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尋問Ⅰ

おっさんの放った一言は、一同の中で劇的な変化をもたらした。

―それも悪い方にでだ。


姫様との勝負が、血生臭い真剣勝負にならなかった(俺を除く)せいもあり、今まではどちらかと言うとゆるーい雰囲気に包まれていた。

それが一変してしまっている。

お互いにヒソヒソと囁き合い、時折、睨むように俺の方を見てくる。


「嘘偽りなく、答えて頂きたい。

私の部下からの報告では、貴殿は先日、ブラックナイトを召喚したとなっている。

相違ないですかな?」


―これはヤッッベェんじゃないの?


…【ブラックナイト】を、呼び出す事が出来るのは俺だけだ。

知らぬ存ぜぬで通せば、【ブラックナイト】を呼び出せる事について、誰も証明出来ない。

しかし『召喚なんてできない』と言っても、何らかの証拠を掴んでいるような気がする。

もしそうなった時には、【ブラックナイト】について嘘をついた事になり、余計に心証が悪くなるだろう。


第一、【ブラックナイト】を呼び出せるとしても、なんら悪い事はしていない。

【ブラックナイト】を見ると、"パーミルの災厄"を思い出す人達がいると思っての対応だ。


…でも今回については…、

「ジョシュア殿の報告にも、ブラックナイトを召喚出来るとは書かれていませんでしたな…?」

…やっぱりかー。


ジョシュアさんの表情は、いつも通りのクールさを保っているように見えるが、少し青ざめているのが判る。

たぶん【ブラックナイト】について正直に報告すれば、かなりヤヤコシイ事態になるかもしれないという気遣いと、あの場にいたメンツに対する箝口令に自信があったのだろう。

そこが裏目に出た訳だ。


「どうなんですかな、ジョシュア殿?」

おっさんが嫌らしい笑みを浮かべながら、重ねて言ってくる。

このままでは、ジョシュアさんの立場が悪くなってしまう。

実際、家臣団の中には、ジョシュアさんを見る目が、かなり厳しいものに変わってきている人が何人かいる。


「あの~、ちょっといいですか?」

俺は手を上げて、皆の注目をこっちに向ける。

「【ブラックナイト】を出さないようお願いしたのは、俺なんですけど…。」

ジョシュアさんが何か言おうとするのを、目で制する。


「ほう!あなたがジョシュア殿に命じた、という訳ですかな?」

バンドゥのおっさんは、素早く目標を俺に変えた。

「命じたなんて、ただお願いしただけっすよ。」


俺は先日の、【ブラックナイト】を呼び出した時の事を説明した。

そこで"パーミルの災厄"について初めて知って、またパーミルの人達にとって【ブラックナイト】が忌避すべき存在であるのも解った。


んで、パーミルの人達の心情をふまえて(建前上は)【ブラックナイト】は封印、二度と呼び出さないとした。

そして報告には二度と呼び出さないのだから、記載は必要ないとジョシュアさんに話した―と説明した。


「ほう…、まあなかなか良く出来ておりますな!」

おっさんは、端から信じてないようだ。


「だが君は【ブラックナイト】を召喚出来る事は、否定しないのだね!」

「…はい…」

周囲の人達のざわつきが、一層強くなる。


俺は"カード使い"について、皆にもう一度説明する。

カードモンスターとして呼び出されたモンスター達は、すでに通常のモンスターとは似て非なるもので、出自が呪われた存在でもカードモンスターになった時点で、そういったものからは一切関係が無くなる。

実際、城内で邪悪な存在がどうかの検査は、魔法でしたのではないか?


こう俺が話をすると、俺に内緒(セレアル姫がばらしちゃったが)で魔法をかけた後ろめたさもあるのだろう、幾分雰囲気が和らいだ様に感じた。


「ブラックナイトは、人が邪神や悪魔に魂を売り渡し、モンスターと成り果てた存在ですぞ!

ある意味、存在自体が邪悪といえる!」

おっさんは、場が少し和らいだ事に慌てたのか、デカイ声でたたみかけて喋ってくる。

…ったく!

【ブラックナイト】を呼び出して、邪悪かどうか判定してもらおうかな…


「公爵様!もちろん『まだ』確証を掴んだわけではありませんが…」

そう言ってこのチョボヒゲのおっさんは、トンデモない事をいい始めた!


―それはあのフリードの一味と俺が仲間で、しかも"パーミルの災厄"の一味でもある、という事だった!


「ちょっとぉ!何を根拠に言ってんのっ?」

「―まず姫様も仰っておられた様に、あの広大な森の中から偶然にもアジトを発見出来るなど、ありえないっ!

…それに"パーミルの災厄"で出来たあのトンネルです!

アレは確かに巨大なものではあるが、出現してきた軍団の規模からみれば些か小さいのです。―それも今まで謎であった。

だがこれも、この者の存在で納得がいく!

この様な者が幾人かいれば、それこそ穴を出た所で召喚すればいいのですからなっ!」


「うむ…確かにそれなら合点がいく」「いやしかし、出現した軍団にあの様な者はいなかったはず…」「それなどブラックナイトと同じ鎧を着てしまえば…」


「いやいや!確か死霊族のボスクラスモンスターに、【黒騎士召喚】ってスペシャルスキルを持ってるヤツがいたはずだ!」

「ほほうっ!

そのような魔法があるのかねっ!私達は知らなかったよ。

…ずいぶん君は、邪悪なモノに詳しいようだなっ!」

「っ!」

―ざわわっ!


おっさんは鬼の首を獲ってきたように、得意気だ。

場の雰囲気は更に悪くなり、断然アウェー感が支配する。

しかも先程から3~4人のカーソルが、警戒色のオレンジになって点いたり、消えたりし始めている。


その雰囲気を打ち破るべく、ジョシュアさんが切り札を出してきた!

「皆さん、少し待って頂きたい!

お忘れですか?彼は獣神ウルティナ様の加護を頂いているのですよっ?!」


だがバンドゥ(もう呼び捨てでいいよね!)は、それを狙っていたかのようにニマリと笑い、ジョシュアさんの言葉に反論してきた!

「それです!それについても、ひとつ興味深い事をお伝えしたい!」

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