驚きの戦闘終了
覆い被さるように、喉笛に向かってくる"グレイウルフ"に対して、俺はとっさに腕で喉元を守ろうとした。
当然、喉元に向かっていたヤツの口は、俺の手首に噛みついてきた!
「グルゥゥウ~!」
「おうわっ!くそっ、離せっ!」
俺は振りほどこうと、腕をふりまわそうとした。
だが相手は俺の二倍以上あるヤツだ。
逆に腕を、その強力なアギトで食いちぎられてしまう……
……とは、ならなかった。
というより、振りほどこうと、腕を振り回すと、噛みついていた"グレイウルフ"を軽々と、振り回せてしまったのである。
振り回したちょうど先に、大木の幹があり、"グレイウルフ"は激しくそこに、ぶつかった。
「ギャイン!」
そいつは、一言悲鳴をあげて、光の粒になって消えていった。
「ガァウッ!」
「うわっ!」
ちょうど反対側にいたヤツが、続けて襲ってくる!
俺はとっさに手で払おうとした。
それが偶然、裏拳のように顔にヒットした。
「ギャンッ!」
今度は、ソイツはすごい勢いで飛ばされ、近くの木をへし折って、光と消えていった。
「へっ?」
その場の空気をどのように表したら、いいだろうか。
マンガ的な世界だったら、俺たちの上にテンテンとついて、"グレイウルフ"達の後ろ頭に、タラ~と汗が流れていたのではないか。
そのくらい、その場の空気はビミョーだった。
まあそうだろう、ヤツらからみれば、見た目美味しそうな子羊ちゃんが、とんでもない猛獣だったような感じだろうか?
「ガァアオゥッ!」
大きな吼え声が、この場の膠着した空気を吹き飛ばす。
その声の主を見てみる。
グレイウルフ N Lv 9
こいつがこの群れの中で、ひときわレベルが高い。
こいつが、リーダーだろう。
「ヴォウッ!」
ソイツはまるで、命令するように吼えると、他の"グレイウルフ"達が、一斉に俺に向かってきた!
…えー、まず結果から言うと、俺の圧勝だった。
とにかく、向かって来る"グレイウルフ"達に、俺のパンチや蹴りが当たると、面白いように吹き飛んでいって、次々光の粒子となっていった。
俺自身のパンチなど、たいした威力はないはずだ。
効果音をつけたら、「ポカ」とか「ペチ」とかいうのが一番似合いそうだ。
そんな攻撃に、ヤツらは次々と倒されていった。
最後にリーダーを殴り倒すと、残りの数匹は一斉に逃げ出していった。