに言われて気付く。

あの"ゾンビもどき"が、磁石に引っ張られる鉄のように、一ヶ所に見えない力で引きずられている!


「…おいおい…何なんだ…?」

"ゾンビもどき"が一ヶ所に集まると、まるで見えない巨大な手があって、それによって握り潰されていくように見えた。

距離がかなり離れているので細かな所まで見えないのが救いだが、スプラッターな光景にまともに凝視出来ない。


―ズズズズズズッ!


「…地面がっ?!」

―もはや肉の塊となったモノに、【ケイオスサークル】で変質化した地面が吸い込まれていく!


―ズズズズズズッ!


微かな揺れと共にぐんぐんとソレは変質化した部分を喰らい、みるみる巨大化していく…。


「っ!」

"ソレ"を見て更に驚く。

"ソレ"におっちゃん達のカーソルが重なるように、まだ存在している!

あの中でおっちゃん達は生きているというのかっ?!


「…アーザンズスポーン…。」

「…あっ!」

ミールさん(仮)が呟いた言葉で、全て解った。

と同時に、全ての変質化した部分を吸収し終わり、"ソレ"に新たなカーソル名が出現した。


アーザンズスポーン HR Lv???

(???族/―属性/cost ???)

AT:???/???

DT:???/???

スキル:【???】【???】


そしてカーソルと同時に、その上に緑色のバーが一本あらわれた…。


【アーザンズスポーン】とは意訳をすれば、『アーザンの落とし子』と訳すればいいだろうか。

"アルカナバースト!"のイベント『アーザン復活』において、レイドボスとしてイベントの中~終盤に度々現れたモンスターだ。


"アルカナバースト!"というゲームにおいて"レイドボス"とは、イベントの移動中に不定期にプレイヤーの前に立ち塞がる中ボスのようなモノである。

『ボス』とあるように、通常の出現モンスターとは桁違いの強さをもち、力を出し惜しみしていて勝てる相手ではない。


大抵の場合は、攻撃にアドバンテージが付く"特攻モンスター"がイベント中に手に入り、それらをイベント中にどれだけ育てられるかが、イベント攻略でも重要なカギとなるのだ。


またレイドボスは倒す度にレベルが上がって強敵になってゆき、終盤の方では自分だけでは倒せなくなるプレイヤーがほとんどとなる。

そのため、【フレンド】やイベント限定で協力登録をした他のプレイヤー達からの援護攻撃が、非常に重要になってくるのだ。


―少し話が逸れてしまった。

【アーザンズスポーン】についてに戻ろう。

こいつの説明は、【図鑑】にあるカードの説明文をそのまま引用しよう。

『―復活を目論む"混沌神アーザン"が、より生け贄を多く集めるために己の一部を核とし、生け贄の魂を動力として産み出した化け物。

動力として使われた魂は、死しても冥界に下る事も出来ず、魂を喰われ続ける―』


見た目は一言で言い表す事が出来る。

ズバリ"肉と内臓で出来た小山"だ。

大きさは、二階建ての一軒家くらいはあるだろう。

そんな巨大な肉の塊が、スライムのように蠢いてこっちに向かって来ている!


―オオオオォォォォ!!

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