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アンサーの力

「ああもう!」

俺は素早くスキルキーから【ヒールオール】を選択する。

―なんとか効いてくれ!

祈るような気持ちと共に、俺とカードモンスター達が緑色のオーラに包まれる。

自分のステータスを見ると、グングン防御値が回復してゆく。

つーか俺の防御値、半分以上削られてた!

同時に、右足に感覚が戻ってきた!

急いでズボンを捲りあげ、確認する。

―よっしゃぁ!ヤツの魔法による状態異常も治せるぞ!

見るとカードモンスター達も完全回復だ。


…だがこれで【パーフェクトガード】は更にもう1ターン待ちになってしまうだろう。

この【パーフェクトガード】は、この世界ではかなり厳格な時間規制を受けるスキルのようだ。


「…ほぉう!

…儂の《ケイオスサークル》の状態異常を、…一度に治すかの!

益々、興味深いのぅ…。」

ダイト大神官さんの【ホーリーストーム】で、"ブラックナイト"達は大ダメージを受けているのに、そっちの方は無視か…。

それどころか、ジェファーソンのオッサンを先頭に丘を駆け降りこっちにに向かって来る一向の事など、全くいない者の様に扱っている。


まあ軽視するならするで、その代償を払わせてやる!

【ホーリーストーム】で大ダメージを受けた"ブラックナイト"に対して、カードモンスター達に攻撃の指示を出すと、俺自身は"無貌"に殴りかかろうとする。


「…どうやら、…聞く耳を持っとらんようじゃのぅ…。

愚かしいことじゃて…。」

俺がやる気満々なのを見て、"無貌"は1つ小さなため息をつく。

そして俺に向かって、手をかざしてきた。

―何かする気だ!


しかしそれ以上の事にはならなかった。

突然、俺や"無貌"を中心とする数10mの範囲で、強烈な氷雪の嵐が発生したのだ。

ネスフさんの【ブリザードⅠ】だ!

鋭いナイフみたいな氷の粒が吹き荒れる。


―しかし不思議に俺やカードモンスター達には、ダメージどころか寒さすら感じない。

さすが魔法だ!

氷の嵐が過ぎ去ると、【ブリザードⅠ】の効果範囲にいた、四体の"ブラックナイト"が消滅していた。


…だが"無貌"には、全くダメージがいってるように見えない。

ヤツはローブの袖に付いた氷の粒を払い落とすと、初めてネスフさんの方に向き直った。

「…煩い小蝿じゃのぅ…。」

ネスフさんに向かって、再びあの指揮者のタクトの様に指先を振るい始めた。

【ケイオスサークル】を使う気だ!


「させるかぁぁっ!」

叫びながら、"無貌"にタックルを敢行する!

「ほっ!

…お主は後じゃ…。」

"無貌"は予想外に素早い!

俺のタックルをするりとかわしてしまった。

「ぐっ!まだだっ!」

かわされよろめくが、直ぐ様体勢を直し、今度はしっかりとヤツを見据えて、再び組み付こうとする。


「…ほほっ!

体術は全くなっとらんのぅ…。」

"無貌"は驚いた事に、再び簡単に俺のタックルをかわしてそのまま俺に足払いをかけてきた。

「ぐおっ?」

俺は無様に倒れてしまう。


「…しばらく待っとれ…。」

俯せに倒れた俺を、足で抑えつけてくる。

―全く立ち上がれない?!

あんなにヒョロっとしたヤツの、何処にこんな力があるんだっ?

"無貌"の足元でジタバタ暴れるが、巧みに抑えられ、ぜんぜん起き上がる事すら出来ない。

フリードといい、コイツら魔法職の筈なのに、なんでこんなに近接戦闘に強いんだ?


顔だけ上を向けると、"無貌"はネスフさんにまた指を振り始めるのが見えた。

ネスフさん達との距離は、まだ50m以上ある。

「逃げろぉぉっ!」

叫ぶが、彼らは聞こえて無いのか、そのまま突っ込んで来る。

―駄目だ、間に合わねぇ!


絶望しかけたその時、俺の視界にある戦闘画面―その中で、倒されてしまって空欄になっている"ファイアリザート"がいたの欄の上部に、綺麗な模様で囲まれた《C》のマークを見つけた!


「っ!」

考えてるヒマは無い!

ほとんど条件反射でその《C》の部分を押す。

ゲーム時代で見馴れた一覧が開く。

当時は多数の名前が連なっていたが、今はたった一名の名前だけだ。


チラッと上を見ると、"無貌"の指先から光の粒のエフェクトが出始めている!


名前の所をタッチする代わりに叫ぶ!

「キャラクターカード【ミール】!!」


―コォォォ!


俺の前面、すなわち"無貌"にとってもすぐ目の前に、カードモンスターの召喚時とは異なる模様の魔法陣が、回転しながら光の粒子を噴き上げる。

「…ぬぅ…?

また何を喚ぶ気じゃ…?」

"無貌"は警戒して、【ケイオスサークル】のモーションを一時中断する。


―ヴォッ!

―ドガァッ!

「ぐおぉぉっ?!」


光の魔法陣から何かが飛び出て、俺を押さえつけていたのがいきなり無くなる。


「よくも足蹴にしてくれたわね!」


どこか聞いたことがあるような声が、俺の頭上から聞こえてくる。

押さえつけていたものが無くなり、上を見上げる。


「おおおぉぉっ!」

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