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尋問Ⅱ

「確かにジョシュア殿やジェファーソン殿といった方々が、ウルティナ様の従属神のご降臨に立ち会った―と報告にはあります。」

バンドゥはその後、実に芝居がかって残念そうに首を振る。

「ですがはたして、それが本物であったのでしょうか?」


バンドゥの言葉に、意外な所から声があがった。

「なっ?!

バンドゥ殿は、ジョッシュが幻にでも騙されたとおっしゃるのっ?!」

セレアル姫が眉を怒らせて、バンドゥに噛みついた。

それに対して、バンドゥは慌てて手を上げて制する。

「いえいえっ!

ジョシュア殿の能力は、ここにいる皆が認める所です!

まずまやかし等に騙される事はありますまい…。」

「では何故…」

「ですが、相手が神であればどうでしょう?」

「?!」


「ご存知の通り、私めは元は様々な物を扱う商人でした。(←つーか、ステータスでは今も"商人"じゃん!)

そのため、各方面から今でも様々な異国の話を耳にしたり、とても古い文献を目にする事があります。

―そういった物の中で私は、邪神の類いが聖なる神を騙り、人々を魔の道に陥れた事が、過去に幾度かあったのをつきとめたのです!」


「あ、それ知ってます!

『邪神ログミードの陰謀』ですよねっ!」


……あ…。


…ま、周りの視線が痛いっ!

『今ここで、おめーが言うかぁー?』って、皆、目で語ってるぅ!


だって知てっるイベントなら、『あ、俺も知ってる知ってる!』って言いたくなるじゃん!

それがゲーマーってモンでしょうっ?

ましてや俺が転生する数週間前までやってたグランドイベントだったんだモン!

メッチャ、大変なイベントだったんだモン!

ポロっと言っちゃっても仕方ないでしょっ?


まあこのイベントは、邪神ログミードが正義の神セレアルトを騙り、二つの国家を戦争状態に陥らそうとしたものだった。

両国にいた高位の神官が、相次いで亡くなった隙を突いた陰謀だった。

最終的にはセレアルトの従属神達による、ヒーロー戦隊&ライダー大集合(笑)にボコられて消滅する。


「……ほ、ほほう…。

や、やはり君は邪神について並々ならぬ知識があるようですな。

私ですら、邪神の名前など判らなかったというのに!」

バンドゥは一瞬間をあけて立ち直り、すかさず俺の言葉尻に乗っかってきた。

―ってか、邪神の名前くらい調べてから言えっつーの!

『アルカナバースト!』ゲーマーに謝れっ!


緊張感を台無しにした俺の発言で、少し白けた雰囲気が流れる。

あ、カーソルが、オレンジ表記の人が一人減った。

うむ!結果オーライというヤツですな!


「公爵殿、ひとつ発言をお許し頂けますか?」

そんな中、手を上げて発言を求めたのは、今まで沈黙を守っていたネスフさんだった。


「おお…、ネサファーレン殿。

う、うむ。何かおありかな?」

パーミル公爵もセレアル姫(あっ!今気づいたけど彼女の名前って、あの熱血バカ神からとったのに違いない!)との勝負から話が大きく変わってしまい、オロオロしている所だったので、ネスフさんの発言はいい仕切り直しになると思ったようだ。


しかしネスフさんの発言に、その場が凍りついた!

「このバンドゥ殿の言葉によれば、私も邪神の手管にまんまと騙された事になりますね…。」

「う……」

「我が神、ラインロートレス様のお声も聞いた事があり、まがりなりにもエルフの一枝族を束ねる私が、謀られるとは。

邪神というものは、恐ろしいものですねぇ…。」

「ひぅ…。」


―いや~、やっぱ世の中には、怒らしちゃいけないヒトっているもんだ。

ネスフさん、かなりお怒りになってらっしゃいます。

もちろん品の良いエルフのこと、表面上はいつもと全く変わらない穏やかな笑みを浮かべている。

しかーし!

…おお!俺には見える!

彼の背後に立つ、牙を剥いて今にも襲いかからんとする虎のオーラがっ!


うわー、今まで数人いたオレンジのカーソルが、綺麗になくなっている。

家臣団の皆さん、全員青い顔してブルッてらっしゃいます。

「ふ、ふふふん!

エ、エエエエルフにょ特使どどのも、災難でしたなあっ!」

意外な事にバンドゥは、ガクブルして台詞も噛みながらも、ネスフさんに言葉を返してきた。

…どうやら二人は、以前から反目し合っていたようにみえる。


といっても、ネスフさんとこのおっさんでは、格が違い過ぎる。

もう虎にぷるぷる震えながらもキャンキャン吠えかかるチワワにしか見えない。

「ま、ままあ、特使殿がて、手練れと言えど、相手は邪神、仕方はありませぬなっ!

ウハハハ…ハハ…ハ…ひぅ」

ネスフさんが反論しない事にチョーシにのったバンドゥが、バカにしたように笑うが、もはや背後のオーラがドラゴンレベルに膨れあがったネスフさんに、しりすぼみになる。


「し、しかしバンドゥよ…

そちの話しは憶測ばかりではないか。

それで疑いをかけるのは、あまりにも礼を失しておるぞ!」

公爵様が俺の助け舟というより、ネスフさんの怒りを反らす為にバンドゥに話しかける。


公爵様に話しかけられ、心底ホッとした顔で公爵様に向き直る。

「公…。

私も彼を憎んで言って(いや、しっかり最初から睨んどったやん!)いる訳ではないのです。

…ですがお忘れですか?

"パーミルの災厄"は、誰も予想だにしなかった方法でやって来たのですぞ!」

「う、うむ…。」


「このパーミル城は、前のような地下からの襲撃には、絶対の防御を誇っております。

しかし!ヤツらは、次にも同じ方法で来るとは限りませぬ!

…ヤツらは一度失敗した故、もう来ないという声も耳にしますが…」

そこでネスフさんが、割り込んでくる。


「おや?確か先日の会合で、貴殿自身がそう仰ってたように覚えておりますが…」

それにモロに慌て、遮ってくるバンドゥ。

「オホン!ゲフン!

と、とにかく疑わしきは、徹底的に疑うべきと私は具申致しますっ!

―もちろん!言い出したのは、私でございます。

この者の取り調べは、私が責任をもってさせて頂きたい!」


…うっわー、なんかゴーモンとかされて、無理矢理自白させられる未来しか見えないんすケド…。

「バンドゥ殿!それではまるで彼が、最初から犯罪者のような扱いではないですかっ!

彼が無実だった時は、どうなさるおつもりかっ!

民を救った勇者を、パーミルは犯罪者扱いしたと謗りを受けますぞ!」

ジョシュアさんが、いつものクール面をかなぐり捨て、怒りも露にバンドゥにどなる。

―頑張れ、ジョシュアさん!


だがそれにバンドゥは、余裕で答える。

「もちろん、その時は私が十二分の謝罪を致しましょう!

それもパーミル公爵様が命じたのではなく、私個人が疑ってした事にすれば、パーミルの名に傷はつきますまい。」

―家臣団の方を見ると、それならいいんじゃね?という風に頷く者が多数いた。

パーミル公爵様も、ビミョーな顔をしている。


…これはもう、バックレるというか、逃げてしまおうかと思い始めていた時、バンドゥは更なるとんでもない事を言った!

「併せて、捕まっていたというビースト族の者達も、取り調べを致します。」

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