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尋問Ⅲ

「ちょっと待てよっ!

なんでミール達まで、調べる必要があるんだ?!

彼女らは被害者だろっ?」

バンドゥは俺が叫んだ事が意外だったのか、驚いた顔をしたあと、実にイヤらしくニタリと笑った。


「何を言うか!

お前と行動を共にするとなった、とあれば共謀していた事も考えられる!

…いや、そのビースト族の村の存在自体すらあやしい!

護衛に雇う形で冒険者達を誘いだし、賊共に引き渡していた可能性すらありえる!」


―無茶苦茶だっ!

ちゅーか、すでに呼び名も『君』から『お前』になって、完全に犯罪者扱いの目線から見ているし!


…それにしても、くそっ!

俺ひとりの事なら、最悪、パーミルからトンズラかまして、またどこか遠くでやり直せばいいと思っていた。

まあお尋ね者の生活も、ちょっとスリリングかなーと甘い考えだった。


しかしミールやマーシャちゃん、ジオールおばさん達まで類が及ぶとなると話しは別だ。


バンドゥの言う"取り調べ"なるものが、どんなものなのかは判らないが、最初から疑ってかかっているのだから、生易しいモノとは考え難い。

色々と今まで辛い目にあってきたというのに、これ以上ミール達にそんな目にあわせてたまるか!


俺が何とかこの窮地を脱するために頭を悩ませている所に、バンドゥから意外な提案がなされた。

「…ただ、そのような手間のかかる事をせずとも、この場ですぐ判る方法がある…。」

「?」

「なに、簡単な事だよ。

まえにお前が降臨させたというウルティナの従属神を、再びこの場に呼び出せばよいだけだ。」

「っ!」

「「「おおっ!」」」


周囲から歓声なのか驚きなのか、どよめきがあがる。

…そういえばセレアル姫さんが、俺をパーミルに引き留めて置きたい本当の理由が、神様達と繋がりを持ちたいとか言ってたな。


確かにアルキエラさんがまたこの場に降臨してもらえば、一発で皆の信用を取り戻せる事は間違いない。

…でも地上の事柄には関与しないとか何とか、言ってなかったっけ?


それと目の前にいる、バンドゥだ。

もしアルキエラさんに来てもらう事ができたら、ヤツにとってはかなり好ましく無い状況になるはずだ。

しかしヤツは端から無理だと言わんばかりに、ニヤニヤとした顔をしている。

…何だか絶対に降臨出来ないのが、判っているのだろうか?


「どうだね?

報告ではお前は神々に、随分目をかけてもらっているようじゃないか。」

「……」

パーミル公爵様を含めて家臣団の面々は、何かを期待するような顔つきだ。

ジョシュアさんとネスフさんは、俺と同じ事を考えているのだろうか、何となく不安そうな表情だ。

…たぶん俺も似たような顔をしているんだろう。


「…分かりました。

話を聞いてもらえるかわかりませんが、連絡をとってみます。」

「「「おおっ…」」」

周囲の反応とは異なり、バンドゥのニヤニヤ笑いは消えない。


―【フレンド会話】をする前に、ジョシュアさんからの提案で、パーミルの大神官さんに立ち会ってもらう事になった。

アルキエラさんに降臨してもらえたとしても、バンドゥが『あれは邪神だ。幻だ』と言わさないためだ。


大神官さんを急遽ジョシュアさんが呼びに行っている間に、ネスフさんが俺に近づいてきた。

どうやらバンドゥは、エルフの国リファーレンとパーミルが近づくのが気に入らないらしく、事あるごとに邪魔を入れてきていたらしい。

その度にネスフさんに噛みついてきて、かなりウザかったようだ。

そしてネスフさんは、更に俺に顔を近づけ、俺の耳元に囁いた。

「もしどうしようもなくなった場合、ミールさんやその他の方も全てリファーレンで保護いたします。

ご安心して下さい。」


…この言葉は心底ありがたかった。

お陰で随分気がらくになった。

そうこうしている内にジョシュアさんが、大神官さんをお付きの神官さん4名と共に連れて戻って帰って来た。


大神官さんが右手を上げると、パーミル公爵以外の皆が方膝をつき片手を胸にあてたのを見て、俺も慌てて真似をする。


大神官さんのステータス詳細は見えなかった(オレンジ表記になっていなくて、少しホッとした)が、レベルは49となかなかの高レベルのナイスミドルなおじさまだ。

一瞬、彼と視線が合う。

そのとき、お茶目にウィンクされたような気がしたが、すぐに公爵の方に向き直り、もう視線が合うことは無かった。


「…ではすまぬが、おぬしの身の潔白を示すためでもある。

始めて頂けるかな。」

公爵が少しバツの悪そうに、俺を促した。

俺はひとつ頷いて、【フレンド会話】から【アルキエラ】さんを選ぶ。

ウルティナ様から、二日後なら連絡が出来ると聞いているので、もう大丈夫なはずだ。


…【アルキエラ】さんのキーを押す。

―しかし聴こえてきたのは、砂嵐のようなザーザー音だけだった。


……あ、あれ?もしかして『二日後』って、二日間はダメってことなのか?

それに誰か答えてくれるわけもなく、虚しくザーザー音が聴こえる。


「どうしたかな?

やはり神との交信などとは虚言だったか?」

もちろんこのザーザー音は他者には聴こえないが、俺の顔色を見て、バンドゥがいやらしく訊いてくる。

俺が【フレンド会話】の操作をし始めてから、水を打ったように静まりかえっていた場が、再びザワつき始める。


―くそっ!ならばウルティナ様本人に連絡だ!

もちろんご本人は来れないだろうが、彼女から誰かを来てもらえるように、頼んでみよう。

…【ウルティナ】様のキーを選択する。


…「へえ、ご連絡…ザ…おきにどすぇ。

ご連絡も…ザ…た所、エライ申し訳おへんやけど、只今連絡を受け…ザ…事がでけへ…ザ…のどすぅ。

すんまへんけど、この後の"ぴぃー"い…ザ…音のあとに、めっせぇじ?を入れておく…ザ…やすぅ。

ピーー!」


…ナニコレ?

留守電?留守録なの?

…どこまで地球のをパクる気だ?

あー、そーいやそんな機能が付いてるとか言ってたなー。

それに何だか、雑音がキツいのも気になる。


「クククッ!どぉした?

そろそろ化けの皮が剥がれてきたのではないか?んんー?」

バンドゥのイヤミはもう、絶好調だ。


だが俺には、それを気にしている余裕は無い。

―俺が現在、【フレンド会話】出来るのは三名いる。

ウルティナ様とアルキエラさん、そう、そして最後にアルシェーナちゃんがいる…。

…、

…、や、やっぱり無理っぽそうですよねっー!

なんか【フレンド会話】した途端、罵倒される予感がひしひしと感じるし。


…でも、ビビっていても仕方がない。

ネスフさんから、リファーレンへの亡命?を約束してもらっているけど、それは最後の最後だ。

何とかアルシェーナちゃんに、お願いしてみないと…。

頑張れ、俺!


【フレンド会話】→【アルシェーナ】とキー操作を行う。

すると呼び出し音が、鳴るか鳴らないかという素早さで連絡が繋がった!


「いつまで待たせるつもりだったの?このグズが!

やっぱり死んだら?」

―予想通り、罵倒された!

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