姫様と勝負Ⅵ
まずは【パーフェクトガード】を再び発動!
俺を中心に、全員で姫様達に向かって猛ダッシュ!
ダッシュ中に、身体が薄い紫色に染まる。
戦闘は一度終了してから、もう一度始まった事になっているので、俺のスキルポイントは満タンまで戻っている。
この調子なら、まだまだイケルぜ!
前の方では、姫様が俺達を迎え討とうとするのを、ダークエルフさんが押し留めている。
姫様に何か言ってるようだが、内容まではここまで聞こえない。
だがダークエルフさんの言葉を聞き入れ、姫様はその場に留まりじっと俺を睨んでいる。
姫様が留まったのを見届けたダークエルフさんは、右手を姫様の方にかざして再び祈るような仕草をした。
とたんに姫様の細長く鋭い剣が、炎を纏った!
【炎の剣】かよっ!
【炎の剣】は、【炎の矢】と並ぶ【火精霊魔法/初級】の精霊魔法だ。
効果は、対象の攻撃力を1.2倍に上昇させるエンチャント(付与)魔法だ。
セレアル=レスーレア・カルク・パーミル Lv 13
AT: 1.764/1.470(+1.750)
DT: 2.590/2.590(+2.500)
…うわー、装備で底上げして、まだ上げるかー?
だがそれだけではなかった!
四匹の"ファイアリザート"の身体からも炎が揺らめき立つ!
―ちょっ!
自分自身に【炎の剣】を付与したっ?
ファイアリザート HN Lv 5
AT: 2.424/2.020
DT: 1.570/1.570
そして攻撃力が上がった四匹の"ファイアリザート"は、姫様を中心に左右二匹づつ扇状に拡がる。
ちょうど俺から見て、カタカナの『ハ』の字になるような布陣だ。
もちろん一番奥には、姫様とダークエルフさんが構えている。
…なるほどー、"フェンサースプライト"の【サンダーⅠ】対策か…。
これではギリギリ二体しか、攻撃範囲に入らない。
そこまで配置を完了した所で、俺も姫様の布陣の前まで到着する。
【パーフェクトガード】はまだ数分は続くだろう。
俺もカードモンスター達を二手に分けて、"ファイアリザート"に対峙させる。
で、俺自身はズンズンと姫様達に向かって前進を再開した。
姫様は一瞬向かって来ようと身を乗り出すが、斜め前にいるダークエルフさんに止められる。(ちっ!)
彼女達からあと3m近くまで来て、足を止める。
「あら、どうなされたのかしら?
どうぞかかって来られて、よろしいのよ?」
姫様は得意気に、フフ~ンとふんぞり反っている。
…あちゃー、やはり【パーフェクトガード】について、解っちゃったみたいだなー。
「あなたのその珍妙な魔法の仕組みはもう、解ってしまいましたわっ!
その気味の悪い紫色がかっている間は、一切の攻撃が通らないのでしょう?!」
はい、ご説明、ありがとうございます。
「しかも、どうやらそれほど長く続かない様子。
つまり、その紫色が晴れたら、一斉に攻撃すればいいのですわっ!」
ばぁーん!ってな効果音でも入ってそうな感じに、こっちを指差して仰いました…。
「「「おおっ!」」」
「さすが我が姫様だっ!」
「って、オマエら、解っとらんかったんかいっ!」
おもわず場外の騎士団の連中に、ツッコんでしまった。
だいたい効果が持続している間色が付いていたら、そりゃ誰でも解るだろう。
【パーフェクトガード】は、あくまで初見の敵やそれに気付かないおバカさんにしか使えないと、考えておかないとな。
「さあ、どうなさるおつもり?
今なら、降伏を認めてあげてもよくってよ!
オーホッホホホッ!」
あー、姫様、すげぇドヤァってな顔してるよ。
つか、やっぱりその笑い方するのねっ!
「いや、つーか、どちらかと言うと、それでもまだ俺達の方が有利だと思うんすけど…?」
「へ?」
「少なくとも、そんなにドヤ顔されるほど、俺達まだ追い詰められてはいないっす。」
「……
えー、…イスラ、そうなの?」
「あの者の申している事は、残念ながら概ね当を得ています…。」
イスラと呼ばれたダークエルフさんが、少し恥ずかしそうに答える。
「あと姫様は、喋るとき少し考えた方がいいと思うっす!」
「おだまりなさいっ!」
てな緊張感の抜けた会話をしている内に、【パーフェクトガード】の効果が切れた!
すかさず俺は【パワー&ガードⅢ】のキーを押す。
こうみえても、お間抜け話をしている間にも、すぐ【パワー&ガードⅢ】を発動出来るように、準備はしていたのだ!
そしてカードモンスター達に、"ファイアリザート"に総攻撃を命じるっ!
「あっ!油断させておいて卑怯なっ!」
―いや、油断するなよ…。
「ですが、これであなたも終わりですわっ!」
姫様がそう言うよりも早く、ダークエルフさんが"ファイアリザート"に攻撃を命じていた!
左右にいる"ファイアリザート"が口を大きく開き、火の玉を吐き出す。
その火の玉が向かって来る方向は、全て俺の方だ!
「やっぱりかいっ!」
「おりゃあっ!」「シャァッ!」
一瞬遅れて、姫様とダークエルフさんも俺に向かって突っ込んで来る!
特に姫様の方は、青白いオーラを身にまとい始める。
おそらく、スキル【ダブルスラスト】を行使する気だ!
「うおおおぉぉっ!!」
半ばその攻撃を予想していた俺は、その場で両腕で顔面をガード、倒されないようどっしりと腰を落として、防御体勢をとる!
「あっぢゃぁー!」
まず最初に左右から、"ファイアリザート"の火の玉攻撃がきた。
昔、花火で遊んでいた時に、ウッカリ火花を腕に落とした位の熱さだ。
もちろん俺にとって全く致命傷ではないが、こーゆーモンは関係なくやっぱり熱いっ!
お次にすぐさま姫様とダークエルフさんの攻撃がきた。
息ぴったり同時に、左右から俺のわき腹を切り裂いてきた!
前の盗賊共の攻撃が『チクッ』とするなら、今回は『ザクッ』という感じだ。
特に姫様は【ダブルスラスト】の力も加わってマジ痛てぇ!
おもわず片膝をついてしまう。
「これだけやれば、いくら何でも立てないでしょう。
早く傷を治してさしあげな…」
「あー、すっげ痛かったすわー!」
「…さい…え?…はぁっ?」